「米大統領選、トランプ勝利でビットコイン価格が急騰、資金の逃避先として存在感?」――。
筆者が過去に書いた記事のタイトルだ。ドナルド・トランプ氏が米大統領選に勝利したことを受けて、ビットコイン価格が急騰したことをご存じの読者は少なくないだろう。しかし、この見出し。違和感はないだろうか。
トランプ氏は大統領選の中で、「米国を仮想通貨の首都にする」と暗号資産(仮想通貨)の振興を強く打ち出した。今回のビットコイン高騰は、同氏への期待に端を発するものだ。ビットコインが「資金の逃避先」として存在感が増したわけではない。
種明かしをすると、冒頭の記事はトランプ氏が1度目の大統領選に当選した8年前に書いたもの。前回と今回でビットコインが高騰した理由は大きく異なる。
ただ違いはそれだけではない。ビットコインの価格そのものにも大きな開きがある。2016年の大統領選後には「1BTC(ビットコインの単位)当たり710ドル前後だったが、最高で約738ドルまで高騰した」。
今回はケタが違う。トランプ氏優勢が伝えられた2024年11月6日には7万6000ドル台に乗った。その後も最高値の更新が続き、12月5日には史上初めて10万ドルを超えた。「米国は完全に方向転換した。グローバルで関心が高まっているからこそ、これだけの価格になっている」と、KPMGジャパンの保木健次Web3.0推進支援部部長は語る。
仮想通貨の情報サイト「CoinMarketCap」によると、ビットコインの時価総額は2024年12月18日時点で約2兆ドル。既に銀を抜き去り、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)や米Alphabet(アルファベット)に迫る。時価総額18兆ドルとされる「金」との差は依然として大きいが、もはやビットコインを「マイナーな資産」と見なすのは難しい。