Android Application Award(A3) 2010 Springの「優秀賞」を受賞した「フォントロイド」は、スマートフォン上で毛筆風のフォントを作成し、複数のユーザーで共有できるようにするAndroidアプリケーションである。開発したアスカラボは、東京大学大学院のAR(拡張現実)に関する研究成果を実用化するために設立された、大学発ベンチャーだ(関連記事)。

タッチパネル上で指でオリジナルのフォントを作成
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作成したフォントはインターネット上で共有できる
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 タッチパネル上で毛筆風の文字を書けるという機能がまず興味深い。「とめ」や「はらい」の効果を再現する毛筆シミュレーションの機能を備えている。作者は「書道が好きだった」ことから、この機能を発想したそうである。

 さらに、作成した文字を他のユーザーと共有したり、投票したりというソーシャルアプリの側面もある。アスカラボでは「ソーシャルフォントアプリ」と呼ぶ。人気のフォントはフォントロイドのWebサイト上で、TrueType形式で公開している。毛筆の効果を生かした正攻法の書体から、イラスト風の変化球まで、さまざまな作品を見ることができる。

 表彰式で、審査員のアプリックス 代表取締役 郡山龍氏は「オープンソースソフトウエアと同様にオープンフォントも重要。毛筆風の効果をタッチパネルで作り出している技術にも注目した」と語った。「みんなでフォントを作る」ことが手軽にできれば、さまざまな文字種にもソーシャル手法で対応できる可能性があるだろう。また、毛筆風の効果は、ぜひお手元のAndroidスマートフォンで一回は試してみていただきたい。

 タッチパネル上のUI(ユーザー・インタフェース)には、まだまだ新たなアイデアを投入する余地があることを示したアプリといえる。

作者に聞く
アスカラボ 代表取締役 角田哲也氏
フォントロイド開発チーム(左から佐藤啓宏氏、角田哲也氏、宮下令央氏)と、審査員のアプリックス代表取締役 郡山龍氏(右)[撮影:菊池くらげ]
フォントロイド開発チーム(左から佐藤啓宏氏、角田哲也氏、宮下令央氏)と、審査員のアプリックス 代表取締役 郡山龍氏(右)[撮影:菊池くらげ]
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アプリ開発のきっかけは。

 最初、タッチパネルで手書きの署名が作れないかと考えていました。モバイル端末の画面上でできることを模索するうち、一文字書道からネットワークを生かしたソーシャルフォントのアイデアが生まれました。

開発にあたって苦心された点は。

 直感的な指先の操作で毛筆のようなタッチを出すのに苦労しました。趣味の書道経験を生かし、画面をタップするだけで簡単に「はね、とめ、はらい」を表現できるように工夫しました。

ユーザーへのメッセージを。

 とにかく触ってみてください!文字を書くのが苦手という方、またお子様の漢字練習にもおすすめです。人気フォントはWebサイトで公開していますので、公式フォント登録を目指してぜひ挑戦してみてください。