日本の外国人実習に懸念=「強制労働の温床」-米大使(時事通信)
【ワシントン時事】人身売買問題を担当する米国のシデバカ無任所大使は8日、上院外交委員会の小委員会で開かれた公聴会で証言し、日本政府が運営する外国人技能実習制度が「強制労働」の温床になっていると改めて懸念を示した。
シデバカ大使は「人身売買業者は(外国人を)強制労働に服させるのに同制度を利用し続けている」と指摘。日本政府が運用を十分に監督できていないところに問題があるとした上で、「われわれは監督機能を強化するため、日本政府と緊密に協力していくつもりだ」と語った。
外国人技能実習制度の拡充は、安倍晋三首相の成長戦略の柱の一つとなっている。
こうした指摘は過去にも少なからず例があり、まさしく日本の恥部とも言えるものではあるわけですが、しかるに人身売買の「売り手」側の対応はどうなんでしょうね。今回、日本の制度に懸念を示しているのはアメリカの大使ですけれど、アメリカから日本に「実習生」を売っているケースは限りなく少ないはずです。そういう国からではなく、この「実習生」の供給元になっている国、日本が労働力を買ってくる国から、もう少し強い非難の声が上がっても良さそうに思います。例えば中国とか、この問題でこそ日本を強く批判する資格がありそうなものです。自国側のブローカーをかばい立てしたいわけでもないでしょうに。
総じて21世紀の日本は、構造的欠陥として低賃金労働への依存度が高い国だと言えます。最低賃金ギリギリで働く人の存在に支えられている、最低賃金が上がったら経営が成り立たないような企業すら犇めいている、従業員の賃金を抑制することで収益を確保するのが日本的経営の標準になっている、低賃金で働いている人がいないと成り立たない社会が構築されているわけです。もし薄給で激務をこなしてくれる人がいなくなったら潰れてしまう業界も少なくないでしょう。しかし、今や日本の生命線となっている低賃金労働者に感謝する人はいません。ウナギよろしく国内に資源が枯渇すれば外国から略奪してくればいいとばかりに考えている人も多いのではないでしょうか。その必然的な帰結が、移民の受け入れであり外国人技能実習制度の拡充であると言えます。
人権や労働者の権利を重んじる立場から、この技能実習制度を否定的に見る人は少なくありません。引用したアメリカの大使の場合も然りですね。逆に移民を含めた外国人の存在を憎悪して止まない人々はどうでしょう。こうした人々もまた移民の受け入れには批判的のようですが、ただし日本における外国人の扱いが悪いからこそ、こうして政財界の偉い人が外国人を日本に連れてこようとしていることには自覚的であるべきでしょうね。レイシスト連中の思惑通りに外国人の権利が否定されればされるほど、外国人は日本人よりも「安価な労働力」として使い勝手の良いものになるのですから。
いずれにせよ、日本の政財界の低賃金労働者を求める旅は、結局のところ上で言及したウナギと同じような道を辿ることになりそうです。国内でウナギを取り尽くして資源が枯渇すれば中国へ進出し、中国の資源を枯渇させた次は新たな略奪先を探す、それが限界に達してウナギを絶滅危惧種にまで追い込んでしまったわけですが、日本企業が求める安価な労働力はどうなのでしょうか。待遇の悪い日本が外国人労働者から敬遠されるようになる、出稼ぎに行くにしてももっと他の国が選ばれる時代は遠からず訪れるはずです。低賃金労働に依存した日本的経営が改められない限り未来はない、外国人を「買って」も可能なのは延命だけ、先延ばしにしかなりません。必要なのは低賃金労働依存からの脱却であって、低賃金労働者の確保先を増やすという改革は退行にしか繋がらないことを理解すべきでしょう。