特別トップインタビュー
Vicor

48V化が進むEVシステムの
さらなる小型・軽量化を可能に

高性能電源モジュールで
付加価値の高い
システムを実現

Vicor
日本法人 代表取締役社長
米国本社 バイスプレジデント

堂園 雄羽

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Vicorは、小型・軽量でありながら大電力に対応した電源モジュールで、電源市場で他の追随を許さない競争力を誇る。航空宇宙・防衛、産業機器、データセンターのサーバー向け電源などの分野で目覚ましい実績を上げてきた中で、2018年には車載市場に新規参入。2024年、車載電力システムの48V化を支える製品の量産も開始した。詳細を日本法人の堂園雄羽氏に聞いた。

2024年はいかがでしたか。

堂園 Vicorは、高い変換効率と電力密度を兼ね備えたDC-DCコンバーターにフォーカスして技術とビジネスの実績を蓄積してきた電源モジュールメーカーです。航空宇宙・防衛、産業機器などの分野からはじまり、近年では48Vを1V以下に降圧するハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)向けDC-DCコンバーターなど高性能かつ高信頼が要求される製品を開発・供給しています。

 2018年には車載市場へ参入し、先日、48V EVシステムへ向けた車載グレードの製品の量産を発表しました。2025年には、当社製品を搭載したクルマの量産を控えています。

 本年は、半導体製造装置、テスター、ファクトリー・オートメーションなどのビジネス拡大も著しく、これらの分野でも長期的なパートナーシップ構築および強化を図ることができました。

48Vで圧倒的な小型・大電力

車載市場におけるVicorの強みは何でしょうか。

堂園 これから市場が拡大する電動車およびSDV(ソフトウエア定義車両)で採用が広がる48V系電力システムにおいて、より小型・軽量かつ大電力に対応したDC-DCコンバーターを提供できる点が強みです。

 長年にわたり、クルマの電装品を駆動する電圧は、鉛蓄電池の利用を前提とする12Vでした。これが、ステアリングブレーキなどの電動アクチュエータ、ヒーター空調関連、SDVに搭載される高性能コンピューターや、電動車の高付加価値化に向けて搭載されるアクティブ・サスペンションのような高負荷な電装品が増えることで、48Vへと移行していく見通しです。

 同時に、電動化に伴い大型で重いバッテリーを搭載しながら、広い車室空間を確保し、車両を軽量化できるように、あらゆる部品に小型化・軽量化が求められています。こうした背景から、当社のソリューションが車載市場で注目されています。

 これまで当社では、一貫して電力密度の向上に向けた技術開発を継続してきました。

 今回、車載向けに量産開始したモジュール製品は第4世代のシリーズにあたり、旧世代のモジュールから電力密度が約10倍向上しています。今後、第4世代比で3倍に高めた第5世代品も市場へ展開する予定です。変換効率のさらなる向上を続けます。

現時点で、どのような車載向けの量産製品があるのでしょうか。今後についてもお聞かせください。

堂園 3製品の量産を開始しました。

①電動車のバッテリー電圧である800Vと48Vの間を双方向で直接変換可能な2.5kWのDC-DCコンバーター「BCM6135」。
②48Vの電力を安定化させる2.5kWの昇降圧レギュレーター「PRM3735」。
③ 48Vから12Vへの2kW降圧レギュレーター「DCM3735」。48V化が進んでも、12V駆動の電装品がしばらく残ることに対応する製品です。

 その他にも急速充電スタンドの標準的な電圧になりつつある400Vと、バッテリー電圧の800Vの間を双方向変換する37.5kWのDC-DCコンバーター「NBM9280」もリリース予定で、市場のニーズに応えていきます。

 Vicorが量産開始した車載向け製品は、いずれも電力変換回路の構成に必要なパワー半導体、ドライバーIC、コントローラーなどの半導体チップ、さらにはトランスを含む受動部品などを、非常に小さいパッケージに集積している点が最大の特長です。これによって、車室空間を確保し、車両重量も最小化、かつ車両全体のコスト削減にも貢献しながら、48V化ができます。開発対象車によって電装品の仕様や数が異なりますが、設計に応じて同一モジュールを複数個並列利用することでスケーラブルな設計が可能です。

 2024年は、品質規格への対応や工場の認証取得など、車載製品量産を見据えた体制づくりが大きく前進しました。準備は着々と進んでおり、当社の製品が次世代車のお客様の開発を確実に後押しすると考えます。

先進的アプリケーションの
新たな価値を共創

なぜVicorは、こうした競争力の高い、高密度の電源モジュールが開発できるのでしょうか。

堂園 電源モジュールの小型・高電力密度化には、スイッチング周波数を高める必要があります。当社は回路トポロジーを工夫し、コントローラーやドライバーICなどの主要パーツを自社設計し、さらに独自の構造と製造工程で高密度化を実現するパッケージング技術「ChiP(Converter housed in Package)」を投入することで競争力の高い製品を実現しています。

 もう一つの理由は、リーディングカスタマーとの協業によって、需要のある製品をタイムリーに市場に提供するための、最新の製品要求が得られるからです。当社でなければ実現不可能な電源モジュールを高く評価いただき、高い開発力を持つパートナー企業の革新的ソリューションを共創しています。

車載向け製品を、自動車以外の市場に展開する可能性は。

堂園 電動バイク、船舶、スノーモービルなどのレクリエーション車両、自律走行トラック、重機、その他の輸送システムにおいても、バッテリー駆動の開発がトレンドです。車両同様に48Vや800V/400Vのような高電圧のソリューションが求められているため、当社の製品が一翼を担うと考えます。

最後にメッセージを。

堂園 車載事業量産開始に伴う更なる品質・信頼性の向上、新工場拡張によりお客様の需要に応えられる体制が整ってきています。今後リリースを控えている5G製品は更に電力密度と変換効率が高く、より小型でありながら大電力の高性能電源システムを構築する事が可能となります。当社の技術を通じてお客様の電源システムの課題を解決すると共に、技術革新に貢献してまいります。

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Vicorの車載向け電源モジュール:双方向DC-DCコンバーター「BCM6135」、48V対応のレギュレーター「PRM3735」、48Vから12Vへの降圧レギュレーター「DCM3735」の3製品の量産を開始。

お問い合わせ

Vicor株式会社
〒141-0031 東京都品川区西五反田8-9-5 FORECAST五反田WEST 6F
TEL:03-5487-3016 URL:https://www.vicorpower.com/ja-jp/