現在のイラク北部、かつて古代アッシリアの首都だったドゥル・シャルキンで、地下深くに埋もれていた巨大な別荘、王家の庭園などの遺構が磁力計によって新たに発見された。
ドゥル・シャルキンは現在のイラク北部、ホルサバード村にあたる。そこで新たに、2700年前の都市の水門、宮殿の庭園らしきもの、127部屋もある広い別荘など5つの大きな建造物が見つかったのだ。
これまで未発見だったこれら建造物は、ドゥル・シャルキンが紀元前8世紀に宮殿以上のものに発展することはなかったという通説に疑問を投げかけるものだ。
失われた2700年前の古代アッシリアの首都
新アッシリア皇帝サルゴン2世は、紀元前713年に巨大な新首都を築き始めた。
この首都は「サルゴンの要塞」を意味する「ドゥル・シャルキン」と呼ばれていたが、サルゴン2世は首都完成前の紀元前705年に亡くなった。
その後、後継者となったサルゴン2世の息子センナケリブが首都をニネヴェに移したため、ドゥル・シャルキンは2700年以上も放置され忘れ去られてしまった。
その後、25世紀以上がたち、1800年代と1900年代にフランスとアメリカの考古学調査隊がそれぞれドゥル・シャルキンの宮殿を発掘した。
頭は人間、体は翼をもつ雄牛の像ラマスも見つかり、現在ルーブル美術館に所蔵されている。
宮殿と1.7km×1.7kmの市壁以外は、この古代首都のレイアウトは謎のままで、首都は未完成のまま埋もれたと推定されていた。
2015年、ドゥル・シャルキンはイスラム国によって略奪され、2017年にイスラム組織がこの地域から撤退した後、遺跡の調査作業をやっと再開することができた。
遺跡を傷つけない磁気調査の重要性
ドイツ、ミュンヘンのルードウィッヒ・マクシミリアン大学の地質物理学者イェルク・ファスビンダー氏らが行った磁気による遠隔調査は極めて重要だ。
磁力計は従来のトレンチ調査(遺跡の有無や遺構の分布状況を素早く把握して発掘調査や遺跡の性質を判断するために掘られる溝のこと)よりも包括的な復元図を作成することができ、遺跡にダメージを与えることもない。
この調査で使用された磁力計は、従来の試掘よりも広範囲かつ詳細な都市構造の復元を可能にした。ミュンヘン大学の地球物理学者ヨルグ・ファスビンダーは、「この調査は掘削を行わずに多くの情報を提供してくれる」と述べている。
さらに、研究チームはイスラム過激派組織の影響を避けるため、ドローンや車両ではなく手持ちで装置を運用した。これにより現地の安全性を確保しながらも、正確なデータ収集を実現した。
古代アッシリアの多様な都市機構
ファスビンンダー氏らは、2022年にリモートセンシング作業を行い、0.3平方kmを調査したが、これはまだ遺跡全体の10%にもならない。
アッシリアの首都に関する膨大なデータは、ほとんどが公式の記念碑建造物、つまり王に関連する空間や創造物の研究から得られたものだけなので、一般住民の生活についての知識を得ることは不可能に近い。
アッシリアの首都にさらに住民がいたことを確認するのさえ難しいという。
ファスビンダー氏らは、新たな研究で宮殿だけでなく都市構造を調査することで、我々の理解におけるこうしたギャップを埋めるようとしている。
新たな調査結果からは、ドゥル・シャルキンがこれまで考えられていたよりもはるかに発展、繁栄した首都で、宮殿だけでなく多様な都市機能を持っていた可能性を示している。
この研究は、2024年12月9日の『AGU2024年次総会』で発表された。
アッシリアには関わりのねぇこってござんす・・御免なすって
2700年埋もれていた首都が発見されたのではなく
発見されていた首都の発掘を行った話か
磁気やレーダーなどを利用した調査は無駄な労力を省く良い技術だね
首都だったのだからどこを掘っても何かしら出るだろうけど
宮殿跡のような大規模なものを狙うには事前調査は必須
荒らされる前に発見して発掘できるほうがいいよね