メインコンテンツにスキップ

クロアシイタチのクローンの母親が3匹の赤ちゃんを出産、絶滅危惧種保全に新たな一歩

記事の本文にスキップ

5件のコメントを見る

著者

公開:更新:

絶滅の危機に瀕しているクロアシイタチのクローンの母親が2匹の赤ちゃんを出産この画像を大きなサイズで見る
Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute, Public Domain

 北アメリカに生息するクロアシイタチは、最も絶滅の危機に瀕した哺乳動物の1種であり、徹底した保全活動が行われている。

 2021年2月には、クローンのクロアシイタチが誕生し、一般公開された。そしてこの度、クローンとして誕生したクロアシイタチのメスが、3匹の赤ちゃんを産んだそうだ。

広告の下に記事が続いています

 そのうち1匹は生後間もなく死亡したが、残りの2匹(オスとメス)は健康状態も良好で、すくすく育っているという。

 アメリカ国内では、絶滅危惧種のクローンが子供を産んだ初めての事例となり、その成功は、ほんの数百匹にまで数を減らしたクロアシイタチを回復させる大きなチャンスになると期待されている。

クロアシイタチのクローンの母親が3匹の赤ちゃんを出産

 今回出産した「アントニア」と呼ばれるクロアシイタチは、1988年に捕獲され冷凍保存されていた「ウィラ」というメスの遺伝子から作られたクローンだ。

 アメリカ魚類野生生物局のプレスリリースによると、アントニアは、オスのクロアシイタチ、アーチンとのペアリングにより、今回3匹の赤ちゃんを出産。

 残念ながら1匹は産まれて間もなく死んでしまったが、シバートとレッド・クラウドと名付けられた男の子と女の子の2匹は元気で、すくすくと成長しているという。

 お母さんになったアントニアと赤ちゃんは、バージニア州にあるスミソニアン国立動物園・保全生物学研究所(NZCBI)で飼育され、さらなる研究が行われることになる。

 この成功は絶滅の危機に瀕したクロアシイタチを救う大切なチャンスであると期待されている。

アントニアの出産は、絶滅危惧種の保全における重要な節目となるでしょう(スミソニアン国立動物園・保全生物学研究所 ポール・マリナリ氏)

この画像を大きなサイズで見る
生後6週間のシバートとレッドクラウドと名付けられたクロアシイタチの子たち  image credit:Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute

クローンの赤ちゃんは遺伝的多様性を回復する可能性

 世界自然保護基金(WWF)によると、クロアシイタチは、北アメリカでもっとも絶滅が危惧される哺乳類の仲間であり、野生のものは370匹程度しかいないという。

 じつのところ、この種は1979年に絶滅が宣言された。だが1981年にワイオミング州で残存するする野生のクロアシイタチが再発見され、これをきっかけに本格的な保全活動が始まることになった。

 クロシイタチが危機に瀕している主な原因は、野生環境の減少、病気、そして主要な餌であるプレーリードッグの個体数減少によるものだ。

この画像を大きなサイズで見る
今では希少な存在となってしまったクロアシイタチ Photo by:iStock

  だが今回のアントニアの出産は、それとはまた違う課題をクリアするという点で、大きな意味がある。

 その課題とは「遺伝的な多様性」だ。

 遺伝的多様性が乏しい種は、病気の流行や環境の変化といったものに上手に対応することができない。

 じつはアントニアの赤ちゃんたちは、今では乏しくなってしまったクロアシイタチの遺伝的多様性を回復させるきっかけになると期待されているのだ。

 アントニアの元となったウィラの遺伝子は、現在の野生の個体に比べて、遺伝的多様性が3倍も豊かなのだという。

 野生のクロアシイタチにも同様の遺伝子を持つものがいるが、今生きているのはたった7匹でしかない。

 だからアントニアの子供を野生に返すことができれば、野生のクロアシイタチの遺伝的多様性アップにつながると考えられる。

 それは長い目で見れば、個体数の回復にもつながる大切な一歩なのだそうだ。

References: A Cloned Ferret Has Given Birth for the First Time in History, Marking a Win for Her Endangered Species | Smithsonian / Advancements for Black-footed Ferret Conservation Continue with New Offspring from Cloned Ferret | U.S. Fish & Wildlife Service

広告の下にスタッフが選んだ「あわせて読みたい」が続きます

同じカテゴリーの記事一覧

この記事へのコメント、5件

コメントを書く

  1. 野生種を繁殖させてたけど遺伝的に近縁で危ういんで
    このクローンを冷凍保存されてたものから作ったんだよね
    強い種が戻るといいね

  2. 同じイタチの仲間ニホンカワウソさんも是非復活させてほしいなぁ

    1. ニホンオオカミもニホンカワウソも剥製は残っているから、遺伝子操作技術が更に発展してクローン作って野生に戻せたら最高。それが無理なら次善の策として最も近縁な種を持ち込んで生態系での同じ位置を占めさせるといいのだけど、カワウソはともかくオオカミは無理だろうなぁ。生態系にとっては捕食者であるオオカミが居る方がいいのだが絶対人間を襲わないとは言えないし。

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

絶滅・絶滅危惧種生物

絶滅・絶滅危惧種生物についての記事をすべて見る

最新記事

最新記事をすべて見る