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みーぽんBLOG from カリフォルニア
カリフォルニアから時事、政治、環境、日米比較などランダムに綴ります
アカデミー賞ノミネート、Food Inc.を見た
こちらのNetflixのサービスは、月1000円程度で実にいろいろな映像作品を楽しむことができます。郵送されてくるDVDはもちろん、オンラインではクラシックな映画や、劇場公開が限定的なインディーズ系のドキュメンタリーなどもどんどんTivoを通してテレビから見ることができます。

そんななかで先月見たのがFood Inc.でした。先日はアカデミー賞のドキュメンタリー部門にもノミネートされたので、日本でも徐々に話題になるかもしれません。日本にいるときからアメリカの食糧生産を考えると、大企業があんな広い土地で飛行機や大型機械を使っているんだから、日本が太刀打ちできるわけはないよなあ、、、とは思っていたのですが、このフィルムを見ると、穀物取引を牛耳るカーギル、遺伝子組み換えの種を独占するモンサント、食肉業界のスミスフィールドなどが、その資金力をもとに農民を搾取し、ワシントンの政策に影響を与え、大量の補助金を獲得し、元業界の人間を農業政策の中枢に送り込むことで、食の構造を歪め、環境や国民の健康に悪影響を与えていることがよくわかります。

日本人から見れば、「アメリカ人はなんであんなにコーラ飲んで、ハンバーガー食って、肥満になってるんだ」と思うわけですが、公立の小学校からソーダの自動販売機があって、給食がピザやフライドポテトなら、味覚がゆがむのも当然です。彼らも頭では野菜の方が健康だとわかっていても、夫婦共働きで忙しく、しかも貧しければ、1束1ドル以上して料理が必要なニンジンより、99セントのハンバーガーを選んでしまいます。

さて、なぜハンバーガーが99セントで売れるのか、そこにも当然カラクリはあります。経済原則から言えば肉牛を育てるより、野菜を育てるほうが安いに決まっています。ところが、アメリカでは食肉の飼料になるコーンや大豆に関しては、補助金により、買い手は生産コストより低い値で買い取ることが可能になっているのです。大量の安いコーンや大豆は、飼料だけではなく、コーンシロップやアスパルテームをはじめとした甘味料や、増粘剤、加工食品の繋ぎ、薬の添加物などとして、スーパーの棚の90%以上に含まれているといいます。(そういえば味の素もコーンが原料でしたね。)

その結果アメリカには肥満が蔓延し、いまや国民の3人に一人が肥満、医療コストの一割は肥満が原因の成人病に関連するといいます。また、規制緩和でFDA(食料医薬品安全局)の検査官の数が減らされた結果、大腸菌感染の発生が爆発的に増えたといいます。昨年はピーナツ工場のサルモネラ菌の感染と死者の発生が話題になりました。(関連記事

映画の結論としては、ひとりひとりの消費者が、大量生産の食料品にノーといって、オーガニックな食料を買うことで、業界の流れを変えることができる、というものです。確かにこの不況の中でも、ホールフーズや、私の地元ではニュー・リーフというオーガニック系のスーパーなどは売上が減っていないのは確かなのですが、正直言うと、我が家の家計も厳しくなってきたときに、2、3割高いオーガニック商品から、安い従来の商品に切り替えざるをえませんでした。

そういうわけで、先日、ミシェル・オバマが「子供の肥満撲滅」をファースト・レディーとして取り組むテーマに選んだことは画期的だったと思います。(関連記事)もちろん賢い彼女のことですから、表面的な肥満の問題としてだけでなく、アメリカの歪んだ食の構造を視野に入れているわけです。オバマ政権はすでに大規模農家への補助金を削減すると名言しています。(関連記事)その分、オーガニックな農業への補助金にまわしてくれ、と思います。構造的に肉や甘いものが高くなれば、食料価格はいったん上がり、そこではまた貧困層に対する援助が必要になってくるとは思います。最近は「アーバンガーデン」など、都市の空き地に野菜を植える運動なども広がっています。今後アメリカの食がどうなっていくのか、私も見守っていきたいと思います。




プロフィール

みーぽん

Author:みーぽん
複数の外資系秘書を経て英語通訳者に転身、2007年に夫の地元カリフォルニア州サンタクルーズに引っ越しました。
2年間こちらで環境金融の会社のアドミ&会計を担当した後、2009年からフリーで通訳・翻訳をしています。
TwitterのIDは@miepongです。



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