最近,Webプログラミングの世界で静かなブームになっている言語があります。何を隠そうJavaScriptです。JavaScriptはご存知のとおり,クライアントサイドすなわちWebブラウザ上で動作するタイプのプログラミング言語です。最初にJavaScriptが実装されたのは,今から10年以上前の1995年,Netscape Navigator2.0でのことです(登場当時はLiveScriptと呼ばれていました)。決して新しい言語ではありません。それが,どうして再び注目されることになったのでしょう。その理由は,Webインタフェースのプログラミングで,JavaScriptの有効性や利便性が再発見され,言語そのものが持つユニークさや機能が技術者の関心を集めているからです(図1)。
図1●JavaScriptには不遇の時代があったが,10年の時を経て再び脚光を浴びるようになってきた [画像のクリックで拡大表示] |
JavaScriptを使うのはダサかった?
Webインタフェースの技術といってもHTMLしかなかったころ,様々なプログラム処理を実装できるJavaScriptは,Webの表現の可能性を大きく広げるものとして歓迎されました。しかしその後約10年,JavaScriptは不遇の時代を過ごすことになります。インターネットの発展と共にWebブラウザが利用される頻度はどんどん上がっていったにもかかわらず,JavaScriptは正しく評価されず,誤解され続けました。つい2,3年前まで「利用するにはJavaScriptが必須」のような制限を掲げるサイトは「ダサいサイト」という烙印(らくいん)を押されていたのです。ブラウザの設定でJavaScriptを無効にしている人もたくさんいました。
なぜJavaScriptはダサいと思われてしまったのでしょうか。原因としてまず挙げられるのは,JavaScriptの実装がブラウザごとに微妙に異なっており,すべてのブラウザで共通に利用できるスクリプトを書くのが困難だったことです。環境に依存せず閲覧できるはずのWebページで,ブラウザや環境を限定してしまうJavaScriptは「Webの思想を阻害するもの」という印象を与えてしまったのです。
また,JavaScript自体にも「素人が使うもの」というイメージが付きまとっていました。以前は,Webサイトを作り始めてしばらくすると,誰もが「かっこいいWebサイトを作りたい病」を発病していました。この病気の代表的な症状,例えば「ブラウザのステータス・バーの上で文字をアニメーションさせる」といったテクニックにJavaScriptが使われていたため,素人くさいイメージが染みついてしまったのです。さらに,JavaScriptに関連したセキュリティ・ホールがブラウザの実装にときおり発見されるのも,JavaScriptのイメージを悪くする原因になっていました。
Googleの採用が再注目のきっかけに
ただそうした不遇の時代にありながら,JavaScriptは標準化団体であるEcmaInternationalによって標準化が行われ,機能,セキュリティ,互換性の向上が着々と行われていきました(カコミ記事「JavaScriptとECMAScriptとの関係」を参照)。そして2004~2005年あたりを境にJavaScriptは再び注目を集め始めました。そのきっかけになったのがGoogleが提供するサービスです。
同社は,地図サービス「GoogleMaps」やメール・サービス「GMail」といった自社のサービスに積極的にJavaScriptを採用しました。GoogleがJavaScriptを使って便利で優れたインタフェースを持つサイトを構築したことにより,多くの開発者がJavaScriptの有用性に気付いたのです。また,JavaScriptを利用して任意のタイミングでデータ通信を行う「Ajax」という手法も,Googleが多用することで注目を集め,開発者の心をくすぐりました(カコミ記事「JavaScript注目のきっかけとなったAjax」を参照)。こうしてJavaScriptはようやく多くの技術者の注目を集めるようになったのです。その後もJavaScriptを利用したインタフェースが様々な開発者によって生み出され,その可能性は今もどんどん広がっています。
JavaScriptは,その不遇なスタートから「素人向けの言語」というイメージがいまだに根強くあります。しかし実際にはオブジェクト指向を取り入れた本格的な言語であり,技術者として勉強し甲斐のある技術です。JavaScriptの地位の向上とともに,JavaScriptのプログラミング・スタイルも,数年前によく見られた「HTMLの片隅にちょこちょこと関数を記述するスタイル」に代わって「きちんとオブジェクト指向の考え方を取り入れたスタイル」が主流になってきています。
JavaScriptの真の実力が注目を集めるようになってからは,数多くの情報がそろい,ブラウザ間の実装の違いを吸収してくれるライブラリも登場してきました。つまり今は,JavaScriptを深く学ぶにはちょうどいいタイミングだといえます。以降で,オブジェクト指向スタイルを取り入れたJavaScriptプログラミングの手法を紹介していきます。ぜひ,JavaScriptの“モダンな”プログラミング・スタイルについて理解を深めていただきたいと思います。
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