2017/07/31
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米、北朝鮮問題で中国を非難 トランプ氏「非常に失望」
(CNN) 北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を受け、米国のヘイリー国連大使は30日、北朝鮮とつながりの深い中国に対し圧力が十分でないと非難する声明を発表した。これに先立ちトランプ米大統領も、北朝鮮への具体的な行動に踏み切らない中国に対する不満をツイッター上でつづっている。
米政府はこれまで、北朝鮮に対する軍事的圧力を高める一方、中国に向けて経済面での圧力をかけるよう求めてきた。
しかし北朝鮮は28日、今月2度目となるICBM発射実験を実施するなど国際社会への挑戦的な姿勢を崩していない。
トランプ大統領は29日夜、ツイッターに「中国には非常に失望している。我が国の過去の愚かな指導者たちは、貿易で彼らに年間何千億ドルも儲けさせたのに」と投稿。「彼らはただ対話するだけで、北朝鮮に関して我々のために何一つやっていない。この状況が続くことはもはや容認できない。中国はこの問題を簡単に解決できたはずだ」と苛立ちをあらわにした。
30日にはヘイリー国連大使が声明で、北朝鮮問題の従来の解決策について、国際的圧力の「有意義な増大」につながっていないとの認識を示唆。「対話の時は終わった。北朝鮮政権が国際社会の平和に対して投げかける危険は、今や誰の目にも明らかだ」と述べた。
その上で「中国はこの重大な1歩を踏み出す最終的な意思があるのかどうかを決断しなければならない」と、中国による対応が不十分だとの見解を強調した。(
CNNより抜粋)
中国が大規模軍事パレード、最新鋭の兵器公開
北京(CNN) 中国人民解放軍は30日、創立90周年記念の軍事パレードを実施し、最新鋭の戦闘機やミサイルを公開した。
最高指導部の大幅な入れ替わりが予想される今秋の共産党大会に向けて、習近平(シーチンピン)国家主席の権力掌握を誇示する狙いもあったとみられる。
今回のパレードは通常の北京中心部ではなく、内モンゴル自治区にあるアジア最大規模の演習場で実施された。国防当局の報道官は「地域の現状とは無関係」と述べ、パレードが前々から計画されていたことを強調した。
アジア地域では28日夜、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、米本土全域が射程圏内に入ったと主張。トランプ米大統領は29日のツイートで、中国が北朝鮮への影響力を行使していないと非難し、「大変失望している」と発言していた。
パレードに先立つ閲兵式には、1万2000人の兵士が参加。迷彩服に身を包んだ習主席は演説で「世界は平和ではなく、平和には防衛が必要だ」「我が軍には世界平和の維持に貢献する能力がある」と強調した。
国防当局によると、パレードで登場した100機以上の航空機や600種類近い兵器のうち、半数近くは初公開だった。特に、最新世代のステルス戦闘機「殲(せん)20(J20)」は米軍のステルス機に匹敵する能力があるともいわれ、注目を集めている。またパレードの最後には、複数の弾頭の塔載が可能とされる新型のICBM「東風31AG」も公開された。(
CNNより抜粋)
北朝鮮電撃訪問以外にない――北の脅威から人類を守るために
遠藤誉 | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
習近平を褒め殺しにしていたトランプも遂に激しい失望を露わにした。軍事先制攻撃の選択はあるが、ピンポイント外科手術以外は犠牲が大きすぎる。制裁などで北は退かない。となればこの段階で食い止める道は一つしかない。
◆褒め殺しをやめたトランプ
今年4月6日と7日の米中首脳会談以来、トランプ大統領は習近平国家主席を「尊敬する」「彼ならば、きっとやってくれる」と褒めに褒めて、北朝鮮問題の解決を習近平に預けた。
中国もそれなりに努力して、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」を通して北朝鮮を非難。米軍が38度線を越えたら中国は黙っていないが、ピンポイントの「外科手術」なら、米軍の軍事行動を黙認するというところまで行った。
この「ピンポイント的外科手術」とは「核・ミサイル施設のみの破壊」を指しているのだが、暗に「金正恩の斬首作戦」を示唆していると解釈を広げることもできる。しかも、失敗は許されない。先に手を出したからには、絶対に「100%」成功しなければならないのだ。
それ以外の状況で北朝鮮を軍事攻撃した時には、必ず第三次世界大戦に発展する。
中国はもちろん、それを望んでいない。
◆中国は北朝鮮の核・ミサイル開発を望んでいない
中国はどのようなことがあっても、北朝鮮が核・ミサイルを保有する軍事大国になって欲しくはない。いつ北京にミサイルの照準を絞るか、分かったものではないからだ。
もう一つには、もし北朝鮮が核保有国になれば、必ず韓国もそれを望み、その結果、日本が核保有国になろうとするのは明らかだからだ。それだけは避けたいと思っている。
また北が強くなって南(韓国)をも統一した場合、すぐ隣の吉林省延辺朝鮮族自治州にいる中国籍朝鮮族が「民族としての望郷の念に駆られて」、統一された朝鮮半島に戻ることは不可避で、となれば中国にいる数多くの少数民族の独立を刺激する。それは中国共産党による一党支配体制を崩壊させるので、その意味でも北朝鮮が軍事大国になってしまうことは避けたいのである。
◆中国は制裁のコマしか持っていない
中国が持っているのは「断油」「中朝国境封鎖」「中朝軍事同盟破棄」という3つのカードだ。しかし、これは「制裁」のカードでしかない。制裁を強化すれば、北はその国へとミサイルの照準を当てるだろう。中朝戦争が始まる。
いかなる戦争であれ、大規模戦争が中国大陸上で始まれば、中国の一党支配体制は崩壊する。社会不安ほど習近平にとって怖いものはない。ましていわんや、今は5年に一度の党大会が待っている。来年3月に開催される全人代で、習近平は二期目の国家主席に就任するので、それまではいかなる事件も起きてほしくない。だから、戦争になることだけは絶対に避けようとするだろう。
したがって、3枚のカードは持っていても、カードを切れないのである。
◆金正恩の悲願――最大の敵は朝鮮戦争の交戦国であるアメリカ
いま金正恩が核・ミサイルで脅しているのはアメリカである。
なぜなら朝鮮戦争の時の交戦国はアメリカをトップとした連合国で、韓国はその中の一国に過ぎない。休戦協定で署名をした相手は、連合国を代表するアメリカだった。
そのアメリカに振り向かせたい。
こちらを振り向いて、北朝鮮の存在を認めろというのが願望だ。
具体的には休戦協定の最終目的である「平和協定」を結べと主張してきた。
しかし、そう言いながら核・ミサイル開発をやめなかったので、「やめるまで、会わない」とアメリカは主張。しかし「やめるまで」という「国連の制裁」は、効力がなかったことを、歴史は証明している。
これ以上、制裁を強化しても、その間に北は核・ミサイル技術の進歩を加速度的に遂げていくだけだ。
◆休戦協定に違反したアメリカが最終責任を
これまで何度も考察してきたように、1953年7月27日に結ばれた休戦協定には、休戦協定署名後の3ヵ月以内に、すべての他国の軍隊は朝鮮半島から引き揚げることとなっている。中国は1958年までにすべて引き揚げた。しかしアメリカはこんにちに至るまで引き揚げていない。
日本人は感覚がマヒしてしまって、在韓米軍がいるのは、まるで「自然の理」であるかのごとく錯覚しているが、これは明らかな休戦協定違反なのである。
この事実に目を向けることは、まるで北朝鮮や中国の味方をしているような無言の圧力があり、「そんな事実はなかったもの」としなければならないような日本の世論の見えない圧力があるが、事実に目を向ける以外に、われわれ日本人を北の脅威から守る道はない。
◆トランプは北朝鮮を電撃訪問すべし!
トランプが、習近平の褒め殺しをやめて「今後は容赦しない」と言ったところで、せいぜい北朝鮮と取引している中国企業や個人を制裁する程度で、こんなことでは北朝鮮はビクともしない。なにせ世界160ヶ国以上と国交を結んでいるし、統計に出て来ない「フロント企業」という闇企業で取引しているからだ。中朝貿易などは、「正当な統計」に出ているだけで、そんなものは闇取引の数値と比べれば、ほんの誤差範囲でしかない。
かといって、アメリカには戦争に踏み切る勇気はないだろう。あまりに犠牲が大きいからだ。
となれば、いまアメリカにできる唯一の方法は「トランプと金正恩が会うこと」だけである。
かつてキッシンジャー(元米国務長官)が忍者外交で毛沢東や周恩来と会ったように、世界をアッと言わせる「米朝首脳会談」をするしかないのである。どうせ、トランプはキッシンジャーのアドバイスで政権を動かしている。ならば、忍者外交もキッシンジャーの真似をして、決断すればいい。
これらの全ては拙著『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』に書いてある。こういう結論しか出て来ない根拠を徹底的に分析した。
◆安倍首相もぜひ、北朝鮮電撃訪問を!
安倍首相にも提案したい。
トランプだけでなく、安倍首相にもぜひ、北朝鮮を電撃訪問することをお勧めしたい。
そうすれば、北の脅威は軽減するだけでなく、拉致問題解決の糸口も模索できる。日本国民の支持率も急増するだろう。
田中角栄がニクソンと競走したように、安倍首相はトランプ大統領と競争すればいい。それを先に成し遂げた人間が、ノーベル平和賞を受賞するだろう。
金正恩と会うことは、北の核・ミサイルを認めることになると警戒しているが、会わなくても、いや、会わない方が、北はもっと核・ミサイル技術をレベルアップしていく。その結果待っているのは、人類の滅亡だ。
北の脅威に怯えながら生きていかなければならない日本国民を救うには、これしかない。
その論理的根拠を、安倍総理は是非とも『習近平vs.トランプ 世界を制覇するのは誰か』を熟読して理解していただきたい。この本で全て詳述した。(
Yahoo!より抜粋)
北朝鮮のICBM発射で日本の核武装に現実味
2017年7月31日 6時0分 JBpress
北朝鮮は7月28日の深夜23時42分頃、ICBMとみられるミサイルを発射、ミサイルは約1000キロ飛翔し、奥尻島沖合の我が国EEZ内の海域に落下した。飛翔時間は45秒間で、高度は3000キロ以上に達したと報じられている。
今回のミサイルは「38ノース」の発表によれば、7月4日に発射された「火星(ファン)14」よりも燃焼時間、最高高度からみても射程がより長くなり、9000キロから1万キロに達し、米大陸本土東海岸も攻撃できる能力を持つとみられている。
米国防総省も、発射から2時間後に、今回のミサイルをICBMと判断していると公表している。その能力からみて、ICBMであることは間違いない。
北朝鮮のICBM完成は1~2年後とみられていたが、予想よりも早く、確実に完成に近づいている。軍事技術的にも戦術的にも戦略的にも、その衝撃は極めて深刻である。日本国民にも気概と行動が求められている。
1 今回のICBM実験の軍事技術上の衝撃
38ノースによれば、前回の7月4日に発射された火星14は2段式だが、1段目は、「火星12」の1段目よりもエンジンの出力と燃料搭載量を増して、やや大型化し、最大射程が7500キロで、西海岸に最大で重量650キロの弾頭を到達させられる能力を持つとみられていた。
火星14の2段目は、銀河(ウンハ)の3段目と同じ型のミサイルとみられている。しかし2段目は推力が不足しており、ICBMには不向きで改良が必要とみられていた。
今回のミサイルでは、2段目がより強力なエンジンのミサイルに改良された可能性が高い。ICBMとしてより完成度が上がっている。
残された課題の、大気圏再突入後の弾頭の信頼性については、確実な情報はないが、試験ごとに向上しているとみられる。今回もロフティッド軌道をとっており、再突入時の弾頭の信頼性向上が、試験の目的の1つであるとみられる。
7月中頃から日本海で、北朝鮮の潜水艦が1週間以上連続して活動していることが報じられているが、今回のICBM発射試験の弾着観測などの任務を帯びていた可能性もある。
精度確認とともに、弾着直前の起爆装置の作動確認といった再突入時の弾頭の信頼性確認も目的であったのかもしれない。この推測の当否は、北朝鮮の潜水艦や情報収集艦などの行動や通信電子情報により確認できるであろう。
核弾頭の開発および核実験の準備については、38ノースの衛星画像の分析結果によれば、豊渓里(プンゲリ)の核実験場の北坑でも、管理施設などでも顕著な変化はみられない。新たなトンネルを掘っている兆候もない。
しかし、即応態勢は維持され、排水も定期的に行われており、命令があり次第、核実験を行える状況にあるとみられている。
核関連物質の生産については、放射線化学研究所のプルトニウム生産も間歇的に続いており、プルトニウムの増産は続いている。また、ウラン濃縮施設の稼働も確認されているが、整備のための運転ともみられ、濃縮ウランが増産されているかまでは不明である。
2016年12月から翌年1月まで活発化した寧辺の5メガワットの炉と実験用軽水炉の活動は、低調なままであり、時折稼働されているに過ぎない。
注目されるのは、加速型原爆や水爆を生産するために必要なトリチウムの生産炉の活動が低調なままであることである。すでに必要量を確保しているのか、当面水爆実験を行う予定がないのかは不明である。
しかし、北朝鮮は水爆実験に成功したと自称しており、前者とすれば、トリチウムは不安定で速く劣化が進むため、近く水爆実験が行われる可能性も否定できない。
いずれにしても、核関連物質の増産は続き、関連施設の稼働状態は維持されており、核実験用の需用に応じ得る態勢にあると言えよう。
今回のミサイルについて、7月29日の朝鮮中央通信は、「火星14」ICBMと称し、設定海域に「正確に着弾」し、再突入弾頭が「数千度の高温の中でも安定性を維持」し、起爆装置の「正確な作動を確認した」と報じている。
発射試験の回数などから見て、北朝鮮のICBMはまだ再突入弾頭の信頼性確認、搭載可能な小型核弾頭の開発などの課題は残っているとみられるものの、全般にはほぼ完成の域に達しているとみられる。
2 今回のICBM発射の戦術・戦略的衝撃
今回、北朝鮮は深夜にあえて発射している。また、発射場所も予想された亀城(クソン)ではなく、北部の予想外の発射基地、舞坪里(ムピョンリ)であった。いつでもどこからでも、金正恩委員長の言うように「奇襲的に」ICBMを発射できるとの能力を誇示したことは明らかである。
特に北朝鮮が、米本土を直接攻撃できるICBMの奇襲的即時発射能力を持つことは、米韓軍が通常戦力により北朝鮮を先制攻撃するか、北朝鮮による侵略の防御に成功し北側にとり戦勢が不利になった場合などに、北朝鮮が奇襲的に米国に先制核攻撃を加えられる能力を持つことを意味している。
このことは、米韓軍による通常戦力による作戦遂行が、それが先制であれ防勢であれ、著しく実行困難になることを意味している。
現状では、ICBMを確実に撃墜できるミサイル防衛システムは、米国のみならず世界のどの国も保有していない。2021年頃までは信頼性のあるICBM迎撃システムは配備できないとみられている。
仮に米国が開発を加速し配備を繰り上げたとしても、現状を前提とすれば、北朝鮮のICBM実戦配備が先行する可能性が高い。
また、都市目標に対する奇襲的な先制核攻撃を許せば、核シェルターなどに退避する時間もなく、北朝鮮が保有しているとみられる20キロトン程度の核弾頭が1発地上爆発しても、瞬時に50万人以上の被害が出るであろう。
上空数百キロで核爆発が起これば、半径数百から1000キロ以上にわたり、強烈な電磁パルスが発生し、対電磁シールドを施していないすべての電子装置が機能麻痺するか破壊される。
そのため、すべてのコンピューターネットワーク、電力、交通、水利、医療、金融、研究開発、教育その他のインフラが麻痺し機能しなくなるとみられている。
いずれにしても、米国は北朝鮮のICBMにより、「耐え難い損失」を受ける可能性が高まっており、北朝鮮は米国に対する「最小限抑止」の段階に着実に近づいていると言えよう。
さらに、戦略核戦力バランスについても、北朝鮮の背後にいる中露と米国のバランスは米国不利の方向に傾きつつある。
CSISの報告によれば、米国の現用核弾頭の平均経過年数は29年に達し、劣化が進んでいる。また投射手段も冷戦時代からそれほど更新が進んでいない。「核兵器なき世界」を主導したバラク・オバマ政権は、核戦力の近代化に力を入れてこなかった。
ドナルド・トランプ政権は、核戦力の近代化と増強を重視しているが、今から開発を進めてもその成果が出るのは2020年代の後半とみられている。
それまでは、核戦力バランスは、冷戦後も一貫して核戦力の増強近代化に注力してきた中露にとり有利な方向に推移するであろう。そのため、中露との戦争に発展しかねない軍事的選択肢は、戦略戦力のバランス上、朝鮮半島でも米国としては採り得ない選択になっている。
中露にとって、北東アジアにおける米軍との緩衝国としての北朝鮮の価値は死活的である。朝鮮半島で米韓と北朝鮮の間に紛争が起これば、中露が介入することはほぼ確実であろう。特に、北朝鮮が不利になれば、その可能性は高まる。
北朝鮮単独との紛争についても、米本土が被る損害を想定すれば、北朝鮮によるICBMの保有は、米国が朝鮮半島で通常戦力により軍事行動を起こす際のリスクが飛躍的に上がることを意味する。
すなわち、米国の韓国に対する通常戦力による拡大抑止の信頼性が大幅に損なわれることになる。
米韓軍は、朝鮮半島有事には、まず休戦ライン沿いの火砲やロケット砲など、ソウルを直撃できる火力を完全制圧するとともに、核・ミサイル関連の施設、ミサイル基地・司令部などの制圧破壊を最優先しなければならない。
これは、北朝鮮側の反撃を封ずるために、作戦の規模や様相、目的にかかわらず、まず行わねばならない必須の作戦行動である。
しかし、北朝鮮が米国でも自国を防御しきれないICBMを持てば、米韓軍は通常戦力の行使もできなくなる恐れが高まる。
そうなれば、ソウルは北朝鮮の砲火の人質になり、北朝鮮の核恫喝の前に、韓国政府は戦わずして北朝鮮側の、在韓米軍撤退などの要求に応じざるを得なくなるであろう。金日成以来の宿願であった、北主導の南北朝鮮統一が実現することになる。
米国にとり、北朝鮮のICBM保有を阻止する最後の残された手段は、CIAを中心とし、北朝鮮内部に協力者を得て、金正恩に関するリアルタイムの情報を確認し謀殺するとともに、サイバー攻撃、電磁バルス攻撃などを併用して、核・化学など大量破壊兵器使用に関する指揮通信統制・コンピューター・情報・警戒監視・偵察(C4ISR)を機能麻痺させるといった、謀略工作であろうと思われる。
そのために、米国は、CIA内に異例の北朝鮮のみを対象とした横断的組織を立ち上げており、今後も、サイバー戦を含めた最大限の情報戦を展開していくものと思われる。
3 このような事態に日本はどう対応すべきか?
日本としては早急に、核と非核両面で抑止力と対処力を強化する必要がある。
そのためには、残存して報復できる能力を持つことが最も確実な抑止手段であり、その最適の手段は、原子力潜水艦に搭載した核弾道ミサイル(SLBM)を保有することである。
SLBMは、残存性は極めて高いが、一度発射すれば位置が判明し撃沈される恐れがあるため、先制攻撃には使いにくい、自衛的核戦力である。日本には、SLBMとそれを搭載する潜水艦を独自開発する能力がある。
問題は国内世論と米国以下の国際的反発だが、事態がここまで深刻になれば、日本が唯一の被爆国として最小限の報復的核戦力を保有することについて、国際的理解を得ることは不可能ではなくなりつつあると言えよう。
核兵器不拡散条約第十条でも、「異常な事態が、自国の至高の利益を危うくしていると認める場合」には、脱退することが認められている。
もし日本に、信頼性が低下している米国の核の傘への全面依存を強いるならば、日本も韓国と同様に北朝鮮とその背後にいる中露の核恫喝に屈するしかなくなることになる。その場合に、米国や西側諸国の受ける戦略的損失は計り知れないであろう。
また、米国にとっても、日本や韓国が独自の核戦力を保有することを認め、自国の核抑止力との有事における相互連動、核のリンケージを強めることができれば、米国自身の核抑止力も高まることになる。
日韓などの同盟国が北朝鮮の核恫喝に屈しない態勢を固めるには、日韓を信頼し、その核保有を認めるのが米国の国益に適う合理的政策になるであろう。北朝鮮のICBM保有は阻止できず、中露も信頼できないとなれば、米国としては日韓を信頼するしか選択はなくなる。
もし米国が日韓の核保有を認めなければ、米国は半島有事に日韓を見棄てるか、または通常戦力で北の大量破壊兵器を併用した攻撃を支えきれない日韓両国に対し、中露との核対決を覚悟して、米国自ら通常戦力と核戦力で日韓を支援せざるを得なくなる。その損害とリスクは計り知れない。
このような選択を強いられるよりも、日韓の自衛的核戦力の保有を認める方が、はるかにコストもリスクも少なく、米国にとり合理的な選択と言えよう。
そのような先例としてイスラエルが挙げられる。イスラエルは核兵器不拡散条約に未署名だが、核兵器については、持っているとも持っていないとも公式には言わない政策を一貫して取っている。
しかし現実には、イスラエルは80~120発程度の核弾頭を持つ核保有国とみられている。それは1970年代に米国が、中東での大規模な通常戦争の再来を抑止するため、イスラエルの核保有を半ば黙認した結果であった。
それが功を奏し、第4次中東戦争以降、イスラエルに対する大規模通常戦争は抑止されている。
受動的抑止手段である弾道ミサイル防衛面でも、北朝鮮のICBMの脅威を防げないという弱点は早急に改善しなければならない。スタンダードミサイル3のBlockIIBなど、ICBMの撃墜も可能とされる新型ミサイル防衛システムの開発配備も急がねばならない。
また、レールガン、マイクロウェーブ、高出力レーザーなどの指向性エネルギー兵器の開発を進め、弾道ミサイルの撃墜確率を限りなく100%に近づけねばならない。
これらの開発には巨額の予算と高度の技術の結集が不可欠であり、日米欧の協力が欠かせない。
現代戦は情報戦である。米国は世界を覆う衛星による統合された情報・警戒監視・偵察システム(ISR)を構築するため、小型衛星を多数打上げようと計画している。
これらの開発配備と追跡その他の運用面での協力も、情報戦が主体となる今日の戦いでは極めて重要である。サイバー戦、情報戦についても、日米欧の国際協力が欠かせない。
GSOMIAを含めた日米韓の協力強化も必要だが、文在寅(ムン・ジェイン)政権の今後の政策の方向と信頼性を見極めねばならないであろう。文政権が、北朝鮮に対抗し、独自の自立的通常戦力、核戦力開発に動くのか、それとも北朝鮮に屈従する道に向かうのかが、注目される。
日本としては、通常戦力の面でも、無人機、無人潜水艇、ロボット、AI(人工知能)、ISR、サイバー、宇宙の利用、弾道・巡航ミサイルなどの開発配備を急がねばならない。指向性エネルギー兵器の開発促進は死活的に重要である。
人的な側面では、これらに応ずる人材の育成はもちろん、予備自衛官制度の充実など予備戦力の確保が必要である。民間の研究開発機関、自治体、企業などとの連携もさらに深めねばならない。
最先端分野での研究開発の協力は、平時からの技術戦、情報戦の様相が強まっている今日、極めて重要である。米中露欧いずれも、サイバーはじめ科学技術面での軍民融合を重視し促進している。
また民間防衛、特に核・化学などの大量破壊兵器から国民を守るためのシェルターの整備が欠かせない。
大規模疎開と併用すれば、損害を100分の1にすることができると、冷戦期から欧米ではみられてきた。そのため、世界各国は核シェルターの整備に努め平均7割程度の国民は収容できる態勢になっている。しかし日本では、普及率は0.2%に過ぎない。
日本は朝鮮半島有事に、核・化学攻撃を受ける可能性が高い。韓国はむしろ、征服対象であるため大量破壊兵器は使わないが、日本にはそのような抑制は働かず、核攻撃などの対象になりやすいと、米韓ではみられている。
38ノースは、北朝鮮はすでに1000基の弾道ミサイルを保有していると見積っている。そのうち、約300基のノドンは射程からみて日本向けである。基地の数は50程度とみられ、同時に最大50発を発射できる。
これまで韓国向けとみられていたスカッド約600基も、射程1000キロの改良型が増加しており、100~200基は西日本を攻撃可能になっているとみられる。
ムスダンの保有数は不明だが、基地は50カ所あると見積もられている。同時最大50発は発射でき、その一部は日本を狙うであろう。
固体燃料式の北極星1と北極星2は、ともに日本をロフティッド弾道で狙うことができる。その数は今後量産されれば、数十発にはなるとみられる。現在のミサイル防衛能力ではロフティッド軌道で突入されると撃墜はできない。
これらを合わせると、日本に向けることのできるミサイル数は最大500~600発、同時発射50~100発程度と見積もられる。これらミサイルはほぼすべて地下化、移動化、水中化されており、事前の発見も制圧も極めて困難とみられる。また、発射後もすぐに地下基地に入るため、報復制圧も難しい。
日本が敵基地攻撃能力を持っても、効果的にこれらミサイル基地を制圧するのは事実上極めて困難とみられる。平時からの情報活動によほど力を入れねば実効性を伴わないことになる。
これらを総合し、仮に北朝鮮が日本向けにミサイルを同時に50~100発発射したとした場合、事前制圧とミサイル防衛システムで、楽観的に見て、その8割を撃墜できたとしても、10~20発は着弾することになる。
核弾頭の威力を20キロトンとしても、1発で50万人以上の損害が出ると国連はみている。核保有国では、核弾頭の装備数は大量破壊兵器の弾頭の2割程度を占めるのが一般的とされている。そうと仮定すれば、核弾頭数は2~4発となり、損害はそれだけでも100万~200万人となる。
残りは化学弾頭とみられるが、天候気象に左右され見積もりは難しいが、1発で数万人から数十万人の損害がでるとみられる。そのため、8~16発として8万人から百数十万人の損害が出るであろう。
合わせて百万人から数百万人の損害が出るとみられる。さらに、局地的な地上侵攻、特殊部隊による破壊・襲撃、全面的サイバー攻撃も併用されるであろう。
核の電磁パルスによりコンピューターや電子装置がマヒし、各種インフラも機能しなくなる。経済的な損失、社会的混乱も計り知れない。
まさに日本は、国家存亡の危機に直面すると言わねばならない。自衛隊だけでは、日本と日本国民を守ることはできない。米軍も当てにはならない。
いま日本国民一人ひとりが、この眼前の危機を直視し、他力本願ではなく自らの力で日本を守り、自らと家族を守る気概があるか否かを、問われている。何よりも大切なことは、危機を未然に防ぐためにいま行動することであろう。(
JBプレスより抜粋)