200mmウエハー対応の
完全統合型SiC製造施設を建設開始
新製品開発や注力領域への
弛まぬ投資で
サステナブルな成長を目指す
STマイクロエレクトロニクス
アジア・パシフィック地区(APeC)
セールス&マーケティング
エグゼクティブ・バイスプレジデント
野口 洋氏
200mmウエハー対応の
完全統合型SiC製造施設を建設開始
STマイクロエレクトロニクス
アジア・パシフィック地区(APeC)
セールス&マーケティング
エグゼクティブ・バイスプレジデント
野口 洋氏
エネルギー損失の小さいSiCパワーMOSFETや、汎用性の高いSTM32マイコンで知られるSTマイクロエレクトロニクス。プロセス設計から製品サポートまでを手掛けるIDM(垂直統合型半導体メーカー)として、積極的な投資による革新的な製品開発と、アプリケーション・サポートを含めた顧客提案を加速する。同社の戦略についてエグゼクティブ・バイスプレジデントの野口洋氏に聞いた。
—2024年のビジネスおよび市況を振り返っていかがでしたか。
野口 2024年の第3四半期の売上高はグローバルで32.5億ドル、第1四半期から第3四半期までの9カ月の売上高は99.5億ドルを記録しました。第4四半期の売上高(中間値)は33.2億ドルに、2024年通年では132.7億ドルに達する見通しです。
マーケットに目を転じると、オートモーティブに関してはEV(電気自動車)の成長鈍化が市場全体に影響を及ぼしていると捉えています。インダストリアルに関してはバリューチェーン全体での在庫調整がなおも続いています。当社としては需要の回復をただ待つだけではなく、幅広い製品ポートフォリオを活用してお客様の新しいデザインをサポートするなど、継続的な開発投資によって製品群の拡充を進めています。革新的な新製品の実現に向けた研究開発への投資も積極的に進めており、2023年には収益のおよそ12%を充てています。
—注力分野でトピックや新製品があれば紹介してください。
野口 重点分野の一つであるオートモーティブに関しては、EVやハイブリッド車のインバーター回路やオンボード・チャージャー向けに、当社が強みとするSiCパワーMOSFETやモジュールを提案しています。現在の主力である第3世代品に加えて、2024年9月には750Vおよび1200V耐圧の第4世代のSiCパワーMOSFETを発表しました。電力密度が高くエネルギー損失も小さいため、回路のさらなる小型化に寄与できると考えています。これらSiC MOSFETや、より低コストなシリコン・ベースのIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)は、既に複数の量産車に搭載されています。
クルマのデジタル化に欠かせない車載マイコンも主力ソリューションです。「Stellar」ファミリはハイエンド系の製品で、近年注目を集めているX-in-1(複数機能を1つに統合した構成)や、ECUを集約したゾーン・アーキテクチャーなど、高度な要件に対応できるのが特徴です。新興EVメーカーのアクティブ・セーフティ・コントローラにも採用されました。また、汎用マイコンであるSTM32を車載対応にした「STM32A」シリーズの開発も進めています。
—インダストリアル分野についても教えてください。
野口 インダストリアルに関しても、オートモーティブと同様にSiCやIGBTの提案を進めています。最近は、消費電力の大きいAIサーバー(GPUサーバー)用の電源としてSiCへの関心が高まっており、大手メーカーにも採用いただきました。
組み込み関係では、汎用マイコンのSTM32ファミリが市場で高評価をいただいています。ユニークユーザー数は120万を超え、年率30%で増えており、汎用マイコンで市場をけん引する製品であると自負しています。また、シェア拡大の差別化策の一つとして、中国で開発から部材調達までを行うグローバルなお客様に向けて、ウエハー製造から組み立てを中国で一貫して行うSTM32のサプライチェーンを構築中です。
さらに、STM32に関連して、エッジ部分でAIを処理する、いわゆるエッジAIのアプリケーションをより効率的に開発していただけるように、ツールやライブラリなどを包括的に提供する「ST Edge AI Suite」を発表しました。STが持つMEMSセンサーやToF(測距)センサーなどと合わせて、お客様のエッジAI開発をワンストップで支援していきます。なお、パナソニック サイクルテック社の電動アシスト自転車「ティモ・A」に搭載されたタイヤの空気圧低下を推定する機能にも、当社のSTM32マイコンとAIツールが使われています。
この他、ヘルスケアにも取り組んでおり、微弱な生体信号をセンシングするバイオセンサー・デバイスなどの製品を展開しています。
—SiCには多くの投資をしていると伺っています。最近の取り組みを教えてください。
野口 エネルギー損失の小さいSiCパワーデバイスはSTの強みの一つであり、積極的な投資を続けています。新たに200mm基板製造、エピタキシャル成長、パッケージング、モジュール組み立ての他、プロセス研究、製品設計、アプリケーション設計などの機能を統合した「SiCキャンパス」と呼ぶ施設をイタリアのカターニャに建設することを発表しました。SiC基板の製造から最終製品までを一貫して手掛ける施設は世界でも先駆けていると認識しており、さらなる競争力強化につながると期待しています。フル稼働は2033年の予定です。
この他、中国の三安光電との合弁による200mmウエハーの新工場を重慶市に建設中で、2025年第4四半期の生産開始を予定しています。これに、深圳の後工程工場を組み合わせることで、中国市場にローカライズされたSiC製造体制も構築される見込みです。
—最後に、今後の展望や日本市場での取り組みを聞かせてください。
野口 STは、プロセス設計、製品開発、製造、販売、サポートまでの全工程を担ういわゆるIDMであり、自動車、産業機器、コンスーマ機器分野をはじめとする日本のお客様に対して、この強みを生かした製品の提案と提供に引き続き努めていきます。合わせて、アプリケーション・マーケティングの組織体制を導入して、グローバルレベルでお客様事例を共有するなど、ソリューション提案の強化も図っていきます。
サステナビリティーに関しては、STとしては、2027年までのカーボンニュートラル(スコープ1、2、および3の一部)実現を目標にした取り組みを引き続き進めています。
お客様に対しては、エネルギー損失の少ないSiCパワーデバイスを通じて、充電を含めたEVエコシステム全体のカーボン・フットプリントの削減と、バッテリー航続距離の延長を提案していきます。また、お客様とのコラボレーションと、当社が持つ幅広い製品を組み合わせた自由度の高いソリューションによって、お客様のサステナビリティー目標の達成を支援していきます。
イタリア・カターニャに建設される世界初の完全統合型SiC製造施設「SiCキャンパス」(完成予想図)
お問い合わせ
STマイクロエレクトロニクス株式会社
TEL:東京:03-5783-8200 大阪:06-6397-4130 名古屋:052-587-4547
URL:https://www.st.com/