六人の嘘つきな大学生(浅倉秋成)
東京六大学のホラ吹きサークルから選りすぐりの嘘つきが集まって、どれだけ面白いウソをつくか?
あるいは誰が騙されて、誰が騙されないかを競う奇想天外なバトルストーリー……ではありません。
超人気企業の採用試験で、最後まで残った6人がディスカッションを行い、内定にふさわしい一人を選ぶという嘘のような課題に取り組みます。
しかしそこで、6人ひとりひとりの過去の悪事を暴露する封筒が見つかったことで、互いの評価が二転三転します。
果たして犯人は誰なのか?
物語が進むにつれ、「こいつは犯人じゃない」「こいつが怪しい」などと人物像が移り変わり、まるで作中の人物に同化したような錯覚すら感じます。
前半の最後で、「このひとが犯人なの?」という意外性を抱えたまま後半に突入すると、それもまたひっくり返されます。まさに前編がどんでん返しともいうべき展開のミステリです。
ミステリとは言っても、殺人事件にまつわる無理やりな謎を追いかけたりしないのもヨイ。
大掛かりな仕掛けを使って、いったい犯人は何をしたかったのか、というのもひとつのテーマです。
その点についても、作中で大学生の就職活動の実態をつぶさに描くことで十分にあぶり出されています。
まあねえ、就職活動のときは、誰でも嘘つきなんですよ。
「御社を志望したのは、給料が高くて休みが多くて、オフィスはオシャレだし、友達に自慢できるから」
「御社を志望したのは、親に言われたから。世間体がいいんだってさ」
「御社を志望したのは、他の会社に落とされたから」
一度でいいから、こんなふうに面接で言ってみたいと思わなかった就活生はいないんじゃないか?
この記事へのコメント
海
この本、私も読んでみたいですね!
実は、最近何度か映画を見に行った時に
必ずこの、「六人の嘘つきな大学生」の予告編が
流れるから、気になってたんですよね(笑)
ちなみに、私は店舗の営業マネージャーを
していた時に、栃木県宇都宮市に新店がオープン
するにあたり、新規採用のスタッフを募集したので
面接官を、たくさんやりました。
その時に、25歳のシングルマザーが面接に来ました。
18歳で子供産んだので、一人息子は、その時小学2年生
とかです。普通、店舗スタッフの面接の時って、
みんな「いい事」を言うんですよね。
「土日フルで働けます!」とか、「遅番大好きです!」とか。
でも、いざ働き始めると、土日は休みたがるし、
遅番はみんなイヤがる(笑)
しかし、そのシングルマザーは、「息子のサッカースクールの
送り迎えの担当があるので、第2と第4の土曜日は
スイマセンが休ませてください、その他は大丈夫です」と
言ってきたのですよ。なんか、物凄く正直な子に見えたので
私は採用したのですが、結局それから20年近く
働いてくれて、今もその店で店長をやってくれてるので
嬉しいですね。当時、小学2年生だった息子さんは、
その後に、ちょうど私が臨店してる時に店に来てくれて
20歳超えて美容師さんになっており、立派な大人に
なってて驚きましたね(笑)
しろまめ
コメントありがとうございます。
いや~、良い方を採用できましたね。
優れた人材は会社にとってかけがえのない人財、なんて昭和の経営者めいたセリフが出そうなエピソードです。
まさに正直は最高の美徳であり最良の戦略ですな。
「海くん、実によい人を採用したね。君の人を見る目は確かだよ!」
と、コマの枠外から両肩に手を置く(笑)。