私は2013年6月に、3人のトップデータサイエンティストが集った「日米データサイエンティスト頂上座談会」に立ち会う好機を得た。このとき、米ヤフーなどでデータサイエンティストを歴任した米ピボタルのアニカ・ヒメネス氏は、データサイエンティストに求めるコアとなる2大スキルは「統計学とプログラミング能力です」と言い切った(関連記事:「統計学とプログラミング能力の2つが両立していないと、採用でイエスと言えません」)。
正直言うと、私はこの話を聞きながら、「それは厳しい条件だな」と思った。なかなか日本には、この2つを満たせる人はいないだろう。
加えて座談会に集まった3人は、データサイエンティストにはコミュニケーション能力も必要であることで考えが一致。ますますハードルが高く感じられた。
ところがそれから約1カ月半後、上記の素養を満たす人に取材で会うことができた。相手はディー・エヌ・エー(DeNA)にいた。
友部博教氏(写真)。X-Function(クロスファンクション)部で分析グループのグループリーダーを務めている(関連記事:ビッグデータ、イノベーションを起こす三つの鉄則)。
そう言われても、何の仕事をしているのかよく分からないが、一言で言うと、DeNAが提供しているソーシャルゲームをログなどの数字面から分析し、ゲーム内で展開される様々なイベント(サブストーリー)やミニゲームを回を追うごとに改善していったり、ゲームの難易度(レベル)を設計したりしている。
友部氏はゲームのレベルを設計している人!
ゲームが好きな人はそれだけで身を乗り出すかもしれない。普段ゲームをやらない私も、ちょっとドキドキした。
もちろん友部氏もゲーム好き。もっとも単にゲームが好きなだけでは、友部氏のような仕事はできない。友部氏に自分の役割は何かと聞くと「各ゲームタイトルを取り仕切るプロデューサーの参謀役です」との答えが返ってきた。数字の裏付けを持って、リーダーを補佐するのである。
もう少し詳しく説明しよう。
DeNAの場合、新規関発中の案件も含めて、それぞれのゲームタイトルごとにリーダーとなるプロデューサーがいる。このプロデューサーを中心にして、開発チームにはゲームの内容を企画する人やグラフィックを描く人、そしてエンジニアなどがいる。
そして、もう1人。各プロデューサーに寄り添うように「アナリスト」と呼ばれる数字のプロが必ずチームに加わることになっている。このアナリストこそ、呼び方を変えれば、データサイエンティストであり、分析グループのリーダーである友部氏はアナリストたちを取りまとめる立場にあるトップデータサイエンティストなのである。