『UP』連載のリスト
- 2014/03/31
- 14:45
2011年の「アラブの春」の勃発以来、『UP』では発表の場、思考の場を与えていただきました。 ここで一連の寄稿をリストにして整理してみたいと思います。 まず、チュニジアとエジプトでの政権崩壊と、アラブ世界全域への社会変動の波及で騒然としていた時期に、政治学からの分析の視角について、単発で書いたものがこれです。池内恵「アラブ民主化と政治学の復権」『UP』第462号(第40巻第4号)、東京大学出版会、2011年4...
【寄稿】移行期政治の「ゲームのルール」『UP』4月号
- 2014/03/31
- 13:58
年度末の納入。もう一本。池内恵「移行期政治の「ゲームのルール」──当面の帰結を分けた要因は何か」《転換期の中東政治を読む11(最終回)》『UP』東京大学出版会、38-45頁 ほぼ2号に一回のペースで『UP』に2012年8月号から連載してきた「転換期の中東政治を読む」だが、そろそろ潮時、ということでひとまず締めます。今回告知したように、変化していく現状の分析から、2011年以来の政治変動の全体をまとめる本の執筆に...
【論文】「指導者なきジハード」の戦略と組織『戦略研究』14号
- 2014/03/31
- 12:53
年度末なので、成果物の取りまとめ。まずは論文。 戦略研究学会の特集号が「戦略とリーダーシップ」だったので、会員になって投稿してみました。依頼される原稿ばかり書いていると自分のテーマが掘り進められませんので、意識して学会・学術論文誌に投稿するよう心掛けています。しかしそうして仕事を増やし過ぎて、依頼された原稿を落としたり遅らせたりするので、昨年は編者にとってはかなり「危険な香り」のする書き手になっ...
【論文】アラブの春後の移行期政治
- 2014/03/30
- 18:04
年度末のためか成果が多く出てきています。 原稿用紙(←もう使わないか)で165枚以上、の大論文が刊行されました。池内恵「『アラブの春』後の移行期過程」『中東レビュー』Volume 1、アジア経済研究所、2014年2月、92-128頁 無料でダウンロードできます。(今見てみたら、93頁のフッター・ページ番号が欠けているようで、言って直してもらいます。内容は、ところどころ冗長なのを除けば大丈夫と思います) 「アラブの春」...
【寄稿】(高木徹氏と)「『日中関係の悪化』から考える国際世論を味方に付ける方法」
- 2014/03/30
- 14:53
気が付いたらプロ野球が始まっており、桜が咲きかけていました。今日の風でもまだ大丈夫そうですね。 先日書いた(「日本と国際メディア情報戦」3月1日)、高木徹さんとの対談が『クーリエ・ジャポン』に掲載されました。 特集「世界が見たNippon Special 日本はなぜ「誤解」されるのか」の中での「特別対談」という枠です。 池内恵×高木徹「『日中関係の悪化』から考える国際世論を味方につける方法」『Courrier Japon クー...
マニラ2000
- 2014/03/28
- 22:20
ミンダナオ和平の話のついで。 そういえば2000年にもマニラに立ち寄ったことがあった。その時も新聞を開けばミンダナオ紛争ばかりだった。2000年にMILFとフィリピン政府は全面的な衝突を繰り広げていた。その時はエストラーダ大統領だった。 マニラに着いて乗ったタクシーの運転手がムスリムで、興奮してメッカの写真を掲げて「ジハード・ジハード!」と言っていた。マニラでも熱くなっていたんですね。 この時は外務省のサウ...
ミンダナオ紛争で和平合意が調印
- 2014/03/28
- 20:13
3月27日に、フィリピンで政府とモロ・イスラーム解放戦線(Moro Islamic Liberation Front: MILF)が「包括和平合意文書」に調印した。(リンクはなんとなくマレーシア・ボルネオ島のウェブ新聞にしてみました・・・マニラより近いし。フィリピンの新聞だと『フィルスター』とか『インクワイアラー』なのかな?) フィリピン南部のミンダナオ島の西部の一部とスールー諸島には、1990年以来、ムスリム・ミンダナオ自治地域(AR...
【寄稿】オバマの「サウジ訪問」隠れた争点は「エジプト」『フォーサイト』
- 2014/03/27
- 21:16
ドーハから帰国しました。滞在中に合間に書いていた論稿が『フォーサイト』に掲載されました。 明日28日の米オバマ大統領のサウジ訪問を迎える、サウジとGCCの現状について。 池内恵「オバマの「サウジ訪問」隠れた争点は「エジプト」」『フォーサイト』2014年3月27日 速報性を重視してブログの「中東の部屋」にアップすることが多かったので、「中東 危機の震源を読む」という連載枠ではここのところあまり書いていなか...
アラブ連盟サミットに向けて
- 2014/03/25
- 06:09
カタールのドーハに来ています。 先日書いたように(「オバマ大統領のサウジ訪問でGCCの内紛は収まるのか」)、オバマ大統領のサウジ訪問の際に行われる予定だった米・GCC首脳会議が中止になり、GCCの内紛の激化が印象づけられましたが、その渦中のカタールです。 といっても、私の出る会議は宗教・政治の関係なので、直接外交問題については議論にならないだろう。若干、一人の参加者に陰で聞けたらいいなと思うこと...
オバマ大統領のサウジ訪問でGCCの内紛は収まるのか
- 2014/03/23
- 13:24
オランダのハーグで行われる第3回核安全保障サミットに注目が集まる。ロシアのプーチン大統領が欠席するので、ウクライナ危機について西側諸国が一致してどのような対応を取れるのかが問われる。 日本にとっては、日米韓の首脳会談が行われるかどうか、そこで韓国の朴大統領がどのような態度に出て、オバマがどう反応するかが、今後の日本の外交の方向性あるいは少なくとも「雰囲気」をかなり強く規定するだろう。 というわけ...
それにしても
- 2014/03/22
- 11:44
先日の朱建栄先生の件も、今回の王柯先生の件も(もし政治的事案なのであれば)、中国共産党の見解もかなり取り入れて日本社会に説明するような姿勢をもった人の方が、中国に戻った時に問題にされているというのはどういうことなんでしょうね。 朱建栄先生などは明確に中国政府の日本向けの弁護士のようで、まさにdevil's advocateという言葉の好例だなあと思うのですが。 中国政府の見解と全面的に対立している人はそもそも中...
王柯先生の著作
- 2014/03/22
- 10:52
王柯『東トルキスタン共和国研究―中国のイスラムと民族問題』東京大学出版会、1995年今日は東大出版会の本の紹介が重なりました。無事のご帰還を祈ります。先日は、楊海英『モンゴルとイスラーム的中国』(文藝春秋・文春学芸ライブラリー)をご紹介しましたが(「モンゴルとイスラーム的中国」2月19日)、いずれも日本留学で学者となった先生方です。 日本の学界は、適切に運営・支援が行われれば(←ここ重要)、中国に極...
【緊急】神戸大の王柯先生が中国で拘束か?
- 2014/03/22
- 10:31
これは心配です。中国ムスリム、特にウイグル問題で有名な王柯(おう・か)先生が中国に行ったきり連絡が取れないようです。「神戸大教授:中国で不明に ウイグル族を研究」『毎日新聞』2014年3月22日 中国の内政全体の中でも、特に新疆ウイグル情勢は、かなり緊迫化しているのではないかと思います。 マレーシア航空機の失踪でも即座にウイグル系あるいはトルキスタン系ムスリムによるジハードではないかという噂...
【友情出演】『デザインする思考力』東大EMP
- 2014/03/22
- 10:17
刊行されました。 池内恵「現象全体の仕組みを捉える分析力」東大EMP・横山禎徳編『東大エグゼクティブ・マネジメント デザインする思考力』東京大学出版会、83-123頁 東大EMP(エグゼクティブ・マネッジメント・プログラム)という、大学と経済社会をつなげる特設プログラムが東大の赤門のそばの新しいきれいな建物の中で行われております。EMPで半年に1回、講師をしている関係で、ご指名を受け、プログラム・デ...
昔書いた井筒俊彦論
- 2014/03/21
- 22:44
このブログはこれまでに書いた本や、あちこちに書いて見つかりにくくなった論文やエッセーなどを一覧できるようにとも考えて立ち上げたのだけれども、なかなか時間が取れない。単行本については、本屋に行けば売っているものなので、広告のように見えてもなんなので、必要な時が来るまでは掲載を控えているのが実態です。 今回は専門業界の人以外はほとんど目にしたことがなさそうな論文を一本紹介。 先日、『中央公論』で行っ...
【掲載情報】「エジプトとチュニジア──何が立憲プロセスの成否を分けたのか」
- 2014/03/20
- 14:03
ウェブ上に記事が掲載されました。無料でダウンロードできます。池内恵「エジプトとチュニジア──何が立憲プロセスの成否を分けたのか」連載《「アラブの春」後の中東政治》第6回『中東協力センターニュース』2014年2/3月号、74-79頁内容は、このブログに書いてきたことともかなり重なっていますが、もう少し整理してまとめています。「下書き」の段階でブログで読んで下さった皆様、ありがとうございました。といっても今回の論稿...
トルコの3・30地方選挙がエルドアン政権の将来を左右する
- 2014/03/19
- 11:53
トルコで3月30日に行われる統一地方選挙(各地の市長選挙)は急速に、デモと汚職追及で荒波に揉まれたエルドアン政権への民意を図る、重要な意味を持つものとなってきました。昨年までは(1)統一地方選挙で勝って、(2)その勢いで8月の大統領選挙に鞍替え立候補して勝利し、(3)2015年の議会選挙で勝利して大統領権限を強める憲法改正を行い、「皇帝」(むしろ「スルターン」か)のように君臨しようかという勢いだったエルド...
ウクライナ問題(7)沿ドニエストルでもロシア編入への動き?
- 2014/03/18
- 22:37
プーチン大統領は上下両院や連邦政府高官を集めた演説で、クリミア編入への法的措置を取るよう指示を出したとのことなので、やはり本日(18日)未明に載せたエントリ「ウクライナ問題(6)クリミアの次は沿ドニエストル(モルドバ)に注目」の分類での(1)だったようです。また、このエントリでは、今のところモルドバ(沿ドニエストル Transnistria; Trans-Dniester)は平穏、と書いておきましたが、沿ドニエストルでもロシア...
ウクライナ問題(6)クリミアの次は沿ドニエストル(モルドバ)に注目
- 2014/03/18
- 13:56
お昼休みにウクライナ情勢チェック。当面はクリミアの帰属に焦点が当たっている。 3月11日にクリミア自治共和国議会で独立宣言採択。 3月16日の国民投票でウクライナからの分離・独立及びロシアへの編入の承認。 3月17日にロシア・プーチン大統領がクリミアを独立国として承認する大統領令に署名。←今ここ。 今日(3月18日)夜にはプーチンが上下両院の議員や連邦政府幹部らが出席する連邦会議でクリミア問題について演説...
リビアの謎のタンカーは米海軍特殊部隊が拿捕
- 2014/03/18
- 00:49
リビア東部の民兵集団が占拠した石油施設から原油を船積みして追っ手を振り切って外洋にでたタンカー「モーニング・グローリー号」が、3月16日深夜に米海軍特殊部隊SEALSが強制的に乗り組んで拿捕した模様です。"U.S. forces seize tanker carrying oil from Libya rebel port," Reuters, March 17."UPDATE 3-U.S. forces seize tanker carrying oil from Libya rebel port," Reuters, March 17. この件について、『フォーサイ...
ウクライナ問題(5)イラン核開発交渉への影響は?
- 2014/03/17
- 06:17
ウクライナ危機に注目が集まった先月20日頃以降から、中東への関心が低下した気がする。国際的な外交の主要課題が中東から域外に移ったことが、中東の諸問題にどう影響するのだろうか。あるいはウクライナをめぐる米露対立は中東の諸問題にどう影響を与えるのだろうか。 3月16日にはクリミアでロシア編入を求める住民投票が強行された。国連安保理では米欧がこれを認めないとする決議案を出して当然ロシアの拒否権で否決。週明...
ウクライナ問題(4)法律と地政学の間
- 2014/03/14
- 01:59
ウクライナ問題でいろいろ斜め読み。 ウクライナ問題は、現代思想の課題として興味深い。 日本では「現代思想」というと、ほとんどいったこともないフランスのなにやら小難しい思想家のテキストをこねくり回して意味不明の論文を書くことだと勘違いされてしまって、その結果、大学の語学の先生の飯のタネ以外にはならなくなってしまったが、本当の現代思想はフクヤマとかハンチントンとかだと思う。 少なくとも数十年たってか...
リビア政府は領域一円支配を取り戻せるか
- 2014/03/14
- 00:31
タンカーの行方よりももっと重要なのは、これをきっかけに流動化したリビア内政がどこへ向かうか、ということ。 リビアの暫定政権を構成する国民全体会議(議会)は、この問題でザイダーン首相を不信任決議して解任。ザイダーン首相には汚職の嫌疑もかけられ、逮捕される前にマルタを経由して西欧に逃亡した模様。 まあこれだけを見るとよくある「混迷深まる中東情勢」という決まり文句で収まりそうだけど、もう少し考えてみよ...
リビアの石油のゆくえ
- 2014/03/13
- 23:59
リビアの民兵集団が占拠した石油生産施設から船積みした謎の「北朝鮮船籍」タンカーが外洋に出たという話を書いたが(無料で読めます⇒池内恵「リビア東部の「自治」勢力から石油を船積みした「北朝鮮船籍」タンカーの行方は」『フォーサイト』2014年3月12日)、その続き。 まず、タンカーはどこに行ったか。上の記事では「炎上」説を紹介しておいたが、その後の報道では、タンカーがエジプト領海に入った後に、リビア海軍は見失...
お知らせ 無料公開 リビアの北朝鮮船籍タンカーの行方
- 2014/03/12
- 12:09
お知らせ。当面無料公開になりました。池内恵「リビア東部の「自治」勢力から石油を船積みした「北朝鮮船籍」タンカーの行方は」『フォーサイト』2014年3月12日...
ウクライナ問題(3)クリミア編入が許されるなら東アジアでは・・・
- 2014/03/12
- 11:47
ウクライナ危機について、素人の私をかなり納得させてくれているのが、ジャーナリストの国末憲人さんが『フォーサイト』に書いている一連の分析。国末憲人「軍事介入はロシアにとって「得」か「損」か」『フォーサイト』2014年3月4日ではかなり見通しがすっきりした(読者コメントのThe Sovereignさんの分析も非常に納得がいった)。でも有料か。もしロシアが現実的・合理的に行動していると仮定するならば、クリミアはしっかり押...
リビア反政府派から北朝鮮のタンカーが石油を買った?
- 2014/03/12
- 09:41
昨夜・今朝方、夜更かしして書いてしまいました。書き終わった後に東京地方はぐらっと揺れました。池内恵「リビア東部の「自治」勢力から石油を船積みした「北朝鮮船籍」タンカーの行方は」『フォーサイト』2014年3月12日リビアというと「混乱」という印象があるのでしょうが、それに「北朝鮮」が絡んで、しかも「タンカー炎上」などとも報じられているので、日本でも関心があるかと思いまして・・・しかし人目を引くはずの「タン...
井筒俊彦のイスラーム学
- 2014/03/11
- 12:24
あまりに忙しくて、中東情勢も、トルコ・途上国経済ウォッチングも、ウクライナ情勢横睨みも、合間に続けているけれどもブログにアップする時間が取れない。それはそうと、本来の本業のイスラーム思想で、鼎談が出ました。池内恵×澤井義次×若松英輔 「我々にとっての井筒俊彦はこれから始まる 生誕一〇〇年 イスラーム、禅、東洋哲学・・・・・・」『中央公論』2014年4月号(1566号・第129巻第4号)、156-168頁。日本で「イス...
ウクライナ問題で問われているもの(2)米の対ロ経済制裁で日本は?~対イラン制裁も回想しつつ~
- 2014/03/08
- 20:50
ウクライナ問題で、3月6日に、オバマ大統領は大統領令で対ロシア経済制裁の発動を命令。これは日本にとってどういう意味を持つか。私としては、米国の対イラン経済制裁に対する日本の反応を思い起こす。イラン制裁と言っても、歴史的には2回あって、1回目が1980年のもの。1979年11月のテヘラン米大使館人質事件に対して、米国がイランに課した経済制裁に、日本や西欧諸国が追随した。日本政府は具体的には、1980年5月26日に公布さ...
土曜日の駒場Ⅰと駒場Ⅱキャンパス
- 2014/03/08
- 19:44
ふう。土曜日の夕方6時30分に先端研の研究室にやってまいりました。それまでは東大駒場キャンパスで、参加している科研費プロジェクトの全体研究会(といっても7・8人の小さなものです)に出席していました。研究者は「ヒマでしょ」という誤解があるが、昔はともかく今はそんなことはない。土曜日・日曜日もつぶれることが多い。科研費プロジェクトに参加している駒場(東大教養学部・東大大学院総合文化研究科)の先生が会議室を...