アンケートの回答受け付けは終了しました

 「最新のノートPC(パソコン)を買ったのですが平日には持ち歩けません。今日は久々に充電して持ってきました」。土曜日に開かれた会合に姿を見せた30代のSE(システムズエンジニア)はこう言ってPC用ケースから黒一色の愛機を取り出して机の上にそっと置き、黒光りしているノート機をさらに布で磨き始めた。

 彼はシステム開発会社に勤務しているが、普段は顧客の開発現場に赴いて仕事をしている。今の客先はノートPCや記憶装置の持ち込みを禁じているので、彼はせっかく買ったノートPCを自宅に置いたままだ。客先までノートPCを持参し、受付のロッカーに預け、帰宅時に取り出して持って帰れば、持ち歩くことは可能だろうが、帰宅はたいてい夜遅くになるから、モバイル利用どころか持って歩くだけになってしまう。

 久しぶりにノートPCを持ち出せて嬉しそうな彼を見て、会合に同席していた若手SE達が次々に一声かけた。「うちもノートPCは利用禁止状態です」「申請すれば業務用のノートPCは持ち歩けますが、個人所有のものはやはり駄目ですね」といったように、禁止一色であった。いずれもITの世界の第一線で仕事をしているばりばりのSE達である。

 その会合の翌週、ある大手コンピュータ・メーカーの部長に会った。その会社は国内のPC市場で出荷台数1、2位を争うPC大手でもある。「内部統制や情報セキュリティ対策が行き過ぎて、日本企業の活力を削いでいる」と言ったところ、彼はうなずき、「当社だってそうです。ノートPCは原則持ち歩けません。申請すればいいのですが、持ったまま飲みに行って紛失でもしたら厳罰に処されますから、皆ほとんど使いませんね」と笑った。

 これでは社員の飲酒を禁ずるアルコール飲料メーカーのようだ。ノートPCを酒に例えることが誤解を招くなら、社員の運転を禁じる自動車メーカーのようだ。ノートPCを作り販売している会社の社員が使わない、使えない、というのは笑い事ではない。以前、レノボのウィリアム・アメリオCEO(最高経営責任者)兼社長に取材したとき、「これがトップ・エグゼクティブ用の特別仕様マシンだ」と言って、彼が持ち歩いている革張りの高級ノートPCを嬉しそうに見せてくれた。年末年始に業界団体の会合がいくつかあるので、各コンピュータ・メーカーの社長や重役の皆様に「御社が作っているノートPCを持ち歩いて仕事をしていますか」と聞いてみたい。

 移動中も自宅でもノートPCをそばに置き365日24時間仕事をすべき、とは言わないが、現在の日本におけるノートPCの禁止や制限は行き過ぎだと思う。この点について、ITproに数回拙文を公開した(「ノートPCは危険、利用に法規制を」、「持ち歩くために作られたノートPCを持ち出し禁止にする愚」)。念のために言うと、「法規制を」というのは冗談である。今回紹介した若手と部長の逸話はこれらのコラムを書いた後に遭遇した例だ。法規制をするまでもない、“ノートPCモバイル利用自主禁止令”の徹底ぶりに改めて感じ入った。

 ITpro読者の皆様はノートPCのモバイル利用についてどうお考えだろうか。以下に簡単なアンケートを用意したので、ぜひご意見を頂ければと思う。頂いたご意見は別途、ITpro上で公開したい。よろしくお願いします。


問1.あなたが今仕事をしている職場(常駐先を含む)におけるノートPCのモバイル利用はどのようになっていますか。一つお選び下さい。

持ち込みも持ち出しも禁止
個人用ノートPCは持ち込めないが、業務用ノートPCは申請すれば持ち出せる
所定の手続きをすれば、持ち込みや持ち出しできる
特に規制はない

問2.職場におけるノートPCのモバイル利用禁止あるいは制限についてどう思いますか。一つお選び下さい。

禁止や制限は当然である
不便になるがセキュリティ対策上やむを得ない
セキュリティ対策を施し、モバイル利用を可能にすべき
個人の責任で自由に使わせればよい
もともと使っていないので意見はない

問3.ノートPCの安全なモバイル利用についてご意見や実践事例がありましたらご記入下さい。