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【千川】熊谷守一美術館 34周年展と今日のおやつ(後編)

IMG_1493.jpeg 守一のレリーフ。守一の数少ない親友のひとりだった二紀会(一般社団法人の美術団体)の村松外次郎が守一の死を悼(いた)んで作ったもの。

 守一は、実母の死を機に故郷に帰り、6年の間、絵を描かなかった時期があったそうですが、美校時代のクラスメイトの誘いで、再び上京。

 二科展に出品した油絵「某夫人像」のモデルとなった和歌山県出身の大江秀子と結婚し、長男の黄(おう)が生まれ、続いて、次男の陽(よう)、翌年には長女の萬(まん)が生まれ、幸せな暮らしを手に入れたそう。

 しかし、守一が特にかわいがっていた次男の陽が三歳を前に亡くなり、その後、陽に似た次女の榧(かや)が生まれたのですが、榧の次に生まれた三女の茜(あかね)も、生後一年足らずで亡くなり、次々に子供の死を経験しました。

 子供たちの健康のため、日当たりの悪い東中野の借家から池袋の借家に移り、その後、夫人の実家の援助で千早に家を建て、亡くなるまで45年間暮らしたそうです。

「軒が傾いて、雨漏りするような家を気に入っている」と言っていたようですが、この頃、敗戦後の食糧難の真っただ中で、長女の萬が21歳の若さで、結核で亡くなるという悲しい出来事にもあいました。

「私はお国のために何もしていない」と言い、文化勲章を辞退し、次いで勲三等叙勲も辞退しました。97歳で亡くなる一ヵ月前まで、絵筆を握っていた人生だったそうです。

 撮影禁止だったので、作品をお見せできないのが残念なのですが、美術館の館長の次女の榧さんによる作品解説がよかったです。

 34周年展の最初の展示物は、「仏前」。守一の長女の萬が亡くなったときに仏前に供えた、黒い盆の上の卵を描いた絵です。当時、卵は貴重品でした。

 しばしば、守一の家を訪ねていた著名な方の所有物だったと思われていたそうですが、守一の晩年に偶然アメリカの版画工房で見つかり、守一自らが買い戻したものだそうです。

「野天風呂」という作品も、面白かったです。敗戦後、少し経って、落ち着いてきた頃に絵描き仲間と一緒に伊豆七島に写生旅行に行った時のスケッチを元に第一回日本国際美術展のために大きく油絵におこしたもの。

 夜、月明かりのもと、絵描き仲間がてんでにくつろいでいるところの絵でした。

IMG_1551.jpeg「白猫」という作品は有名ですね。守一は、主人に忠実な犬よりも、気ままな猫を好んでいたとのこと。家で飼っていた何代目かの白猫を描いたもの。写真は、そのポストカードです。

 この作品は、榧さんが守一の生前に直接もらった数少ない作品の一つで、開館当初からのこの美術館の看板猫だそう。

「母子像」という作品もよかったです。守一は、「榧には母性愛がない」と言っていたそうですが、榧さんが赤ん坊を抱いて現れたのが守一には新鮮な驚きだったようです。

 モデルの榧さんにくれると言っていたのに、あっという間に画商の手に渡り、この作品は二度目に描かれたものだそう。イモムシのような赤ん坊をもっと面白く描くつもりだったのに、上手くできなかったと守一が語っていたとのこと。

「アゲ羽蝶」という作品は、守一が好んだフシグロセンノウの花に来た黒アゲハを描いたもので、油絵の絶筆となったもの。死の前年に描かれました。

『南極料理人』を撮った沖田修一監督による『モリのいる場所』という映画では、30年間家から出たことがなく、自宅の森で絵を描くことに専念している、仙人のような守一の姿が描かれていましたが、実際は家から一歩も出られなくなったのは、亡くなる最後の数年だそうです。

 守一を山崎努、守一の夫人の秀子を樹木希林が演じているのですが、榧さんは、テレビで見る樹木希林を素敵な方だなと思っていたそうです。実際の母は女学生のような人だったので、樹木希林のように聡明な人ではなかったと映画紹介のパネルに書かれてありました。

 白洲正子が褒めていたという書も展示されていました。守一の書は最近もてはやされているそうです。

 決して大きな美術館ではありませんが、34周年展にあたり、あちこちから所蔵品を借り、101点の作品を集めたとパンフレットに書かれてありました。充実した34周年展でした。

IMG_1496.jpeg 次女で館長の榧さんの名を付けたcafe kayaで、クルミのパウンドケーキを買ってきました。今日のおやつです。

IMG_1429.jpeg 美術館の斜め向かいにある長府屋。

IMG_1501.jpeg お多福豆という、そら豆を上白糖で煮たものを買って来ました。お多福豆だけを商っている小さなお店です。

IMG_1522.jpeg「こわれ」という煮崩れたB品を安く売っているのですが、普通のものより上白糖がよくからんでおいしく、ファンが多いです。今日は、午前中にもかかわらず、「こわれ」は売り切れていました。

 家に帰る途中、介護付き有料老人ホームの前を通りかかったのですが、母が関心を持っていたので、「入りたいの?」と聞くと、「もう少ししたら、入れられちゃうんじゃないかと思って」と言っていました。そんな悲しいこと言わないで、お母さん。

IMG_1524.jpeg 帰りにスーパーに寄ったのですが、石川県産の竹の子が売られていました。今年はもう食べられないと思っていたので、うれしいです。母の好きな身欠きにしんと煮てあげようと思います。

 今日もよく歩きました。おつかれさま。
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カエルのロビン

Author:カエルのロビン
フリーランスの記者&編集者。星野源と加瀬亮が好きといえばオシャレだと思っている。何歳からアラフィフか母親と協議中。数年分の旅行記と食べ歩き日記を順次アップしていきますので、よろしくお願いいたします。
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