2009/01/29
世界中(自分も含めて)が「オバマブーム」に沸き返る最中、こういう「冷静な見方」も一部では存在してるようですね。
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【明日へのフォーカス】編集委員・高畑昭男 「オバマ・マニア」の危うさ
米ギャラップ社の世論調査によれば、バラク・オバマ新大統領の就任式直後の支持率は1953年のアイゼンハワー大統領と同じ68%を記録した。就任直前の84%と比べると15ポイント以上目減りし、「意見なし」が21%あったという。歴代大統領と同様に「実績を見てから判断しよう」と考えた人が案外多かったのだとすれば、「オバマ・ブーム」に浮かれた国民ばかりとはいえないのかもしれない。
オバマ氏の就任式には全米から180万人もの人が詰めかけ、65年のジョンソン大統領就任式(120万人)の記録を大幅に書き換えたのは周知の通りだ。だが、歴史を振り返ってみると、就任時の人気ほど危ういものはないことがよくわかる。
ジョンソンの就任式に過去最大の群衆が押し寄せたのには前段がある。それは、前年の大統領選で史上空前の大差(一般投票)で共和党候補を撃沈したことだ。共和党保守のゴールドウォーター氏を「好戦主義者」と決めつけた選挙戦が成功し、歴史的勝利を果たした大統領の姿をひと目見たいと思う人々が首都へ殺到したのは自然な流れともいえた。
にもかかわらず、ジョンソンは悪名高い「トンキン湾決議」で北ベトナム爆撃を強化し、米軍を55万人に増強して犠牲を重ねたあげく、激しいテト攻勢と国内の反戦運動の前に挫折した。68年には自ら大統領選の再出馬辞退宣言に追い込まれてしまった。ほかにも理由があったかもしれないが、お祭り騒ぎの就任式から数えればわずか3年後のことだった。
ジョンソンと同じ命運がオバマ氏にも待ち構えているとは思いたくない。それでも、「実績を見てから」というのはなかなかシビアで大切な判断基準であることを見落とすべきではない。
就任式直前の米誌タイムのコラムは、「ワシントンは悪性のオバマ・マニア熱にかかっている」と冷ややかな目線で書かれていた。「今後、時代の尺度は『BB』(バラク以前)か『AB』(バラク以後)かで決まる」と語る黒人映画監督の発言や、「オバマ氏と同じ空気を吸いたい」と就任式にやってきた市民の話などを引き合いにして「いくらなんでも行き過ぎだろう」というのである。
オバマ氏本人がブームの過熱をあおっているわけではもちろんない。しかし、実績をまだ示していない人物を猫も杓子(しゃくし)も「メサイア(救世主)」とあがめてしまう過熱ぶりに、ちょっと怖いものを感じるのは私だけだろうか。日本の若い世代に人気を博した漫画「20世紀少年」に出てくるえたいの知れない「ともだち」を連想しなくもない。何人かの知人は「私もそう感じた」という。
冷静な知識人層まで実績を見る前に「信じたい」という願望が先走ってしまう。それだけ米国の現状が厳しいせいもあるが、一つはオバマ氏の具体的な政策が必ずしも明確でなく、つかみどころがないせいもあるのではないか。
オバマ就任式当日のウォールストリート・ジャーナル紙は、「不透明な希望」と題した社説(アジア版は21日付)でオバマ氏の資質を評価しつつ、「政治的性格はとらえどころがなく、不透明なものがある」として、不人気や犠牲も覚悟の上で「国益にかかわる難しい決断を下せるかで真価が問われる」と指摘していた。
「実績を見てから」という冷静さはジャーナリズムにも大切だ。皮相なブームに流れず、オバマ政権の等身大の実像を見極めていく視点を保ちたい。(
産経より抜粋)
【主張】露ミサイル配備 不要な緊張招く強硬姿勢
ロシアのメドベージェフ大統領は5日の年次教書演説で、米国のミサイル防衛(MD)施設の東欧配備に対抗するため、欧州にあるロシアの飛び地カリーニングラード州に新型ミサイルを配備すると表明した。欧米諸国をにらむ西部の戦略ミサイル基地3つの解体計画も撤回した。
新たに配備が予定されるミサイル「イスカンデール」は、地対地型で欧州が射程に入る。米国のMD施設には妨害電波を発するとも表明しており、ロシア側は徹底して米国によるMD配備計画を阻止する姿勢を示した形だ。
年次教書演説は当初、10月23日に予定されていた。だが、米国の次期大統領にオバマ氏が選ばれたその日に予定をあえて変更し、米国批判に満ちた演説を行ったのは、米国に新政権が誕生する前に“ミサイル”という強烈な牽制(けんせい)球を送り、譲歩をうながすもくろみからだろう。
その証拠に、メドベージェフ大統領は演説で、米国を非難しながらも、米国と軍拡競争を行う意思がないことを強調し、反テロや核の不拡散などの問題では「米国と協力しなければならない」と言及する柔軟姿勢もみせた。
東西冷戦で敗北しソ連崩壊に追い込まれたロシアは、石油などエネルギー資源の価格高騰で弱体化した国力を急速に復活させ、大国にふさわしい地位と発言権を求め始めた。しかし、米国に端を発した金融危機は、そのロシアをものみ込んでいる。
通貨ルーブルは金融危機以来、対ドルで10%ほども下落した。その買い支えなどで、増え続けてきた外貨準備高は8カ月ぶりに5000億ドルを割り込み、減少の一途をたどっている。
インフレも止まらない。株価は暴落し、ロシアの大富豪たちは巨額の含み損を抱えている。頼りの石油価格も1バレル当たり60ドル以下と、最高値の約半分の水準に下落した。国民の圧倒的な支持を得ていた露政権の支持率低下も著しいようである。
ロシアの強硬姿勢の裏には、こうした政権の弱さと焦りを覆い隠す狙いがあるのだろう。
金融危機の最中にある世界は、その克服に協調姿勢を強めている。米国の次期政権にミサイルで揺さぶりをかけるロシアの“火遊び”は不要な緊張関係を招くだけだ。国際社会はロシアの動きを警戒しなければならない。(
産経より抜粋)
ロシアが軍装備近代化へ軍事費増強 英シンクタンク報告書
【ロンドン=木村正人】英国の国際戦略研究所(IISS)は27日、世界の軍事力を分析した年次報告書「ミリタリー・バランス2009」を発表し、昨年8月にグルジアに侵攻したロシアが、軍装備の近代化に向けて今年の軍事費を前年比で25%も増額したと指摘した。イスラム原理主義勢力タリバンが攻勢を強めるパキスタンやアフガニスタンでのテロ対策は難航しているという。
報告書によると、ロシア軍がグルジア侵攻に要した費用は125億ルーブル(約342億円)。強硬姿勢を示すことで軍の誇りは回復できたが、軍備の近代化が遅れている実態を露呈した。このため、ロシア軍は最新型戦車1400台の導入を含む装備の近代化を提案するとともに、グルジア軍から接収した最新型戦車44台や防空システムなどの“戦果”を強調した。
ロシア政府は、国防力増強のため今年の軍事費を1兆2785億ルーブル(約3兆4900億円)と前年比で25%増額。10~11年にもさらに増やす方針だ。
グルジア侵攻でロシアと欧州が対立し、対話は最小限にとどまるため、ロシア首脳は欧州安保協力機構(OSCE)などを通じた新たな安全保障の枠組みを模索していると報告書は分析する。
さらに、親米軍事政権が倒れたパキスタンについては、アフガンと国境を接する辺境地域でタリバンの攻撃を押さえ込むことが課題と指摘した。パキスタン軍は11万2000人を展開するが、タリバンの越境攻撃は見逃されており、同国軍情報機関、三軍統合情報部(ISI)が米国の軍事作戦をタリバンに漏らしているとの憶測が流れている。
一方の米軍は、パキスタン政府の了承を得ずに辺境地域を攻撃し、市民の犠牲が増え、逆に反発を招いている。
アフガンでは、地方だけでなく首都カブールでも自爆テロや仕掛け爆弾の被害が拡大。タリバンの穏健派との秘密交渉も進められるが、今年予定される大統領選を成功させるのが最優先課題だとしている。
また、イランは03年に核兵器開発を停止したとされるが、同国はウラン濃縮活動とミサイル開発を継続していると指摘。元米国務次官補代理のマーク・フィッツパトリック上級研究員は「早ければ年内に核兵器製造に必要な濃縮ウランを手に入れる可能性がある」と警告した。(
産経より抜粋)