新しい職場、新しい仲間、新しいスキルや経験など、転職で新たに得られるものはたくさんあります。一方で、失うものもあります。これまでに10回の転職を経験している筆者からすれば、転職して失った最も大きいものは「人間関係」でした。
転職すると、よく分かり合っている職場の仲間を失います。同僚だけでなく、顧客や取引先との関係もリセットされます。何年もかけて信頼関係を築き上げてきた人たちに別れを告げて、新たな関係を一から作る必要があります。あまり意識されていませんが、これがなかなか大変なのです。
新たな知識やスキルは努力次第で身につけられるでしょうが、人間関係は相手があるものなので、自分の力でコントロールできるわけではありません。また人間関係を築く土台として、転職先の雰囲気、つまり「組織風土」はとても重要です。組織風土になじめないと、人間関係構築のハードルはさらに高くなります。
転職後、「社内ぼっち(社内でひとりぼっち)」の状態で心細い――。そんな状況に陥る人も少なくないようです。
前職の同僚との関係も変わってしまう
転職すると、前職の同僚との関係も変わります。転職後に何かのついでに前職を訪問すると、良き話し相手だったはずの同僚から「いいな、お前は自由で」「いつかお前と同じように辞めてやる」などといった言葉をかけられることがあります。そして、仕事の愚痴を聞かされます。
別に会社に恨みがあるから転職したわけではなくても、現状の仕事に不満を抱えている人の中では、あなたも恨みを持って辞めたことになっています。またあなたの退職後、偶然退職者が何人か出たりすると、退職の火付け役のような言われ方をします。
筆者にも経験があります。筆者は人事系の職種だったので、「お前が辞めるということは、会社はよほどひどい状態なのではないか」と在職者に言われました。
転職が決まると、それまであまり付き合いがなかった人が近寄ってくることもあります。筆者は退職時に、「お前のように、いつかは俺もこの会社を辞めてやる」と何人かに声をかけられた経験があります。しかし面白いもので、そうした人はほぼそのまま同じ会社にとどまっています。転職は無理にするものではありませんから、願望として心に置いているくらいがちょうど良いのかもしれません。
このように、転職すれば前職の同僚との人間関係がギクシャクしたり、途切れたりすることが多くあります。筆者は退職時に「近くまでお越しの際は気軽にお立ち寄りください」と言うようにしていましたが、実際に寄ってくれた元同僚は1人もいませんでした。