尺骨
尺骨
【英】:Ulna
橈骨と並んで前腕内側(小指側)にある長管状骨(男約24cm、女21~22cm)で、上下の両端と体が区分される。この骨は橈骨とは逆に上端部が大きく下端部が細い。上端には前上方から深く切れ込んだ滑車切痕があって上腕骨滑車と関節する。滑車切痕の中央には上腕骨の滑車のくぼみに対応する弱い高まりが縦に走っている。滑車切痕の下端は前方に付きだして鈎状突起となり、切痕の後面は著しく肥厚して肘頭を形づくっている。また、滑車切痕の下外側には橈骨切痕があり、橈骨の関節輪状面に接する。橈骨体は橈骨の骨間部でゆるくS状に弯曲しており、前面には、滑車切痕のすぐ下に尺骨粗面がある。橈骨切痕の下縁から下方に向かう高まりは回外筋の起始するところである(回外筋稜)。橈骨体には前後および外側の3縁と前後内側の3面が区別出来るが、外側縁は鋭く外側へ張り出し、骨間縁とよばれる。尺骨の下端は小さな鈍円状のふくらみになっていていて尺骨頭の外周には橈骨の尺骨粗面と関節をつくる関節環状面がある。また、尺骨下端の内側面には茎状突起という細くて小さな突起がみられる。語源はギリシャ語のOlein(ヒジ)に由来する。また、Olecranon(肘頭)はOleinのcranon(頭)という意味である。
尺骨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/24 13:18 UTC 版)
骨: 尺骨 | |
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尺骨の位置。"Ulna" と書かれているのが尺骨。 番号2が尺骨 | |
名称 | |
日本語 | 尺骨 |
英語 | Ulna |
ラテン語 | Ulna |
画像 | |
アナトモグラフィー | 三次元CG |
関連情報 | |
MeSH | Ulna |
グレイ解剖学 | 書籍中の説明(英語) |
尺骨(しゃっこつ、英語: elbow bone、ラテン語: ulna,〈複数形〉ulnae)は、四肢動物の前肢を構成する骨であり、前腕の二本の長い骨のうちの一つである。
断面は角柱状の形状を取り、橈骨と平行に並んで存在している。尺骨と橈骨の大きさや長さを比較すると、尺骨の方がやや大きく長い。解剖学的正位(腕を体の脇に下げ、掌の表側を前に向けた位置)において、体に近い
前腕および手の尺骨側を
構造
ヒトの尺骨は左右の前腕に1つずつ存在しており、橈骨とともに前腕構造を支持し、髄腔の存在する管状骨、すなわち長骨[1]に分類される。
近位端に滑車切痕 (Trochlear notch) と言う特徴ある構造をもち[2]、上腕骨滑車を包むように上腕骨と関節する。橈骨とは反対に近位端の方が太く遠位方向に移行するに従って細くなり[1]、遠位端には尺骨茎状突起 (Ulnar styloid process) と言う突起構造をもつ[3]。
尺骨と関節する骨
近位端では尺骨滑車切痕が上腕骨滑車と関節し腕尺関節(肘関節の一部)を形成し、橈骨と上撓尺関節(肘関節の一部)を形成する[4]。遠位端では橈骨と下橈尺関節を形成する[5]。
尺骨から起始する筋肉
- 円回内筋(尺骨頭)[6]
- 回外筋[7]
- 示指伸筋[7]
- 尺側手根屈筋(尺骨頭)[8]
- 尺側手根伸筋(尺骨頭)[9]
- 深指屈筋[10]
- 浅指屈筋(上腕尺骨頭)[8]
- 長母指屈筋
- 長母指伸筋[7]
- 方形回内筋[11]
尺骨に停止する筋肉
語源
英語など欧州諸語で使用されている ulna は、もともとラテン語で「下腕」という意味である。
古い中国医学では、清代の『医宗金鑑』に(現在で言う)橈骨とまとめて「臂骨」と言われ、狭義では尺骨を「臂骨」(つまり総称と区別しない)と、橈骨を「輔骨」(俗に纏骨)と呼んだ[14]。
杉田玄白もこれを踏襲し、『解体新書』では尺骨を「橈臂骨」と、橈骨を「直臂骨」と訳している[14]。
現在の「尺骨」という訳語は、『重訂解体新書』で大槻玄沢が義訳(意訳のこと)として初めて用いた用語で、古代ローマで肘(から中指にかけて)が長さの単位(キュービット)として用いられたことから、古代中国周制における身体尺の一つである「尺」を当てはめたものである[14]。
脚注
- ^ a b 森ら, pp.133-134
- ^ 森ら, p.134
- ^ 森ら, p.135
- ^ 森ら, pp.206-207
- ^ 森ら, pp.213-214
- ^ 森ら, p.347
- ^ a b c 森ら, p.359
- ^ a b 森ら, p.348
- ^ 森ら, p.357
- ^ 森ら, p.350
- ^ 森ら, p.351
- ^ 森ら, p.343
- ^ a b 森ら, p.345
- ^ a b c 李強「解剖学骨名「尺骨」の由来を巡って医学文化史の世界を瞥見する」『大阪物療大学紀要』第2巻、学校法人物療学園 大阪物療大学、2014年、53-61頁、doi:10.24588/bcokiyo.2.0_53、ISSN 2187-6517、NAID 110009771617。
参考文献
- 原著 森於菟 改訂 森富「骨学」『分担 解剖学1』(第11版第20刷)金原出版、東京都文京区、2000年11月20日、19-172頁。ISBN 978-4-307-00341-4。
- 原著 森於菟 改訂 森富「骨学」『分担解剖学1』、19-172頁。
- 原著 森於菟 改訂 森富「靭帯学」『分担解剖学1』、173-248頁。
- 原著 森於菟 改訂 大内弘「筋学」『分担解剖学1』、249-437頁。
関連項目
外部リンク
- 尺骨 - 慶應医学部解剖学教室 船戸和弥
尺骨
出典:『Wiktionary』 (2021/08/07 00:32 UTC 版)
名詞
翻訳
- アラビア語: زِنْد (ar) 男性
- アラビア語エジプト方言: زند (arz) (zend) 男性
- アルメニア語: արմունկոսկր (hy)
- イタリア語: ulna (it) 女性
- 英語: elbow bone (en), ulna (en)
- オランダ語: ellepijp (nl) 女性
- カタルーニャ語: cúbit (ca) 男性, ulna (ca) 女性
- ガリシア語: ulna (gl) 女性
- ギリシア語: ωλένη (el) 女性
- スペイン語: cúbito (es) 男性
- セルビア・クロアチア語: lakatna kost (sh) 女性
- 中国語: 尺骨 (cmn) (chǐgǔ)
- 朝鮮語: 척골 (ko), 자뼈 (ko)
- テルグ語: అరత్ని (te)
- ドイツ語: Elle (de) 女性
- フィンランド語: kyynärluu (fi)
- ブルガリア語: лакътна кост
- ポルトガル語: cúbito (pt) 男性 (Portugal), ulna (pt) 女性 (Brazil)
- マレー語: tulang hasta (ms), ulna (ms)
- ロシア語: локтева́я кость (ru) 女性
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