2012年7月23日、沖縄県の普天間飛行場に配備予定のV-22オスプレイ輸送機が岩国基地に陸揚げされた。これに対して沖縄県側は、同機の安全性に疑問があるとして、配備への反対を表明している。
筆者としては、政治的な問題に口を挟むつもりは毛頭ない。しかし、このオスプレイ問題に関しては、公平な情報提供がなされていないのではないかと危惧している。
ミスリーディングなマスコミ報道
最近のテレビ報道では、離陸時にオスプレイの姿勢が不安定となり、最後は横転して大破する映像が繰り返し放映されている。しかし、筆者が調べたところ、この報道は極めてミスリーディングである。
問題の映像は、1991年6月に発生した試作5号機の事故だが、この事故の原因は、飛行制御システムの配線を逆に接続したことだった。つまり、整備ミスによるもので、機体それ自体の安全性とはまったく関係がない。
番組を制作した関係者も、そのことを承知しているのだろう。映像を流す際のナレーションを聞いたかぎりでは、「この事故は機体の欠陥が原因です」との説明はなされておらず、その意味では誤報とは言えない。
しかし、「オスプレイの安全性が疑問視されています」との説明と一緒に、この映像が画面に流されれば、機体の欠陥に伴う事故と視聴者が誤解するのは当然だ。それどころか、番組の司会者やコメンテーターまでも、そのように勘違いしているありさまである。
また、「オスプレイは事故が多いため、米国では『未亡人製造機』と呼ばれている」という報道も、やはりミスリーディングである。
同機のテスト飛行時に死亡事故が続発し、この芳しくないあだ名が付けられたことは事実だ。しかし、開発段階で様々なトラブルが発生するのは当たり前で、過去にもテスト飛行時に重大事故を起こしながら、その後に「名機」へと成長した機種は少なくない。問題は、初期段階の事故を踏まえて、オスプレイの安全性が改善されたかどうかである。
ちなみに、10万飛行時間当たりの重大事故の件数である「事故率」で比較すると、現時点のオスプレイは1.93であり、海兵隊全体の2.45よりも低い数値になっている。オバマ大統領(当時は上院議員)が2008年に大統領選の関係でイラクを訪問した時に同機を使用したことを考慮しても、少なくとも現在では、米国側は「未亡人製造機」と思っていないようだ。