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みーぽんBLOG from カリフォルニア
カリフォルニアから時事、政治、環境、日米比較などランダムに綴ります
不都合な真実に立ち向かう(2) 「水」戦争
アル・ゴアの豪邸が平均家庭の20倍のエネルギーを使用していると地元の保守系のシンクタンクが発表したとか。

私は逆にお金持ちならお金持ちのレベルの中でライフスタイルの維持と、環境を守るイニシアチブのバランスを示してゆけば良いと思っているので、(そういう人がエスタブリッシュメントの中にいないと、環境問題に取り組むのはヒッピーみたいなライフスタイルの人だけになってしまう)報道したフォックスの卑しさを感じただけでしたが。

そんな中、集英社新書の『「水」戦争の世紀』を読んでいました。最近までCO2排出と温暖化の影響ばかり集中して考えていましたが、これは温暖化も含め、「水」を切り口に様々な課題を見せてくれる本です。

すでにすばらしい書評がネット上に出ています。

http://www.wound-treatment.jp/next/dokusho51.htm

とこれだけでお茶を濁すのもあんまりなので、わたし自身の書評は以下の通り。
まず、水に関しての様々な問題の整理をしてみます。
1.汚染の問題
2.工業、集約的農業畜産業による枯渇の問題
3.ダムなど水系の人為的破壊による、人権、生態系、気候への影響
4.水資源の商品化により、貧しい人にとって水が手に入らなくなりつつあること
5.水は「ニーズ」ではなく水の入手は「権利」であり、脱商品化されるべきものであること

1から3に関してはある程度予想をしていましたが、「水資源の商品化」に関してはたくさん学ばされました。

欧州の巨大コングロマリットである「ビベンディ・ユニバーサル」や「スエズ」といった企業は上下水道事業を営んでおり、途上国にも積極的に進出しています。そんな中IMFや世銀が貧しい債務国に対して、さらなる融資の条件として水道事業を含む公共セクターを民間に売却するよう強制しています。

そしてアルゼンチンや南アフリカにおいて、水道料金が民営化によって下がるどころか値上がりしたり、サービスの質も悪化したり、貧しい人々にとって水へのアクセスは逆に悪化していることがあげられています。

この本の中でもIMF、世銀およびアメリカ財務省の間の「ワシントン・コンセンサス」、つまり極力民営化、自由化をすすめさせるという施策については言及されていますが、それに関してはスティグリッツの「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」にさらに詳細に説明されています。

そして結びには「グローバルな水資源を商品化するのは間違いであり」世界の市民の共有財産=コモンズとして、商品化をやめ、「脱商品化」すべきだ、とありました。わたしもその考えには全面的に賛成です。

この本の中ではスーパータンカーやウォーターバッグという巨大なビニール袋を使った水の輸出の話がでてきます。私はこの本を読んだとき、「日本はこういう風に水の輸入をする必要はないのはラッキーだな」ぐらいに思っていたのです。

しかし、ある方のブログに紹介されていたSAPIOの記事を読んで、実は日本は巨大な水輸入国であることを気付かされました。つまり水そのものの輸入はボトル詰めのミネラルウォーター程度であるかもしれませんが、日本に輸入される食肉、穀物など食糧の生産に必要な水を通して輸入しているのと同じだというのです。

とりわけ牛のための牧草の生産には大豆や小麦の10倍以上の水を必要とするといいます。また綿花の生産もたいへん多くの水を必要とするそうです。輸入牛肉が安くても、中国製の木綿の衣服が安くても、見えないところで私たちの消費生活が海外の水資源に負荷をかけているというわけです。

昨日見たCNNのニュースでは、オーストラリアクイーンズランド州では旱魃で水不足が激しく、上水道に再処理した水を流さざるを得ない、とのことでした。クイーンズランドは一回行ったことがありますが、雨が少ない土地なのに、見渡す限りサトウキビの畑や肉牛の牧場が広がっていたのを思い出します。

環境の問題に真剣に対抗しようとする以上、「暖房の温度を低めに設定しよう」とか、「エコバッグを使おう」とかで済むことではなく、私たちを取り巻く世界の経済、社会の構造のひずみに直面させられざるをえない、それを感じさせられた本でした。


テーマ:環境・資源・エネルギー - ジャンル:政治・経済

この記事に対するコメント
はじめまして
足跡が拙ブログに残っておりましたので訪問させていただきました。

>オーストラリアクイーンズランド州では旱魃で水不足が激しく、上水道に再処理した水を流さざるを得ない

日本は・・・大阪とかは再処理の水ですよ^^;

水道会社の民営化をした英国(多分)でも問題が起きて、
どこかの都市では有志のNPO法人が経営をしているとか、聞いたことあります。

温暖化で、一回の降水量の増加や台風の大型化が日本を襲うらしいです。
その反面、世界のどこかで綺麗な水を飲めずに、
泥水を飲むことになる人が増えるとか・・・

今年の暖冬が異常だとは感じるのですが、
どうしてもピンとこない鈍感です。
【2007/03/04 01:03】 URL | 四季桜 #pfktzkFc [ 編集]

四季桜さん
コメントありがとうございます。大阪が再処理の水とは知りませんでした。皆さんフィルターなどをつけて飲んでおられるのでしょうか?
ちなみにわたしはボトルの水を買わずに済むように、ブリタ愛好者です。

ここ数年の台風の大型化は肌で感じませんか?日本に稀だったはずの竜巻も増えています。いやおうなく気候の変化を感じざるを得ない時代が来ていると思います。
【2007/03/04 10:56】 URL | みーぽん #- [ 編集]


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プロフィール

みーぽん

Author:みーぽん
複数の外資系秘書を経て英語通訳者に転身、2007年に夫の地元カリフォルニア州サンタクルーズに引っ越しました。
2年間こちらで環境金融の会社のアドミ&会計を担当した後、2009年からフリーで通訳・翻訳をしています。
TwitterのIDは@miepongです。



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