とあるRPGの主人公、名前をアリババとしてほしい。外資のインターンをしている28才の男。これまでコツコツまじめに人生を送ってきたんだが、このたび洞窟の中に大量の財宝を発見した。なぜかというと、村を襲った46人の盗賊(かりに、乃木坂46としよう)の跡をつけていくと、乃木坂の首領が「ひらけゴマ」と叫んで洞窟の入り口を開けたんだ。このご時世、ネットリテラシーに欠けるにも程がある。
それで46人の乃木坂どもが留守の隙にこっそり入ると、中には山のような金銀財宝と略奪した村の女たち。
なにを隠そう、実はインターン先が外資系生命保険会社なんで、村でばったり会った、善人に偽装した乃木坂の首領に早速営業をかけた。奴が言うには、パッケージには大変興味がある、しかし支払いは後にしてほしい、そのかわり俺の女を分けてやる。で、俺は思った、「ははーん、こうやって取り引きで釣った上で俺を一味に仕立て上げるつもりだな」。ところがだ、どうも首領の女とは言うが、他の盗賊にもあてがった形跡があるらしい。こうなると、お縄になれば一大事だ。
そこで俺はこう言った。「安くしてやるから、俺の退職代行やってくれないかな」もちろん俺は正式な社員ではないし、お駄賃は一度たりとももらっていないが、ウチの会社は行動監視が厳しくて、インターンを友好的に辞めていずれは自由になりたい。
ところがどっこい、乃木坂の首領はやるやる詐欺で、ちっとも俺のために汗を流さない。察するに、奴は色々な病気持ちで、会社の損になることをすれば、それを理由に会社に生命保険加入を断られるのではないかと心配しているらしい。小心な奴だ。なんでも、前立腺がんと疑われる症状があり、さっさと「プローブ」を突っ込み白黒つけて、楽になればいいものを、いつまでも理由をつけては愚図愚図しているようなのだ。
で、ここはRPGの村だから、俺に悪意を持つ奴もいれば比較的好意的な御仁もいる。狸オヤジの返事をいつまでも待ってるわけにもいかないので、ここらで村人に財宝の山分けを提案したいのだが、どうだろう?
乃木坂の首領は遅かれ早かれ病状が悪化する。最近も局部の「疼痛」に襲われたと聞いた。いざ尻に火がついたら救急車で病院に運ばれ、そこでお縄だ。もちろん、奴の部下も対岸の火事ではいられないだろう。
村のコミュニティは相互監視の嗜好があって、足を引っ張り合っては断固たる合意の機会を逃し、乃木坂46には宥和的な態度を取ってきた。お縄になった暁には、首領を訴訟の嵐が待っている。村人は、基本的には勝訴の受益者だ。慰謝料は隠した財宝から充てられる。大事なことだが、お白州での調べにおいて、不都合なパブリックアクティビティの「履歴」が見つからないことは、もちろんそれに必須だ。
乃木坂46が危うくなれば、首領は必ず村人に泣きついてくる。ここで大切なのが、デタッチメントだ。親の過保護や過剰な愛情からの自分の切断が成長への第一歩であることは、心理学でも示されている。「ごめんなさいねぇ、うちにはお金がありませんので脱獄支援できません」と言って断ればいい。