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日本で発見され命名された最初の翼竜「ニッポノプテルス・ミフネンシス」

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Species New to Science: Art by Zhao Chuang

 日本の熊本県の地層から発見された翼竜の化石が、新種であることがわかり、初めて日本で命名されることになった。

 古生物学者らが2024年11月25日、後期白亜紀(約9000万年前)に生息していた新種の翼竜の名を「 ニッポノプテルス・ミフネンシス (Nipponopterus mifunensis) 」と発表した。

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 見つかった翼竜の化石は、御船層群(みふねそうぐん)の地層から見つかった頸椎の一部で、発見当初は、既知の翼竜のいずれかのものと考えられていた。

日本で初めて命名された翼竜の新種

 古生物学者らが11月25日、日本の後期白亜紀の地層から、アズダルコ科ケツァルコアトルス亜科に分類される新種の翼竜、「ニッポノプテルス・ミフネンシス (Nipponopterus mifunensis) 」の発見を発表した。

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ホロタイプ標本 (MDM 349) の既知の化石材料を示したNipponopterus mifunensis の骨格図。スケール バー = 20 cm。SlvrHwk, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

 新たな属名となった「ニッポノプテルス」は古代ギリシア語で「日本の翼」を意味し、種小名「ミフネンシス」は、発見地である熊本の御船層群に由来する。

新属新種のニッポノプテルス・ミフネンシス

 ニッポノプテルス・ミフネンシス発見のきっかけとなったのは、2000年に熊本県 上益城郡 御船町の天君ダム近くの御船層群から発見された頸椎の骨の一部だった。

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ニッポノプテルス・ミフネンシスの第 6 頸椎 image credit:Zhou et al., doi: 10.1016/j.cretres.2024.106046.

 その骨の化石は、当初はその特徴から、後期白亜紀において最も多様で広範な翼竜グループであるアズダルコ科のどれかに属すると考えられていたが、当時は翼竜の情報や標本の少なさなどから分類が進まなかった。

 だが近年、翼竜への理解が深まり、詳しい分析がなされたことで、それが第6頸椎であることが判明し、そこからケツァルコアトルス亜科に含まれる新属新種と結論づけられた。

この種に近い系統も

 一方で研究者らは、この新種の特徴が、モンゴルで見つかったアズダルコ科の未命名の翼竜の一種と非常に類似していると指摘する。

 この名もなき翼竜種は、チューロニアン-コニアシアン期(約9000万年前から8600万年前)の地層から発見されたが、標本が断片的なため、まだ学名が決まっていない。

 便宜的な仮称として、発見した地名とアズダルコ科を示す「Burkhant azhdarchid」と呼ばれているが、ニッポノプテルス・ミフネンシスの頸椎とよく似た点があることから、この二つの種は近縁な系統とみなされているとのことだ。

薄くてもろい翼竜の骨の化石

 この発見について、研究チームの一員である、御船恐竜博物館の主任学芸員、池上直樹 博士とサンパウロ大学のロドリゴ・ペガス博士らはこのように述べている。

動力飛行を実現した最古の脊椎動物群である翼竜は、三畳紀後期から白亜紀/古第三紀境界までの化石記録を残しており、その形態学的多様性は注目に値する

翼竜の骨格は空気を含む薄い壁の骨で構成されているため壊れやすく、化石の記録については特に偏っている

 薄くてもろい翼竜の骨の化石はそれだけでも貴重だが、それが日本のものとなるとさらに希少で重要なものになる。

 なお、日本で発見された初の翼竜標本は、北海道の蝦夷層群(えぞそうぐん)から出土したプテラノドン科の化石で、大腿骨、中足骨、足指骨、尾椎が含まれていた。

史上最大の飛行動物だったアズダルコ科の翼竜

 翼竜は、2億1千万年前から6500万年前まで生息していた空飛ぶ爬虫類であり、地球上で最初に飛行を達成した脊椎動物でもある。

 彼らは鳥やコウモリが登場するよりもはるかに早い時代から空を飛んでいたが、種によってはその大きさも目がみはるものがあった。

 中でも巨大なアズダルコ科の翼竜は、翼幅10m超、直立すると現代のキリンに匹敵するほど背が高い種もいたとされ、史上最大の飛行動物といわれている。

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白亜紀のシダの草原で餌を探す、巨大なアズダルコ科のケツァルコアトルス・ノルトロピの群れの復元図 image credit:Mark Witton / Darren Naish.

 なお注目のニッポノプテルス・ミフネンシスの大きさについては、標本が成体手前の若いものだったこともあり、まだよくわかっておらず、推定翼幅3~3.5mほどともいわれている。

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参考図。成体のニッポノプテルス・ミフネンシス(推定)と成人男性(約1.8m)のサイズ比較。SlvrHwk, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

 約9000万年前の日本で生息していたニッポノプテルス・ミフネンシス。この発見は、翼竜の進化や多様性を探る新たな一歩に貢献しそうだ。

 この研究論文は『sciencedirect』誌(2024年11月25日付)に公開された。

References: New Pterosaur Species Discovered in Japan / ニッポノプテルス / Reassessment of an azhdarchid pterosaur specimen from the Mifune Group, Upper Cretaceous of Japan

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この記事へのコメント、19件

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  1. 他にも日本に翼竜いないかとググったら推定5mの薩摩翼竜なんてのもいるんだ。
    長崎でも見つかってるから九州に多いのか?と思ったら北海道と石川も多い。

  2. 飛べる生き物だと行動範囲も広いから大陸で既に記載済みの種である可能性も高いけどどうなんだろう

    1. 可能性はあるが、そこは当然調べているから「新種」として扱われている…はず

    2. あのね「新種」とするのってすっっっっっごく大変で何年も何年もかけてたくさんの過去のデータと照らし合わせ、世界中の博物館に足を運び、そうしてとんでもない労力をかけたうえでやっと「新種」になるの

      思いつきで「よっしゃ新種にしよ!」って言ってるわけじゃないの。アンダスタン?

  3. 翼竜の中にはダチョウとかペンギンみたいな飛べない種類結構いたんじゃないかなぁ?
    鶏とか雉みたいに翼はあるけどほとんど飛行出来ないのとか?

    1. >>鶏とか雉みたいに翼はあるけどほとんど飛行出来ない
      この種やケツァルコアトルスが含まれる大型アズダルコ科がそのような長距離飛行にむかず短距離飛行だけをする動物だったとする説がある。
      アホウドリやコンドルのように長距離飛行に適応した鳥類は、上昇気流を利用するやり方か高度差による風速の違いを利用するやり方のどちらかで長時間滑空に適応している。こうした鳥類における体重・翼サイズ・翼形等から運動方程式を用いて計算されるそうした滑空に重要な能力が、ケツァルコアトルスに関して計算すると明確に低いとのことである(同じ研究の中で、プテラノドンはこの能力が高いとされている)。ただし、ケツァルコアトルス・ノストルピについては化石記録の完全性が低く、翼サイズ・翼形に不確定要素が大きい。

    2. また、鳥類や翼竜は骨内部が空洞でそこに支柱の様な骨組織が発達することで軽さと強度を両立させている。翼におけるこの骨の支柱の形状が、翼への力のかかり方の違いにより長時間滑空を行う鳥類とそうでない飛行する鳥類で異なる。具体的には長時間滑空を行う鳥類であるハゲタカではらせん状になっている。そして、大型アズダルコ科の翼竜2種についてこの骨の支柱の形状を調べた研究によると、一方はらせん状、つまり長時間滑空を行う鳥類のものに似た形状をしており、もう一方はそうでない飛行する鳥類のものに似た形状をしていたとのことである。大型アズダルコ科の中で飛行様式に違いがあったようだ。

  4. 鳥類は体重を軽くするために骨をスカスカにしてると聞いた事があるが、なるほど、化石としては残りにくい理由でもあるのか。ひとつ勉強になった

  5. あんな小さな骨のカケラからよくもまあ…
    データの積み重ねって凄い

  6. 近縁の亜種が発見されたらニッポノプテルス・シヨウグンミフネンシスとかになりそう

  7. いつの日かニッポノプテルス・サナダシスって新種が誕生して欲しい。

    ご本人はそんなこと1mmも望んでないのはわかってる。

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