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AIがアメリカ産ウイスキーとスコッチを正確に識別、人間の専門家を上回る精度

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 人工知能がまた1つ人類に勝利を収めたようだ。そのAIは、ウイスキーの香りでアメリカン産のウイスキーかスコットランド産のウイスキー(スコッチ)かをほぼ完璧に識別することができる。

 さらに、複雑に相互作用するウイスキーの分子構成から、それがどのような香りになるのかを専門家以上の正確さで予測することにも成功した。

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 ウイスキーの香りは複雑かつ繊細なものだ。このAIはその香りを安定して評価できるため、銘柄の香りを一定に保ち、品質を高めてくれると期待されている。

香りからウイスキーの銘柄を識別するAI

 ウイスキーの香りを正確に嗅ぎ分けるのは容易なことではない。

 その香りは「ウッディ、スモーキー、バター、キャラメルのような」と表現されるように、時に甘く、時に刺激的な香りで、いくつもの化学物質によって作られる。

 だが、それらは鼻の中で複雑に相互作用し、互いの香りを隠してしまうこともある。だから、たとえ琥珀色の液体にどのような成分が入っているのか知っていたとしても、そこから立ち上る香りが最終的にどのようなものになるのか、事前に予測することは難しい。

 だが、人間には難しくとも、AIならばできるかもしれない。

 そこで、ドイツ、フラウンホーファー・プロセス技術・パッケージング研究所のチームは、ウイスキーの化学構成データと、11人の専門家による香りの評価をもとに、ウイスキーの分子構成からその産地や主要な香りの成分を分析し、識別できるようAIを訓した。

 そして誕生したAIの名は「OWSum」(オーサム! 凄いという意味)だ。

 OWSumが挑んだのは、ジャックダニエル、メーカーズマーク、ラフロイグ、タリスカーなど、アメリカとスコットランドを代表する16種類の銘柄である。

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Photo by:iStock

専門家よりも高い確率でウイスキーの識別に成功

 実験では、OWSumはアメリカンウイスキーとスコッチウイスキーを94%の確率で区別することに成功した。

 また各銘柄の一番強い香り5つを、専門家よりも正確に言い当てることができたという。

 ちなみにキャラメルのような甘い香りを特徴とするアメリカンウイスキーだが、それを見分ける上で大きな手がかりになったのが、「メントール」や「シトロネロール」などの化合物だったそう。

 一方、スモーキーなスコッチを見分ける決め手は、「デカン酸メチル」や「ヘプタン酸」であるそうだ。

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Photo by:iStock

ウイスキーの品質管理や偽造品の識別に活用

 またもや人間に勝利したAIだが、研究チームはこのAIで人間の鼻を駆逐してしまおうとは考えていない。OWSumはあくまでウイスキーの作り手を助けるツールとして開発されたのだ。

 その大きな強みは人間よりも安定して香りの分析ができるところだ。この力を上手く利用すれば、ウイスキーの各種銘柄がウリとしている香りを、より一貫した品質で消費者に届けることができる。

 この研究の中心人物、フラウンホーファー・プロセス技術・パッケージング研究所のアンドレアス・グラスカンプ博士は、こう説明する。

AIの素晴らしい点は一貫性があることです。訓練を受けた専門家であっても、主観性は残ります。私たちは人間の鼻をAIで置き換えようとは思っておらず、その効率性と一貫性によって手助けしようとしています(グラスカンプ博士)

 なおOWSumの技術は、ウイスキーに限らず、ほかのお酒や分野にも応用できるという。

 たとえば、香りの違いを嗅ぎ分けて偽造品を見つけ出したり、悪臭を放つ古いプラスチックを再利用して新製品を作る際、臭いが一番目立たない混ぜ方を考案するなど、いろいろな用途が考えられる。

ウイスキーの識別の難しさ

 ただし今回の研究では、対象となったウイスキーの銘柄が限られているため、AIにもっと多くの銘柄を分析させたらどうなるのか定かではないとのこと。

 長い時間をかけて熟成されるウイスキーの香りの変化にAIが対応できるのかも未確認のままだ。

 またウイスキーに関してもう1つ難しいのは、その味わいが飲む場所などの外部要因によって大きく左右されるところだ。

 ウイスキーはいわば感情的な飲み物なのである。今後AIを開発するにあたっては、そうした味わいの認識に影響する要因も重要ポイントになるそうだ。

 この研究は『Communications Chemistry』(2024年12月19日付)に掲載された。

References: AI beats human experts at distinguishing American whiskey from Scotch | New Scientist / AI learns to distinguish between aromas of US and Scottish whiskies | Artificial intelligence (AI) | The Guardian

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この記事へのコメント、14件

コメントを書く

  1. 今年の出来はとてもよく好評で味もいいけど
    aiの判定によると基準に達してないので産地として認められないってありそうね

  2. 🤖「何も足さない・・何も引かない」

  3. 専門家でもアメリカンとスコッチ間違えたりするんだろうか
    麦焼酎と芋焼酎に近い差があるような

  4. できて当たり前でしょ

    ただの成分分析なんだから

    1. むしろそうよね???
      分析の結果の総合値の処理を、数字で表すのか、銘柄で表すのかグラ委の違いなのかしら????

  5. AIって、どうやってテイスティングするのか見てみたい

  6. 日本は無添加ワインを作りたがるけど
    本場では保存料を入れまくってきた
    歴史が長いので、保存料が入ってないと
    評価すらしてもらえない逆転現象。
    人間の独自ルールの評価って厄介よな。

  7. ウイスキー業界には、蒸留所から原酒を買って自前の樽と倉庫で寝かせてから売るボトラーズという商慣習がある。
    ボトラーズの十万円を超えるようなビンテージにはかなり偽物が混ざっているらしく、ずいぶん前から問題になっている。高額なボトルはそうそう開けないし、何かおかしいと思ってもボトラーズの樽の個性として目をつぶってしまうケースが多かったので、こうやって人間の主観を通さない分析手法が増えるのは良いこと。

  8. 従来にない新しい成分や成分比率の違う新製品が出たらどうなるんだろう

  9. AIとか言ってるけど要はただの分析機器だよな?
    その程度出来なかったら逆にびっくりなんだが。

  10. ラフロイグとタリスカーをアメリカンと誤認するのなんて重度の風邪引きかベロベロの酔っ払いくらいだ
    と言えるくらい特徴がはっきりしているよ

    1. たしかにその通り
      ジャックダニエルとメーカーズマークも明らかに違う
      慣れればすぐにわかる

      でも将来的にはAIがジャック・ガウディ並みに「嗅ぎ分ける」時代がくると思う

  11. トップバリュウのウィスキーを味あわせてやりたい

    1. トップバリューのやつ(SNAZZ)の9割は甲類焼酎みたいなものなので、明らかに味と匂いが異なる。薄めればチューハイみたいな風味になる。
      蒸留酒はアルコール味が強烈なので、例えばウイスキーとブランデーの違いぐらいなら明確に分かるが、混ぜ物でないウイスキーだと独特な木の風味とアルコール味で味覚が機能せず銘柄の判別は難しい。ハイボールブームでウイスキーの売り上げが回復したとのことだが、確かに薄めないと気軽に飲めたものではない。

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