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  • 2016/03/04 掲載

MIT ヒュー・ハー教授の愛弟子 ロボット工学者遠藤 謙氏が語る、ロボット義足の未来

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マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)のヒュー・ハー教授の門下に入ったロボット工学者の遠藤 謙氏。同氏は帰国後、ソニーコンピュータサイエンス研究所アソシエイトリサーチャーとなり、さらに為末 大氏らとロボット義足を開発するベンチャー「Xiborg(サイボーグ)」を起こした。そして現在、ロボット義足によって拡張された障がい者の能力を最大限に引き出そうという試みに挑んでいる。
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Xiborg 代表取締役
ソニーコンピュータサイエンス研究所
遠藤 謙氏

MITのヒュー・ハー教授に感銘を受けて留学を決意

 Xiborg 代表取締役 兼 ソニーコンピュータサイエンス研究所 遠藤 謙氏。同氏は学生時代、慶応義塾大学で二足歩行ロボットの研究していた。ちょうどホンダのASIMOが世の中に登場し、ヒューマノイドロボットがブームになった2000年頃だ。将来は企業に入り、ロボットの研究を続けたいと夢見ていた遠藤氏だったが、あるときショッキングな出来事が起こる。

「高校時代のバスケ部の後輩が骨肉腫になってしまった。彼は二足歩行ロボットより、自分の足で歩きたいと願っていた。そのとき、このままロボットの研究を続けてよいものかとすごく悩んだ」(遠藤氏)

 そんな葛藤のなか、2004年に同氏はMITメディアラボのヒュー・ハー教授と知り合った。彼は17歳のときに、氷の壁を登るアイスクライム競技で負傷し、凍傷になって二度と競技には戻れないと医師に宣告された。しかし奮起し、壁を登るための義足を開発して、最終的に両足を切って自身の脚代わりにしたのだ。すると、これまで登れなかった壁までも登れるようになったという。

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「よくよく考えれば、ロッククライマーにとって、足を切るという行為は体重が軽くなるということ。さらに脚がないぶん、筋肉もなくなり、エネルギーも使われない。あるいは岩肌に合わせて、義足の形状を変えられるなど、いろいろなメリットがあることに気づいた」(遠藤氏)

 障がい者が健常者を上回る能力を獲得できる。それまでキレイ事だと言われていたことを、ヒュー・ハー教授はまさに自分自身で体現していたのだ。

 同氏の語りのなかに<There is no such a thing as disabled person. There is only physically disabled technology>(世の中には身体障がい者はいない。ただ技術のほうに障がいがあるだけだ)という名言がある。

 ヒュー・ハー教授の話す言葉は強い。しかも、それを自身の手で実現した。遠藤氏はヒュー・ハーの言動と行動に感銘を受けて留学を決意し、2005年に慶応義塾大学の博士課程を中途退学し、MITのヒュー・ハー教授のもとへと飛んだ。

 まだ義足の世界は技術が人に追いついていない。ヒュー・ハー教授は、両膝はあるものの足首はない状態だ。これに対して現状の義足では、日常生活は何とか熟せるものの、やはり不便さは変らない。健常者は毎秒1.2mぐらいで普通に歩けるが、その速度で彼が歩くと体に無理が出て汗が噴き出してしまうのだ。

 MIT時代にヒュー・ハー教授と遠藤氏が研究していたロボット義足は、足首をロボットにすることで稼働範囲を広げ、階段の上り下りなどでもスムーズに対応できる。通常の義足は足首の角度が固定されているため、斜面で止まることも難しかったが、工夫を凝らし、それを実現できるようにした。

【次ページ】開発中のロボット義足でパラリンピックに挑戦
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