アイゼンフリューゲル
あらすじ
伝説のタッグが復活! オリジナル新作!
高速レシプロ機エトピリカの操縦桿を握りながらカール・シュニッツは目を懲らした。大空の彼方に見えたのは、眩いほどに輝く一対の翼。鱗粉のように撒き散らされる光の礫。それは、未だ人類が到達できない領域の存在――虹龍の雄姿だった。「彼らが舞うあの世界は、痛みも悲しみもない場所に違いない」少年の頃からずっと……そしていまもなおカールはそう信じてやまない――。これはまだ、龍の翼に神秘があった頃の物語。遙かなる神々への領域を目指した、挑戦者たちの記録。ニトロプラスの名作『吸血殲鬼ヴェドゴニア』『沙耶の唄』で知られる伝説のタッグが復活。完全オリジナル新作始動!
レビュー
漢の一途な空への想いが心に火をつける。
ニトロプラスの看板作家のタッグによるラノベ。
思わず作家買いしてしまったが、期待通りの名作。
龍と呼ばれる未知の存在が空の支配者であった時代。
その神々に人の技で挑んだ、空に生きる漢たちの物語。
人は龍に飛行機(戦闘機)という技術で追随する。
レシプロ機からロケットエンジン搭載機への変遷期。
純粋に速く飛ぶ事を切望しながらも、新型機の軍事利用が避けられない情勢。
主人公であるカールはパイロットとして稀代の才能を持ちながらも、地上に生きる人としてとても不器用。
空を飛ぶために軍に入り、戦争で一度壊れてしまった弱い男。
空に上がれば万能に近い能力を発揮するくせに、地上ではてんでダメなギャップが良い。
龍といえば荒々しく、暴力的なイメージがあるが、今作では違う。
空の覇者として、空を速く翔けることを最も尊いこととし、勝者にも敗者にも敬意を示す紳士。
しかしひとたび勝負となれば、猛狂う神の如く容赦なく攻め立ててくる。
そんな誇り高き龍がまずもって目新しく、新鮮。
龍と飛行機のドッグファイト、空を翔ける者同士の意思疎通、航空機の細かな設定等、非常に熱い要素がてんこ盛り。
この本を読んで熱い気持ちになれなかったら男じゃない。
なんて断言したら色々とバッシングされそうだが、それ位言いたくなる完成度。
龍と飛行機・戦争という一見相容れない要素が見事に相乗し、独特の世界を作り出す。
これは面白い。とても深くのめり込める。一読の価値あり。