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Kuroshio 187

日本郵政民営化の闇を暴く  下

●ブログ「岩崎芳太郎の『反・中央 集権』思想」の一部に「JAL再建 策にモノ申す」 、副題を「日本航空債 権問題は小泉竹中改革の延長戦」と する論説記事が載っている。岩崎芳 太郎氏は鹿児島市に本社を置く岩崎 産業の社長で、二○一三年一一月八 日から鹿児島商工会議所の会頭を務 めている。二○○九年には『 「 地方を 殺すのは誰か』と題する単行本をP HP研究所から出版して「事業と社 会正義を守るため、次々と降りかか ってくる火の粉を払い、中央集権思 想と新自由主義に敢然と立ち向か う」ことであると主張する地方経営 者の論客である。そのブログの中の 「 郵政民営化の欺瞞」と題する論説に は、 「国全体を対象としたネットワー ク事業は民営化にそぐわない。民営 化政策の絶対的矛盾を明らかにす る」との副題を付け、 「郵政不動産払 い下げ問題」という論説には 「 それは 明治政府の『官有物払い下げ事件』 を上回る大疑獄事件だ」との副題を 付す。筆者は、黒潮文明論の紙面を 拝借して、郵政民営化の闇の部分を 暴くべく三頁に拡大して拙論を提示 しているが、今回は、七月二二日の 早朝に岩崎社長に直接電話して前掲
ブログの郵政民営化部分からの引用 と転載を申し出て、快諾を得た。ち なみに、平成元年の七月二二日は、 長男の稲村周祐が薬効甲斐無く新宿 の榊原病院で息を引き取った命日だ から、筆者は遠慮することもなく、 優れた論説を今もブログに残してい る岩崎社長に敬意を表わしながら、 気後れ無く電話をしてお願いするこ とができたように思う。 郵政不動産払い下げ問題の論説は 「かんぽの宿払い下げ──不正の構 図を暴く」との見出しが付いている が、まずその核心部分を引用しよう。 ●「なぜふつうに営業可能なかんぽ の宿がたった一万円で売り飛ばされ そうになったのでしょうか? 一定 の価値のある国民の財産でも、不良 債権の評価は低い」 、このロジックで 国民の財産は収奪されてきたのです。 ◎竹中氏が郵政事業を「不良債権」 と呼びたがる理由 二○○九年初めのかんぽの宿の払 い下げ問題のおかしさは、だれが見 てもわかることですが、鳩山総務大 臣にストップをかけられなければも う少しで国民の大切な財産は、格安 でオリックスに下げ渡されてしまう ところでした。なぜこんなバカなこ
とが起こってしまうのか? それを 理解するためには、ユダヤやアング ロサクソンの金融資本が日本に持ち 込んだ弱者からの収奪を正当化する ためのロジックである「減損会計」 や「収益還元法」を用いたデューデ ィリジェンス ( 資産評価 ) の手法をか んぽの宿に適用された背景を理解す る必要があります。今回は、とても 簡単な説明を試みてみましょう。 (中略)竹中氏は郵政民営化につい て、産経新聞紙上で「不良債権処理 はやってよかった。やらなければ大 変だった。郵政民営化では二一九の 隠された子会社を洗い出し、利権を むさぼっている人の既得権益がなく なり、納税も増えた。時間はかけな ければならないが成果は表れてい る」と語っています。さらに、赤字 の出ているかんぽの宿を早期に売却 したのはよいことだと述べているの ですが、私には全く彼の言っている ことの意味はわかりません。そもそ も、郵政事業というのは、不良債権 なのでしょうか? そうではないは ずです。しかしそれをあえて「不良 債権だ」と強弁しているのは、 「一定 の価値のある国民の財産であっても、 不良債権であるから、減損会計とか 収益還元法といった不良債権処理の 時に使われた評価方法を使って、安 く売却してもよいのだ」という収奪
のロジックを働かせるために敢えて に言っているだけだとしか思えませ ん。それはモノの評価の中で、特殊 な状況のときにだけ使われる「安く 買いたたくための特殊な方法」であ って、一般的な評価方法とはいえな いはずです。郵政事業に不良債権の レッテルを貼ることによって、一億 二〇〇〇万人の国民の目から見て信 じられない安値でかんぽの宿を売却 しようとしたことを、竹中氏は本当 に正当なことだと自信を持って言え るのでしょうか。もっと不思議なこ とは、二一九社の郵政ファミリー企 業が不良債権なのであれば、どうし てその中の中核会社である日本郵便 逓送の株の公開買付に二四〇億円も の巨費が必要だったのでしょうか? ぜんぜん話に筋が通っていませんね。 ◎リンゴ畑をむりやりたたき売りさ せられたようなもの 簡単なたとえ話をすると、こうい うことだと思います。リンゴ畑にリ ンゴがなっているのですが、ちょっ と作柄が悪くて傷んでしまっていま した。 「このリンゴは、そのままにし ておくと一〇日くらい後には腐って しまうので、一刻も早く売りましょ う。それも安く売らないと買い手が つきませんよ」と他人から言われて 無理矢理に畑ごと売却されてしまっ たような無茶な話です。リンゴが痛
んでいたからといって、それはたま たまその農家が下手だっただけで、 他の人が同じ木でリンゴを作ればま ったく立派なリンゴがとれるのに、 売らなくてよい畑まで含めて売らせ てしまったわけです。リンゴ畑をむ りやりたたき売りさせられたような もの。こんなことを、関係者全員 ( 郵 政会社経営者、第三者委員会、天上 がりした民間人 ) が正当化しようとし ているというのは、私には全く理解 できないことです。このケースが正 当化されるのは、畑の持ち主がどう しても明日にでもキャッシュが必要 だとか、すぐにでも売却しなければ 銀行債務の個人保証を待ってくれな い切羽詰まった状況である場合だけ です。 しかし日本国が、郵政の財産を明 日にでも売らなければならない状況 に追い詰められることなどありえな いことです。しかもリンゴ畑の「土 地」を売ったことになっているので すが、買った人はそのままリンゴ農 家を続けていて、翌年には立派なリ ンゴを収穫しているのです。つまり 「かんぽの宿は郵政事業の本業では ないからやめなさい」と言われて売 却したのですが、買った人はそのま まホテルを続けて収益を上げている というのが現状です。ということは、 かんぽの宿は竹中氏の言うような
「不良債権」では全然なかったわけ です。それなのに、不良債権として 減損会計や収益還元法をといったテ クニックを駆使して安い価格で売る のはまったく筋の通らない話でしょ う。そうした評価方法は収奪を正当 化するためのロジックでしかありま せん。しかも、オリックスに売られ るはずだった〇九年初めのかんぽの 宿七九件一括売却のケースでは、 「リ ンゴ農家を続ける人は他にないので オリックスに買ってもらう」 、つまり オリックスがかんぽの宿を存続させ ることを前提にして従業員も引き取 ることになっていたわけですが、契 約書の上では雇用契約は一年しか保 証されておらず、 「オリックスは従業 員を一年後に解雇してもよい」とい う契約になっていたようです。まっ たくもってひどい話です。 ◎当事者しかいない第三者委員会に よる「問題なし」報告 これついては日本郵政から依頼さ れた第三者検討委員会が「売却は不 適切なものとは考えない。違法性は ない。 」とした最終報告を出していま す。しかしこの「第三者委員会」メ ンバーは、元日弁連副会長、日本公 認会計士協会副会長、日本不動産鑑 定士協会常務理事の三人のメンバー からなる委員会だったのです。八回 の会議はすべて日本郵政の社内で開
かれ、毎回日本郵政の関係者も出席 していたそうです。何のことはない、 日弁連や会計士協会、不動産鑑定士 協会は、今回かんぽの宿を不当に安 く評価したような収益還元法や減損 会計といったテクニックを駆使して 不良債権処理を外資にたたき売って きた専門職の総本家ですし、ここに 並んだ人たちは彼らの親玉ではない ですか。そんな人が「第三者」とは 片腹痛い。彼らは第三者ではなくて 当事者そのものです。そんな人が、 まともな判断ができると考える方が おかしいでしょう。なぜこのような 形で国家や国民が一部の民間企業に 資産を収奪されなければならないの でしょうか? この一〇年間、地方 の人々や、東京でも役所や大企業、 金融機関に関係のない市井の人たち は、そのようにしてずっと自分たち の財産、すなわち国民の富を収奪を されつづけてきたのです。 (中略)自分がストレートに現ナマ をもらうよりは、自分の組織がなる たけ肥大化し、役所に富を集中させ るように貢献すれば、官僚組織には しっかりした分配の論理が組み込ま れていますから、自分がしかるべき 出世の序列から外れさえしなければ、 最終的には大きな得をすることにな っています。つまるところ官僚が振 りかざす「公」というのは、たいて
い私利につながっていると考えたほ うがよいのです。 日本人がすごく勘違いしている点 だと思うのですが、 「私利」というの は、個人の利得には限りません。役 所は省益を追求して動く組織なので すから。その組織にとっては、「私 利」なのです。福沢諭吉は「私益は いづれ公益となる」という言葉を残 したそうです。最近、公益法人法が 改正されましたが、役所が考えてい る公益というのは、限定的な人たち の利益を守るためのものです。決し てパブリックの利益を考えたもので はありません。 (中略)例えば、問題になった簡保 関連資産のオリックスへの払下げ事 件。これは未遂だったものですが、 固定資産税評価額が八五六億円の土 地・建物等を一〇九億円で売却しよ うとしたものです。ここにはいつも なぜか公認会計士と弁護士と不動産 鑑定士の姿がちらついています。
」 ●岩崎芳太郎氏が経営する岩崎産業 は、傘下の子会社で、郵便物を輸送 する会社を経営していたので、郵便 事業のユニバーサルサービスについ ての見識があり、郵政民営化にとも なって、郵便輸送部門の直営化にと もなう疑惑についても分析と見識を 吐露している。先の「日本航空債権 問題は小泉竹中改革の延長戦」と副題を付けた論説の中に、郵政民営化 の郵便事業の子会社作りの不正につ いて言及している。該当部分を引用 して、マスコミ報道の対象にもされ なかった郵政民営化の闇の一端を江 湖に開示する。 「民営化関連の法律でできた郵便事 業 ( 株 ) という一〇〇%の資本を国が 持つ会社は三六〇億円の資金(当然、 これは国のお金といっていいです が)を使って、郵政官僚の天下り先 であった日本郵便逓送 ( 株 ) 他ファミ リー企業一三社をTOBや、キャッ シュアウトマージャーという手法を 使って、いわゆるM&Aをして、資 本金一八二億五〇〇〇万円の日本郵 便輸送という一〇〇%の子会社を作 りだしました。本来、民営化で非効 率は親方日の丸体質組織を効率的な 事業体にしようとしたにもかかわら ず、実際は逆に親方日の丸体質をそ のまま郵便事業の本体に取り込んで しまったのです。それだけではなく、 実はこの時、このファミリー企業の 株の買収価格の決定について、大き な疑惑があります。例えば、二四〇 億円以上の巨額な資金を使った日本 郵便逓送のTOBについて、一株の TOB価格一九四〇円を決定するに あたって、中立的な第三者機関で売 買価格決定の為のデューデリジェン スさえしていないのです。長銀破綻
処理と相似形のJAL破綻処理策に 問題はないのか自社で「修正純資産 価格法」という手法を使って、一株 二八一八円と評価して、それから八 七八円減額した一九四〇円を自分達 だけで決めてしまっているのです。 当然、八七八円の減額には、何の根 拠もありません。つまり、このパタ ーンは、買手側にいる首謀者が、三 六〇億円という国のお金で買い物を しようとする時、買う物の値踏みを 不正に行ない、売り手側にいる共謀 者が正しい価値評価と異なる恣意的 な価格で即ち不当な値段で、国へ売 り付けることを可能にしたというス キームです。それが、高かったのか 安かったのかは正しいデューデリジ ェンスが行なわれていないのですか ら、わかりませんが……余談ですが、 この日本郵便逓送のTOBでは、悪 事は意外に露呈してしまうものでお もしろい現象が起きてしまいました。 恣意的な値付けが、売り手側の共謀 者の彼らさえ予期せぬ違法行為を作 りだしてしまったのです。どういう ことかというと、三八%を所有する 最大の株主が元々は国家公務員の共 済組合だった郵政共済組合だったの です。そして、この共済組合代表者 は日本郵政のトップだったN氏です。 共済組合代表者は、自分がトップを 務める郵政グループ五社の一社であ
る郵便事業(N氏は同社の取締役で もある)が、正当な方法で資産査定 して一株二八一八円の価値があると 認めている日本郵便逓送の株を八七 八円も安く、郵便事業に売り渡して しまったのです。この代表者は、一 株八七八円の損害を共済組合に被ら せており、これは立派な特別背任と いう犯罪なのです。ちなみに、共済 組合の所有株式数は五二二万株です から、共済組合が被った損害は約四 六億円となります。郵政の関係者だ ったら、東京地検に告訴できますし、 第三者だったら同じく東京地検告発 の対象となります。共済組合の資金 を任されていた某金融機関が運用で 大穴を開けたため、その大損を穴埋 めする目的で共済組合はその株を売 却したという噂もあります。これだ けの疑惑をかかえる「郵政民営化」 です。地検も当然動いてくれるでし ょうし、マスコミが大騒ぎすること 間違いなしです。 」と岩崎芳太郎氏は 書いた。N氏とあるが、それは当時 の日本郵政の社長であった西川善文 氏のイニシャルであることは、岩崎 氏から、直接確かめたことであるが、 マスコミは何等関心を示すこともな く、検察も全く動かなかったばかり でなく、最近は、そのN氏が日本郵 政に乗り込んできた際の四人組の一 人といわれる横山邦男氏が、日本郵便の社長に就任するという奇怪な人 事すら行なわれている。未だに旧聞 に属する話とはなっていない。
●JPエクスプレスは郵政民営化直 後の二○○八年六月に、日本郵便と 日本通運の宅配便事業のペリカン便 を統合する受け皿会社として設立さ れ、件のN氏が関与している。JP エクスプレスは、最終的には、日本 郵便が二○一○年度通期で一一八五 億円の損失を計上した上に、宅配便 事業での黒字化が全く達成されない ままに倒産している。その間の日本 通運の株式のチャートを眺めている と分かることであるが、株式市場は、 日本通運の宅配便の切り離しを悪材 料と捉えたのか、二○○七年の基本 合意から、二○○九年一月の宅配便 からの撤退方針を決めるまでの間、 株価は下落を続けている。更に興味 深いのは、外国資本の投資がこの期 間に頻繁に行なわれ、キャピタルグ ループとゴールドマングループとが 頻繁に大量保有と売却とを繰り返し て利益を稼いでいる。外資は日本通 運のプレスリリースの発表前に売買 を完了する興味深い動きが観察され、 推定でしかないが、何らかのインサ イダー情報を入手していたのではな いかとの見方ができる。郵政民営化 の闇は漆黒の闇だ。 (つづく)

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