象徴
「象徴」とは、概念や感情のような抽象的な物事を、より具体的なものに置き換えて端的に示すこと、または、そのような役割をもつもののことである。シンボル(symbol)ともいう。
「象徴」は、とうてい言い尽くすことのできないような奥深さのあるものごとを、(あえて言い尽そうとはせず、むしろ奥深さを損なわない表現手段として)よりシンプルな形で代替する、記号あるいは比喩(寓意)である。
「象徴」の例
- 古代エジプト文明においてスカラベは再生と復活の象徴であった。
- 西欧キリスト教絵画に描かれる頭蓋骨は「死」の象徴である。
- ハーケンクロイツ(鉤十字)はナチス・ドイツの象徴であり、ひいては独裁、迫害、戦争犯罪の象徴にもなっている。
- 麦わら帽子は海賊王を目指す主人公とその海賊団の象徴である。
- アキバ(秋葉原)は2000年代を通じてオタク文化の象徴だった。
- 枯山水は自然界の山や川を象徴的に模した庭園様式である。
- 能楽はあらゆる表現が象徴的であり、そのため難解とされやすい。
国旗や国歌などは、それぞれ国家の象徴としても位置づけられる。
「象徴天皇」は、天皇を主権者・為政者ではなく「日本国の象徴」であり「日本国民統合の象徴」と位置づける旨の言葉である。戦後に成立した「日本国憲法」の第1条に由来する。
「象徴」の語源・由来
日本語の「象徴」という言葉は、明治時代に中江兆民がフランス語の「symbole(サンボル)」の訳語として考案した、いわゆる漢訳語(和製漢語)であるとされる。現代中国語でも「象徴」(簡体字では「象征」)は symbole(英語の symbol)の訳語として用いられている。
そもそもフランス語の symbole や英語の symbol は、古代ギリシャ語の sumbolon(シュンボロン)を語源とする。sumbolon は「合わせる・一緒にする」という意味の動詞「symballein(旬バレイン)」から派生した言葉とされる。もともとは契約や取引の際に使われる印鑑や証拠品を指すような言葉だったらしい。
「象徴」の類語
「象徴」の主な類語には、「シンボル」「表象」「代表」「典型」「比喩」などが挙げられる。いずれも「ある物事が他の物事を表す」ことを意味する表現である。「シンボル」は「象徴」の語源(の英語名)を和訳せずカタカナ表記した言葉であり、その意味で象徴の同義語といえる。
「表徴」も「象徴」の同義語として扱える。とりわけ「内在している要素が外面に顕著に現れた徴(しるし)」という意味で用いられることもある。
「表象」にも「象徴」と同じ意味があるが、どちらかといえば「表象」は哲学用語として、 symbol の訳語としてよりも representation(Vorstellung)の訳語として用いられることが多い。哲学における「表象」は、外的事象が知覚されて意識の中に現れたもののことである。
「比喩」は、ある物事を直接的に示すのではなく、他の類似した物事によって(婉曲的に)表現する、という修辞技法のことである。「比喩」は表現方法を指す言葉であり「象徴」とは使い所が異なる(相互に言い換えることは難しい)。
「象徴」を含む熟語・言い回し
「象徴的」とは
「象徴的」の読み方は、「(それが)(何かを)象徴している」または「まるで象徴しているかのようである」という意味の形容動詞として用いられる表現である。たとえば、ある事柄を端的に体現しているかのような具体例を「象徴的な出来事」という。
概念や感情などの抽象的な事柄を、直接的に説明しようとせず、それを彷彿とさせるような代替表現によって描写する立場や手法を「象徴的な表現」という。象徴的な表現を積極的に芸術に取り入れようとした立場を「象徴主義」という。
「象徴天皇」とは
「象徴天皇」とは、日本国憲法において規定された天皇の地位を指す言葉である。日本国憲法第1条によれば、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」。戦前の「大日本帝国憲法」下では、天皇が国家の主権者と位置づけられていた。戦後の「日本国憲法」(現行憲法)においては、主権者は国民であり、天皇は政治的権力を持たない。天皇は国家の象徴と位置づけられている。
天皇は政治的権力を持たず、国政に直接関与することもないが、内閣の助言と承認のもとに国家の象徴として国事に携わっている。
「象徴動物」とは
「象徴動物」とは、特定の概念や性質を象徴する存在として一般に認知されている動物の総称である。たとえばフクロウ(梟)は知恵の象徴、キツネ(狐)は狡猾さの象徴、ハト(鳩)は平和の象徴、ライオンは勇敢さの象徴とされる。日本では鶴と亀は長寿の象徴であり、トンボは武勇の象徴とされる。象徴動物のイメージの結びつきは、その動物の姿や習性に由来している場合もあれば、神話や伝承に基づいている場合もある。
国鳥や国獣といった「国家を象徴する動物」も、象徴動物と呼ばれることがある。「象徴動物」という表現が用いられることはそう多くないが「ハクトウワシはアメリカを象徴する鳥である」といった言い方は多く用いられる。
「平和の象徴」とは
「平和の象徴」とは、「平和が実現された世界」または「平和な世界が実現することを祈念する思い」を象徴する存在のことであり、典型的には鳩(がオリーブをくわえている図像)のことである。鳩がオリーブの葉を加えている図像は、「旧約聖書(創世記)」における「ノアの方舟」の物語に由来する。20世紀半ばにパブロ・ピカソが、平和を祈るイベントのポスターに鳩の意匠を起用したことがきっかけで、「鳩=平和の象徴」という認識が広く世間一般に広がったとされる。
「象徴主義」とは
「象徴主義」とは、「直接的な表現ではなく、象徴を用いて作品の主題や意味を伝える」ことを特徴とする芸術運動の呼び名である。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、文学および絵画の世界でムーブメントが起こった。それまで流行していた自然主義やリアリズム運動の反動として盛り上がった潮流とされる。象徴主義文学を代表する作家としては、ボードレール、マラルメ、ヴェルレーヌ、メーテルリンク、アルチュール・ランボーなどが挙げられる。象徴主義絵画を代表する画家としては、モロー、ルドン、ムンク、クリムト、シンベリ、ヴルーベリらの名が挙げられる。
しょう‐ちょう〔シヤウ‐〕【象徴】
象徴
象徴(シンボル)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 14:34 UTC 版)
歓喜天を祀る寺院には、巾着袋(砂金袋)と大根を図案化したものを多く見ることが出来る。また、三叉戟で象徴される場合もある。
※この「象徴(シンボル)」の解説は、「歓喜天」の解説の一部です。
「象徴(シンボル)」を含む「歓喜天」の記事については、「歓喜天」の概要を参照ください。
象徴
「象徴」の例文・使い方・用例・文例
- 平和の象徴
- 白ユリは純潔の象徴である
- ハトは平和を象徴している
- かまを持った骸骨は死神の象徴である
- 象徴的な事件
- 赤は情熱を象徴している
- 黄色は愛,平和,知性を象徴している
- あれはこいのぼりで、5月5日の子どもの日に掲げます。鯉は人生における出世と強さの象徴なんです。
- その俳優はハリウッドの黄金時代を象徴していた。
- 死の象徴化
- 私は数霊術の象徴的意味に関心がある。
- この絵は象徴派の作品からインスピレーションを得たものです。
- それらは偉大さの象徴である。
- あなたの仕事は私にとってとても象徴的である。
- これはそれを象徴する良い例である。
- この技は平和の象徴とされます。
- それは富の象徴でした。
- トランペットは祝典などでファンファーレを奏でるから栄光や名声を象徴することもあるそうだ。
- 田中前外相の更迭に続く政治混乱がその象徴である。
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