今回は,Webサイト構築プロジェクトのワークフローを俯瞰してみたいと思います。実際にクライアントから声がかかる場面から納品,つまり開発案件の完了までを12の「ステージ」に分けて図解してみました。思考のプロセス/人的配置/タスク/ツールなども一緒に記しています。少し大きな図になってしまいましたが,ご参考になれば。
図は,一番上は「4つのステップ/3つのタスク/12の要素(第62回 持続可能なWebサイト開発を支える12の要素)」。その下は,人的配置をロール(役割)ごとに記述しています。その下は,大まかなタスクのレベルです。それぞれの期間内に処理すべき項目を列挙しています。その下が,「ステージ」。プロジェクト全体を12のステージに分類して作業内容を整理しています。基本的には,その流れの順で進んでいきます。その下は,それぞれのステージのアウトプットのイメージで,更にその下にはよく使うファイルアイコンを配しています。その下は,合意形成を行ううえで準備(覚悟)すべきタイミングと,整備を忘れがちな議事録系/記録としてのアーカイブの話を載せています。
面積的にツールの比重が大きいですが,基本的にはツールのオペレーションを知っていることと,Web制作熟練度が比例関係にあるとは思っていません。ツールがうまく使えることと,クライアントとユーザーの間のコミュニケーションを円滑にすることとは,かなりベクトルが異なるからです。それでも,ツールが制作工程を効率化する側面は無視できません。知識があろうと,技術があろうと,スピードが伴っていなければ,最近では価値(競争力)がなくなってきているのも事実です。ですので,どの場面でどういった得意ツールを保持しているかを見る意味でも取り上げます。
以下,それぞれのステージの話を書いていきますが,ここを読んでいる方で釈迦に説法的な方は,「最後に」まで進んでいっていただいても良いかと思います。
【01】RFP ステージ
RFP(Request For Proposal:提案依頼書)を受け取るステージ。文字通り,クライアント(発注)側が,何について提案してほしいかを知る場面です。書面でいただくときもあれば,電話で声で伝え聞く場合もあります。どちらにしても,ここを取り違えると,提案内容そのものが,的外れなものになってしまうので,一番大事な局面かもしれません。
もちろん,チャンスが一度だけということはありません。クライアントから隠れた要求を引き出す場面でもあるので,伝書鳩的に伝言ゲームをするだけでもありません。営業的な立場の方が担当する場合が多いでしょうが,読解力から引き出すコミュニケーション力,更にはその要点を整理する力,チームにキチンと伝える能力も要求されます。プロジェクトが始まれば,クライアントの前ではチームへの不適切な圧力を防ぐ壁,チーム内においてはクライアントの立場でコメントしなければならない宿命を持ちます。
注意すべきは,RFPで求められていることが,本当に必要なことではなかったりすることです。○○について提案を欲しいと,クライアントが言ったとしても,その前にしなければならないことが不充分であったり,その路線で進んで行ってもユーザーが思うようには動いてくれなさそうだと直感できる場合もあります。Webに不慣れなクライアントほどその傾向は強く,しかし自分たちの正当性を強く信じている場合が多いように思います。Web屋の優位性は,場数を多く積んでいる分,経験知が高い点です。どんな体制で,どんな戦略で臨めば失敗するのかを,熟知していますし,やばさ加減を感知できます。それを,やんわりと大人の態度で示せるかどうかも,ここの主担当の力量だといえると思います。