レッドハットが3年ぶりのメジャーバージョンアップとなる「Red Hat Enterprise Linux 6」をリリースした。仮想化機能はリソースの拡張性とネットワークのパフォーマンス性能を強化している。
2010年11月16日、レッドハットは新版OS「Red Hat Enterprise Linux 6」(RHEL 6)の国内向け出荷開始を発表した。発表会の冒頭で挨拶に立った同社の廣川裕司代表取締役社長は、何度となく繰り返しこう発言した。「RHELの仮想化機能である『KVM』は、ヴイエムウェアの仮想化ソフト『VMware』をしのいだ」(写真1)。
廣川社長が「VMwareをしのいだ」とする、メジャーバージョンアップによる強化ポイントは2つある。
1つは、CPUやメモリーといったリソースをより多く実装できるようにしたことだ。もう1つは、10Gビット/秒という高速なネットワークリソースであっても、仮想環境で同等のスループットを利用できるようにしたことである。
仮想マシン1台に64CPUを実装可能
1台の仮想マシンに割り当てられる仮想的なCPUの数は、旧版のRHEL 5では最大16個となっていた。新版のRHEL 6では、仮想マシン1台当たり最大64個の仮想CPUを割り当てることが可能になった(図1)。
仮想マシンを稼働させるホストマシンについても、リソースの拡張性を大幅に高めている。RHEL 5では最大192個のCPU、同1TBのメモリー容量が、実装可能な理論上の上限値だった。これがRHEL 6では、CPUが4096個、メモリー容量が64TBまで引き上げられている。ただし、実際にレッドハットがサポートできるCPUの上限値は現時点で最大256個までとしている。
レッドハットがVMwareをしのいだとするもう1つの強化ポイントは、仮想マシンとホストマシン間でやり取りするネットワーク入出力の処理。RHEL6では、「vhost-net」と呼ぶ機能を追加。旧版のRHEL 5では、仮想マシンとホストマシン間でやり取りするネットワーク入出力を、仮想化ソフトがハンドリングしていた。この仮想化ソフトの処理を省けるようにしたのがvhost-netである。仮想環境でもネットワークインタフェースが持つ本来の性能を使い切れる(図2)。
レッドハットは、vhost-netを次世代技術「SR-IOV」(Single Root I/OVirtualization)の移行に向けたステップアップと位置付ける。SR-IOVはネットワークのデバイス側で仮想化を実現する技術。入出力処理を高速化できるが、利用するにはデバイス側で同技術を実装している必要がある。レッドハットはRHEL 5.4でSR-IOVに対応したが、現時点でSR-IOV対応のデバイスが一部のみ。同技術を生かせられない状況の中、マシン側の仕組みで入出力処理を高めるvhost-netを投入した。