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ビーチサイドの人魚姫
俊樹

2019年9月Nikon D700で一眼レフデビュー。カメラは独学。2020年4月、Nikon D810へアップグレード。いつか写真展を開く為、日々精進。勿論、詩、小説、エッセイ、作詞は継続中。2021年夏、Nikon Z7Ⅱへと更にアップグレード。2022年10月、3回目の心臓手術に耐え抜き現在に至る。2023年8月ペースメーカー植え込み。

圭子の昼と夜の顔。

2013年08月24日
芸能 17
藤圭子

 22日正午、日米通算4,000本安打を達成した「イチロー」の偉業を伝えるニュースで沸き返っていたその矢先に飛び込んで来た一報は俄かに信じ難い内容のものだった。
 「今入って来たニュースです…歌手で宇多田ヒカルさんの母親の藤圭子さんが西新宿のマンション敷地内で倒れているのが見つかり、病院へ搬送されましたが、間もなく死亡しました。関係者によれば、飛び降り自殺を図ったものと思われます。」
 このニュースを聞いた時、わたしは8年前の記憶が生々しく蘇って来たのである。うつ病を克服し、社会復帰を果たしたばかりのわたしは西新宿にある某リース会社に勤めていた。
 昼食を摂る為に外に出てみると、青梅街道沿いにTBS、朝日、日テレ等の報道車が一直線に並んでいる光景が眼に飛び込んで来た。ただ事ではない騒然とした気配に、ビルの窓から身を乗り出して様子を伺っている人も多く見受けられた。
 会社に戻りヤフーで調べてみると「ポール牧自宅マンションから飛び降り自殺」の文字が踊っていた。当時のお笑い番組では高視聴率を維持していた「エンタの神様」にゲスト出演し、「指パッチン」を披露していたばかりだったが、仕事が減り始めた事で悩みうつ状態になりその果ての結果だった。
 人に笑いを提供し元気を与えてくれる「お笑い芸人」その本人が仕事で追い詰められ自ら命を絶つと言う何ともやりきれないニュースであった。
 そして奇しくも同じ場所、日時までもがポール牧さんの時と状況が酷似しており、偶然とは言え巷では同居していた30代男性との関係や他殺説まで飛び交い始めているようだ。
 1969年に「新宿の女」でデビューし、18歳とは思えぬ「大人の女」の魅力と心の底から振り絞るようなハスキーボイスが印象的で、まさに彼女の歌声は「怨歌」だと音楽関係者を言わしめた昭和を代表する歌手の一人であった。
 華やかな芸能界にあって、どこか影の部分も併せ持つ所なども彼女の人気を支えていた。70年に発表した「圭子の夢は夜ひらく」が空前の大ヒットとなり、一躍トップスターに踊り出る事となったが、それ以降も話題の絶えない歌手人生を送っていた。
 わたしは「自殺」と言う言葉に人一倍敏感であるが、それはわたしの母が福島の地で服毒自殺をしている影響が大きい。そしてわたし自身も過去に一度だけ自殺未遂を経験している。
 2003年の丁度今頃の季節だったと記憶している。うつ病になりかけていたわたしは、何日も眠れぬ夜の中でもがき苦しんでいた。睡眠障害はうつ病の最も典型的な症状であるが、当時のわたしはそれを病気と認めたくなかった。つまり自分は「うつ」ではないと決め込んでいたのである。
 それは病気の悪化を招くばかりで、己との葛藤の日々は家族や周囲の人たちも巻き込み、押し寄せるストレスの波に呑み込まれて行くばかりであった。
 家族全員が静かに寝込んだ深夜、処方されていた抗うつ剤と睡眠剤を水ではなくウイスキーで飲んでしまったのである。しかもストレートでコップ一杯分を一気飲みであった。
 アルコールと一緒に睡眠薬を飲む事は非常に危険を伴う事を承知していたが、眠れぬ辛さがそれを上回っており、耐え切れずにアルコールに手を掛けてしまったのである。
 芸能人仲間の間での藤圭子さんの評判は、「忍耐強い」と言う事であったが、それは日本人特有の性質で「美徳」とさえ捉えられている。然し、その裏を返せば「ストレスを内に秘める」体質と言うことになる。
 日本人の自殺者が年間3万人にも及ぶのは、この「内に溜め込むストレス」が要因の一つともなっているのではないだろうか。
 健康体であるならば、スポーツで汗をかいてみたり、好きな趣味に没頭する時間を持てればそれがストレスの捌け口となり、健康的な日常生活を送る事が出来るだろう。
 人は誰しも光と影の部分があり、普段は表向きの昼の顔、然しもう一つは人に知られたくない夜の顔。
芸能界と言う世間一般とはかけ離れた別世界では、その二つの顔が顕著に現れ、時には自分自身を破滅の道に追い込む危険性をも孕んでいるのかも知れない。
 謹んで藤圭子さんのご冥福をお祈り申し上げます(合掌)。

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俊樹
この記事を書いた人: 俊樹
本名/神戸俊樹
静岡県藤枝市出身。
19歳の時に受けた心臓手術を切っ掛けに20歳から詩を書き始める。
2005年3月詩集天国の地図を文芸社より出版、全国デビューを果たす。
うつ病回復をきっかけに詩の創作を再開。
長編小説「届かなかった僕の歌」三部作(幼少編・養護学校編・青春編)父を主人公にした(番外編)を現在執筆中。
詩、小説、エッセイ、作詞など幅広く創作。
2019年9月、一眼レフデビュー。Nikon D700を使用。
2020年4月、Nikon D810にアップグレード。
2021年夏、ミラーレス一眼 Z7Ⅱへと更にアップグレード。
2022年10月3度目となる心臓手術を受け、大成功を収める。
2023年8月徐脈性心房細動で心停止(失神)したため、ペースメーカーを植え込む。

コメント17件

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みゆきん

藤圭子さん
まだ若いのに
言葉が出ないです。
笑った顔を見たことある?私は無いです。

2013年08月24日 (土) 11:40

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2013年08月24日 (土) 13:13

ネリム

こんにちわ、ネリムです。
藤さんの自殺は驚きました。
ご冥福をお祈りします

2013年08月24日 (土) 13:21

ストロベリーアンドラズベリー

こんにちわ

宇多田ヒカルさんのお母様、藤圭子さん、いきなりでびっくりでした。

実は私も仲の良かった友達に裏切られて縁を切られたとき、つらくて死にたいと思ったことありました。

最近もいじめや失業での自殺が増えてますね。

藤圭子さんのご冥福をお祈り申し上げます。宇多田ヒカルさんもつらくて悲しくて寂しいですね。

2013年08月24日 (土) 18:32

くわぁ

藤圭子。

彼女は自分のドラマを想じながら歌ってたような気がします。
それだけに感性が豊かな人だったんでしょう。
能力のある歌手でした。

夢(望み)もいっぱいあったんでしょう。
藤圭子の一部である宇多田ヒカル。
幸せってなんでしょうね?
なぜか、ゴッホのことが思い浮かびました。

2013年08月24日 (土) 20:16

koyuri

桂枝雀さんの高座を

某医科大学の学園祭で見て、怪訝な感じを受けたコトがありました。

落語に入る前に、所作が気になって仕方ナイのか、とても神経質に思えたのです。

多分、その数年後に、「落語の天才」と呼ばれた師匠の自殺の報に接した時に、『あぁ、多分御病気だったのだ』と思ったコトがあります。

感性が豊か過ぎるというのも、世の中を上手く漂流するには難しい部分もありますからね。

若い頃と違って、無理にでも鈍感になろうとして来たから、今まで生きて来れた気がします。

2013年08月24日 (土) 22:57

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2013年08月25日 (日) 01:46

みゆきん

いろんな記事を読んだ
人生波乱だったのね
生きてたら、もっと良いこともあったのに・・・。

2013年08月25日 (日) 14:42

孝ちゃんのパパ

こんにちは。

確かに僕にも影の部分が出かかったときがありました。
その時、毎日彼女にメールを送ると約束したことを思い出し
今に至っています。

藤圭子さんはデビュー当時から見ていますが
いつかこの日が来るのではないかと思っていました。

やはり子供の頃の生い立ちが関係しているのでしょうね。
娘さんがこのことで再び心に闇を抱えないことを願っています。

2013年08月25日 (日) 17:08

荒野鷹虎

俊樹さんへ!!

流石は苦労された俊樹さんの内容と感動致しました。!
赤貧の生活の中から這え上がってきた圭子さんの陰影が滲み出た生活の歌だと思います。

親の為に、歌い続けた悲恋の歌手と思いますねー。涙)
子供が宝で黄泉の世界からはじめて笑えるのではと・・・泣き)

2013年08月25日 (日) 20:45

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2013年08月25日 (日) 22:50

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2013年08月26日 (月) 09:13

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2013年08月26日 (月) 13:11

マムチ

こんにちわ~

とても悲しいニュースですね。。
藤圭子さんのご冥福をお祈り申し上げます。

俊樹さんの詩が歌になるかもしれないのですか!?
それはとても嬉しい事ですね♪
出来上がったら、聴かせて下さいね^^

2013年08月26日 (月) 13:32

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2013年08月27日 (火) 14:44

荒野鷹虎

トラックバック有難うございました。☆!

2013年08月27日 (火) 21:09

荒野鷹虎

俊樹さんへ!!

暫く連絡が取れず心配していました。
お身体無理なさらず素晴らしい詩をお書きになられる事をお祈りいたします。!

2013年09月03日 (火) 11:43

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