9月下旬、有賀貞一さんがミスミグループ本社副社長を退任し、コンサルティング会社を立ち上げあげることをFacebookで知った。有賀さんは野村総合研究所常務、CSK代表取締役などを歴任し、ITサービスの提供側の仕事で活躍したあと、2年半ほど前にITの利用側であるミスミに移られていた。多くの連載や講演を通じてIT業界のご意見番として著名だ。団塊世代の大量退職による後継者問題に「2007年問題」という名前を付けたのも、有賀さんだ。ご本人が還暦を迎えた年である。
有賀さんとは、筆者が主宰する情報化研究会で30年近くお付き合いいただいている。2009年に京都で開催した情報化研究会25周年大会でも講演していただいた(関連記事:「これからのネットワーク人は仏料理屋になれ」、情報化研究会が25周年の記念研究会を開催)。
ITの提供側、利用側、両方の実務経験があり、ユニークな視点でズバズバと本質を突いたアイデアを出す有賀さんなら、IT企業にもユーザー企業にも有用なコンサルティングができるに違いない。ご活躍を祈りたい。
さて、本論に入ろう。面白いIP電話サービスが始まった。NTTコミュニケーションズが2011年7月に始めた「050 plus」だ。050で始まる電話番号はIP電話用で、03や06で始まる固定電話用の番号は「0AB-J番号」と呼ぶ。東京ガスのIP電話導入を手がけた2003年頃、050番号の使い方をずいぶん研究したものだ。0AB-J番号は端末の位置が固定で、総務省が定めた厳しい通信品質の条件を満たさねばならない。対して050番号は端末が移動してもいいし、通信品質の条件もゆるやかなため、自由度が高いのだ。
当時、これからは050番号が普及すると思っていたのだが、10年近くたった現在も主流とは言えない。しかし、050 plusで流れが変わりそうだ。今回は050 plusの面白さと、これからの050番号の活用について述べたい。
携帯事業者は単なるパイプ
050 plusはiPhoneを対象としたサービスで、アップルの「App Store」から無償のアプリをダウンロードし、ユーザー情報とクレジットカード番号情報を登録して050番号の選択をすれば、ものの数分で使えるようになる。
ソフトバンクモバイルやKDDIの3Gパケット通信、またはWi-Fiでインターネットに接続して使う。基本料金は月額315円で、通話料は050 plus同士、NTTコムおよびその提携会社のIP電話とは無料。固定電話、非提携IP電話との通話は全国一律3分8.4円、携帯電話宛ては全業者一律1分16.8円だ。ソフトバンクの料金と比べると、基本料や固定電話・他社携帯宛ての通話料が安い。
050 plusはNTTコムがソフトバンクやKDDIのパケット通信網と端末を使って、電話サービスを提供するものだ。ソフトバンクやKDDIのネットワークは単なるパイプということになる。また、端末の移動が自由なので、固定通信事業者であるNTTコムがモバイルサービスを提供していることにもなる。
050 plusのポイントは、NTTコムが050番号と、その番号と端末の現在位置(IPアドレス)を対応付けるSIP(Session Initiation Protocol)サーバーを提供していることだ。端末(iPhone)が世界のどこにあろうが、ネット経由でSIPサーバーに位置登録すれば電話が使える。ニューヨークのホテルにいても無線LANサービスで電話の発信・着信ができるのだ。