ERP(統合基幹業務システム)パッケージの普及などにより企業が蓄積しているデータ量が増えている。そこで注目されてきたのが「ビジネスアナリティクス」と呼ぶ概念だ。データを分析して過去の傾向を調べるだけでなく、将来の予測にデータを活用し意思決定を支援するという考え方だ。書籍『分析力を武器とする企業』の著者の一人でもある米アクセンチュアのジェーン・G・ハリス氏に、ビジネスアナリティクスの最新動向を聞いた。(聞き手は島田 優子=日経コンピュータ

「ビジネスアナリティクス」と「ビジネスインテリジェンス(BI)」の違いは。

 BIには色々な定義や解釈があるため一概には言えないが、BIは過去の結果を見るための取り組みだ。これに対してビジネスアナリティクスは、プレディクティブ(予測的)な要素を持っている。

 一般にBIは、情報を活用した意思決定の取り組みを指す。以前からBIの必要性は強調されてきたが、業務の中で十分に活用しきれていないのが実態ではないだろうか。BIに取り組む企業は、いかにデータを収集し、いかに意思決定に必要なレポートを作成するかを目指しているが、最初に描いたビジョンにたどり着ける企業は少ない。

今なぜビジネスアナリティクスが注目されているのか。

 三つの理由がある。一つはデータを取得しやすくなってきたことだ。ERPパッケージの導入などにより、多くの企業が日常業務の結果であるトランザクションデータを、信頼性の高い形で入手できるようになった。

 二つめの理由は、クラウドコンピューティングに代表されるテクノロジーの発展だ。大量のデータを安価に分析できるようになった。社外に目を向けても、ソーシャルメディアの発展などによってインターネット経由で多くのデータが取得できる。しかもテキストや画像といったデータの種類も増え、企業が入手可能なデータは圧倒的に増えている。

どこでもノートPCを持ち歩く経営層の出現が背景に

 そして最後の理由は、経営層の世代交代が進み、ITを使いこなすことが当たり前になってきたことだ。今、世界中で活躍する経営層はみなノートPCを持ち歩いている。リーマンショック以降、景気動向が見通せない中で潜在的なリスクが高まっている。そのため、どこにいても、ノートPCを利用して将来を予測したいという経営層の要望が高まっているわけだ。

 データの活用は、コモディティ化することがなく、企業競争力の差異化の大きな要因になる。ビジネスアナリティクスは今後10年間で飛躍的に進化する領域であり、そこへの取り組みは企業にとって欠かせない。現時点でも既に、市場で成功している企業は、ビジネスアナリティクスを活用している企業と考えて間違いないだろう。