「今後、COBOL技術者の減少は明らかだ。このタイミングで刷新できなければ機会を逸してしまう」。こう話すのは、伊藤忠食品の波元英夫情報システム本部本部長だ。酒類・食品卸売業などを手掛ける同社は富士通製汎用機の撤廃を目指し、汎用機で稼働しているCOBOLアプリケーションをJavaなどに刷新中だ。
汎用機では、主に会計・営業・物流といったシステムが稼働している。伊藤忠食品は、刷新プロジェクトの第1弾として、2023年8月に会計システムのマイグレーションを完了した。2026年春に残りのシステムを更新し、汎用機の撤廃を狙う。
機能変更が少ない会計システムから移行
伊藤忠食品に汎用機が導入されたのは1969年5月に遡る。以後、社内の技術者が中心となって更改や改修を重ねてきた。しかしCOBOL技術者の減少により改修・運用が困難になることや、運用コストが高いことなどから「2012年あたりから脱COBOLの議論は進めていた」(伊藤忠食品の福岡隆情報システム本部本部長代行)という。しかし更改のたびに議論するものの、困難なプロジェクトになることが予想され、なかなか一歩を踏み出せなかった。
システム刷新に向けた本格的な議論が始まったのは2019年のことだ。当初は兄弟会社が導入していたERP(統合基幹業務システム)パッケージを採用しようとしたが、フィット・アンド・ギャップ分析の結果、「コストが見合わなかった」(波元本部長)という。そこで伊藤忠食品は、機能変更が少ない会計システムをCOBOLからJavaにマイグレーションし、クラウド環境への移行を決定した。これで運用コストを削減できる。機能拡張が多い営業や物流のシステムは作り替えることにした。
マイグレーション方法は基本的にツールでCOBOLプログラムなどを変更した後、現新比較テストを実施する。旧システムと新システムの出力を比べて、データなどに不具合がないかどうかを検証する。不具合があれば、詳しくコードを確認しながらその原因を突きとめて改修するという手順だ。
ただし長年改修や機能追加を実施してきた会計システムのCOBOLプログラムは7000~8000本に達し、ステップ数は300万以上に上った。伊藤忠食品はレガシーマイグレーションを多く手掛けている実績豊富なベンダーを探した結果、ソフトロードに協力してもらうことにした。またコンサルティング会社から3人のプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)が加わり、プロジェクトは最大で伊藤忠食品の技術者7~8人、ソフトロードの技術者約50人が携わった。プロジェクトの責任者は波元本部長となり、プロジェクトマネジャーを福岡本部長代行が務めた。
I/O処理を見直して修正
新会計システムは米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)の仮想マシン環境である「Amazon EC2」(以下、EC2)を採用。データベースはSQLデータベースサービスの「Amazon RDS」とオブジェクトストレージサービスの「Amazon S3」を使い、バッチの実行は「JP1」で実施することにした。