[写真]情報公開法改正に心をくだく枝野幸男さん、民主党ホームページから。
自民党政府が、「特定秘密保全法案」(仮称)の作成を進めています。
これは、仙谷由人さん(菅内閣官房長官)が海上保安庁による尖閣諸島動画のインターネット流出事件を受けて、すみやかに2011年1月4日に設置し、主導した有識者会議の報告を法案化するものです。
正直、民主党側でやってきた私も、こういった勉強会の存在を知らなかったので、「官邸ってなんなんだろうな」という気もしますが、報告書をすべて読んで、考えてみました。
情報は下のホームページにあります。
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政府における情報保全に関する検討委員会
秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jouhouhozen/housei_kaigi/kaisai.html
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【警察庁警備局長が参加、都道府県警察本部は対象から外すべきだ】
まずこの勉強会の上部組織である検討委員会は、仙谷官房長官を委員長としていましたが、メンバーに、警察庁警備局長が入っています。このほか、法務省公安調査庁次長、防衛省防衛政策局長、外務省国際情報統括官、国土交通省海上保安庁次長が入っています。
この中で、警察官僚の事情が反映されたと思われる部分があります。
「自治体について、警察事務において、公共の安全および秩序の維持に関して特に秘匿を要する情報を作成・取得する例がある」として「自治体が取り扱う特別秘密はおもとして警察事務に関連するものと考えられることから、自治体に対する本法制の適用範囲を都道府県警察に限定することも考えられる」とあります。
都道府県警察に特定秘密を指定することもあっていいと思いますが、それは「2段階目のアプローチ」でしょう。
県議会の壇上で、地方議員がこのような法律の運用に関する質問や、条例制定に関する議論ができるわけがありません。仮にできても、地方議会は多数決。警察官僚のいうがままに条例を制定することになります。国会対策がうまい警察官僚が、県警に対するヒエラルキーをつくるのが目的と考えられます。法案から削除すべし。
【秘密保全法案とは】
先に、意見を述べましたが、報告書にはなんと書いてあるかをまとめた記事をこれから書きます。
防衛秘密につづき、省が「特別秘密」をあらかじめ指定することができるようになるのがスタートの法案のようです。
法案の必要性について、「わが国では、外国情報機関などの情報収集活動により、情報が洩れる事案が従来から発生している」とし、「加えて、IT技術やネットワーク社会の進展に伴い、政府の保有する情報がネットワーク上に流出し、きわめて短期間に世界規模で広がる事案が発生している」としています。たしかにその通りで、後者に関しては、ウィキリークスがあげられるし、前者に関しては、複数の海上自衛官による中国人美人妻へのイージス(米日韓共同作成・保有)情報の流出が挙げられます。
ただ、これは政府与党と情報について議論するときに必ず念頭に置いていただきたいことですが、イージス漏れは報道で知っているけれども、知らないこともあるはずです。たとえば、あくまでも想像ですが、日本の家電メーカーの設計図が経産省からニュージーランドに漏れ、英米の企業に渡るという国際的ネットワークがひょっとしたらあるのかもしれません。
こうして、防衛秘密に加えて、「特別秘密」の創設として、報告書は次の3つを挙げています。
(1)国の安全
(2)外交
(3)公共の安全および秩序の維持
の3つです。
このうち(3)は間違いなく、警察官僚が潜り込ませたものであり、総論賛成各論反対で、第1段目のアプローチとなる法案では、上記の理由から削除すべきです。
特別秘密の指定をする権限を持つのは、その情報をつくり、持つ「各行政機関に与えるのが適当である」としています。ただ、できれば、機関ではなく、大臣とすべきようにも思います。国会での議論を望みます。
特別秘密を守る国家公務員は、指定された職員とその配偶者。さらに、委託を受けたシンクタンク職員などとなります。大学研究者と新聞記者は処罰の対象になりません。配偶者を入れることは、上にも書いた海自のイージス情報漏れからしても、賛同します。今後の各省の運営では、特別秘密を指定されている職員を官舎(社宅のこと)に優先的に入れ、それ以外の職員は住宅手当を出して、すきな住宅を確保してもらうという働き方を構築すべきです。
漏えいに関しては、国家公務員法100条の守秘義務が自衛隊法とともに強化され、「懲役10年以下」になります。妥当なところでしょう。自首による減免措置があるので、情報漏れ事案を途中でストップさせることが可能になります。
【情報公開法改正法案(インカメラ審査法案)をセットで議論すべきだ】
では、情報公開法にもとづく、文書開示請求があった場合、特別秘密に抵触するとして、「不開示」になった場合はどうなるか。そのためには、最終的には裁判官が、強制的にその文書を見たうえで、不開示が正しいかどうか、判決する「インカメラ審査」が不可欠です。ところが、これはまだ法制化されていません。「オープン・ガバメント」をかかげる民主党政権は、とくに枝野幸男さんががんばって「情報公開法改正法案」(177閣法60号)を出しました。現在の情報公開法は橋本行革実行直前の1999年にできて以来大枠は変わりません。いわば、1997年に、朝日新聞政治部1年生だった小村田義之記者(現・朝日新聞論説委員)が1面トップでスクープして以来、大枠はその記事のまま来ています。
しかし、各省が法律の一つの条項を縦に、ほぼ一律に惰性で「不開示」で押し通すケースが相次いでおり、インカメラ審査の法制化と手数料の引き下げは、民主政治を担保するうえの生命線ともなりつつあります。そこで、「枝野法案」を民主党政府が用意し提出しました。これは民主党の政権の背骨となる重大法案だったと考えます。
が、情報公開法改正法案の提出は震災の1か月半後という時期にずれ込んでしまい、ついに趣旨説明すらされないまま、民主党は政権を失いました。とことんオープンでクリーンな民主党政権の背骨ともいえる法案でした。
政権交代後の最初の通常国会の後半国会初日の衆・内閣委で、三宅雪子議員が転倒事件をおこしたことで、野党・自民党との不正常な内閣委運営がしばらくあったからなんです。彼女はそのことを知らないし、供託金没収の上落選ということで責任を取り終えましたが、いまだに腹が立ちます。
それはそれとして、やはり、民主党、自民党に限らず、国会による霞が関のコントロールのためにも、有権者の提訴により裁判所がインカメラ審査のために霞が関に文書を出させることが必要でしょう。
そのためにも、自民党政府は、特別秘密法案(仮称)に加えて、民主党政権時の情報公開法改正法案を丸飲み再提出したうえで、じっくりと自民党と民主党が両方賛成できる修正協議をしたらいいでしょう。ねじれが解消したからと言って、数の力で衆参強行採決するような法案ではないし、それをすると、自民党は次の総選挙で負けるでしょう。
民主政治はすべて情報公開から始まります。情報のメリハリのためには、そのルールをしっかりとつくり、理解することが必要です。情報こそ政治のすべてです。
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