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2010年07月31日

守屋元事務次官の「普天間」交渉秘録

 「観光とけいざい」で守屋元防衛次官の著書を紹介したところ、東京義塾さんから次のコメントを頂いた。

元防衛事務次官の守屋氏の『「普天間」交渉秘録』の、出版は、守屋氏が、どうせ有罪になるのであればと、腹を決めて、も上告を断念するくらいの覚悟で出版しているものと思う。「観光とけいざい」の視点の欄に掲載した、貴殿の書評は、興味深い。高等戦術はなかったのではないかとは、小生もそうだと思う。守屋氏ほど深刻さはなくどうせ人の金だから、出れば元々くらいの気楽さだったと思うし、反米軍基地の高まりの問題を理解していなかったことも当たっていると思う。辺野古はもはや不可能であると、当方も思うし、沖縄側にも熱心さがない。日本の利権政治家も落選してしまったか。決定版の書評を、貴方のブログにも掲載して頂けるとありがたい。いずれにしても、メモをつけており、それを頼りに実名を書かれるとつらいものはあると思う。違う人を捕まえてしまったことは、重要である。利権に妥協した政治家などは一切捕まっていないで、メモをとった官僚が、接待を受けた罪で捕まったのはおかしい。沖縄の関係者が、守屋氏を無罪にせよと声を上げることはできないものか、とも思う。


 わたしのコラムは書評というより詳細は現物を読んで欲しい(映画なら見て欲しい)という気持ちがあるので、細かい内容には踏み込まないようにしている。とはいえ、上のコメントだけではこのブログの読者には分からないと思うので、元のコラムをそのままコピペして意味が分かるようにしておこうと思う。Orwellさんと意見が一部一致したことで、わたしのコラムも全く的外れではなかったと思った。
 
 Orwellさんが「無罪」と見通していることに対して、新たな事実を付け加えると、わたし自身が、守屋さんが首になった直後に、この本に実名で出てくる沖縄側キーマンから「守屋は沖縄県が打ち出した基地返還アクションプログラムを政府内で最もよく理解していた」と評価しているのを聞いていました。守屋氏はホントはどこを見ていたのだろう…と考えると余計ややこしくなりますね。誹謗中傷のような報道のなかで、わたし自身は守屋氏の無罪を密かに念じていましたよ。外務省あたりが絡んだ国策捜査だったんじゃないでしょうかねえ。


<視点>守屋元事務次官の「普天間」交渉秘録

 元防衛事務次官の守屋武昌氏が『「普天間」交渉秘録』(新潮社)を出した。帯に「引き延ばし」「二枚舌」不実なのは誰なのか? とある。幅広く県内でも読まれているようだ。

 本書から受けた印象をランダムに述べると、第一に、普天間の返還と辺野古飛行場の新設、嘉手納以南の米軍基地返還は守屋さんが小泉首相に進言してから始まったという部分。わたしの記憶では嘉手納以南の返還が報道されたのはそれから二、三年経ってからではなかったか。この間、情報漏れがなかったことはかなりすごいことだと思う。

 第二に沖縄との交渉に手こずったが、守屋さんは沖縄側が計算ずくの高等戦術で引き延ばしを図ったと信じているようだ。しかし、そんな術を沖縄側は本当に使ったのだろうかと思う。単純に素っ頓狂だっただけなのではないかと思う。

 第三に守屋氏は辺野古陸上の飛行場を主張したが、飛行機の転移表面や進入表面などをあまり重視していなかった。日本の自衛隊はあまり拘らない、というような記述がある。これもへーッと思った。

 第四に守屋さんが優秀な官僚であったことが分かる。部下や政治家への根回しをほぼ完璧にやっていたようだ。このため沖縄側がイレギュラーなことをすると相当頭に来たらしい。しかし、西日本全般でイレギュラーは日常茶飯事である。そのような文化の違いを東北出身の守屋氏は理解できなかったのではないか。これは対米交渉で嘉手納以南の返還を勝ち取るには良かった。が、沖縄側との交渉では裏目に出た。

 第五に政府側・沖縄側の登場人物が実名で出てくる。多くの沖縄のビジネスマン、お役人も登場人物とどこかでつながっており、身近に面白いだろう。

 第六にテーマとは異なるからか、本文中に、なぜ、海兵隊は辺野古とグアムに基地が必要なのかの軍事論的な説明が少ないようだ。

 第七に沖縄側登場人物の言動が、守屋氏がまじめに書いているからこそだが、滑稽に見える。読んでいる間に何度か、爆笑させられる文章があった。守屋さんも爆笑して受け流せば良いところを、たぶん苦笑してまともに受け止めた。

 第八に、この本全体を通じて沖縄の政治家や経営者らは辺野古基地建設に大賛成で、埋立面積を広くして工事代金を増やすのに熱心だったということになる。それが、沖縄県民の総意のような印象を与えている。しかし、守屋氏は、反米軍基地の高まりを理解できなかった。

 経済的には基地建設による工事費よりも、基地が返還され、それに伴う復興事業に多くのカネを使う方がはるかにプラスとなる。辺野古埋立ではその後の地代が発生しない。

 普天間交渉では最優秀クラスの官僚が、沖縄側が使うありとあらゆる手に翻弄されたという印象を与える。もはや辺野古は不可能というサインにも見える。(明)(「観光とけいざい」第792号、10年7月15日付)



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Posted by 渡久地明 at 20:32│Comments(0)返還基地の跡利用
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