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無線LANで接続するIPコードレス電話の子機が接続できなくなった。直接の原因はIP電話機の無線LANの機能が不足しており、無線LANのチャンネル自動変更に追随できなかったこと。背景には特定事業者向けの「閉じた環境」を前提とした実装があった。

 前触れなく接続が切れるが、再起動すればつながり、しばらくは問題なく使える。こうしたトラブルは原因の特定が難しい。

 今回はまさにそうしたトラブルだが、輪をかけてやっかいにしたのが、機器固有の独特な振る舞いだった。標準規格に基づいていたものであったが、振る舞いが独特で「常識」が通用しなかった。

ビジネス用の無線LAN電話を導入

 トラブルに見舞われたのは寺島達生さんだ。現場は自宅に導入したオフィス向けの電話機。「2世帯住宅であるため各部屋に子機を置きたいと考えました。5つの部屋に合計6台を置き、さらにファクスもあります。こうした用途だと家庭用の電話機ではなく、小規模オフィス向けの製品を入れる必要がありました」(寺島さん)。

 具体的には、2021年にNTTの「SmartNetcommunity αA1」を導入した。外線と内線をつなぐ親機である「αA1主装置(以下、親機と表記)」と、子機である「IPコードレス電話機(以下、子機と表記)」から成るビジネスフォンだ。

 普段は日本ヒューレット・パッカードで電話関連のアプリケーションソフトのサポートをしている寺島さんでも、同製品を個人で構築・運用するのは苦労の連続だったという。「安定運用まで苦労しました。ようやくつながったと安心したら、今回のトラブルに出くわしました」(寺島さん)。

発端はWi-Fi 6E導入

 発端は2022年12月中旬に、6GHz帯に対応したメッシュWi-Fiを導入したことだ。製品には中国TP-Linkの「Deco XE75」を選んだ。「5GHz帯でも2402Mbps(ビット/秒)という速度が魅力でした。6GHz帯を使える機器はまだ持っていませんが、DFS(Dynamic Frequency Selection)の影響を受けないなど将来性も期待できます」(寺島さん)。

 ところがこのメッシュWi-Fiに、既に持っていた日本HPのプリンター「HP OfficeJet Pro 8600」がつながらなかった。調べるとメッシュWi-Fiと相性の問題があった。そこで、子機を接続するために別途使っていた無線LAN(Local Area Network)にプリンターを接続するように変更した。

トラブル発生時のネットワーク構成
トラブル発生時のネットワーク構成
メインのLANに接続してしまうとIP電話の子機が主装置(親機)に接続できなくなるため、別セグメントのLANを設けるなどかなり変則的な構成を採っている。インターネットには原則IPv6で接続している。
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