人質事件の検証委員会報告への反応を目にして
- 2015/05/27
- 23:04
5月21日に発表された、シリアでの2名の邦人人質殺害事件についての政府の検証委員会報告書の作成に、外部の有識者として参加した。報告書は全文をダウンロードできる。一般公開の報告書に載せられなかったのは次のような情報だ。ご遺族あるいは関係者のプライバシーに関わる情報。外国の政府機関から秘密を前提に提供された情報。これについては、各官庁はプライバシーや秘密の範囲を厳密に広く取ろうとするのに対し、外部委員...
中東政策の「オバマ・ドクトリン」が詳細に明かされる
- 2015/04/18
- 08:00
週末の視聴。今週はこれを推奨。先週に出ていましたが、忙しいのでじっくり検討する時間がなかった。聞いてみると、やはり色々考えさせられた。Thomas L. Friedman, "Iran and the Obama Doctrine," The New York Tims, APRIL 5, 2015.4月5日にニューヨーク・タイムズのウェブサイトで公開された、オバマ大統領の中東政策をめぐる詳細なインタビュー。聞き手はトマス・フリードマン。46分もある。4月2日のイラン核開発問題で...
鳩山さんとドパルデュー:係争地への「移住」について
- 2015/03/15
- 06:00
日曜日なんですからちょっとは軽いネタを。軽くないかも。鳩山さん。「友達の友達が・・・」の人ではなく、最近クリミアに行った元首相の方ですね当然。ロシアの宣伝放送Russia Todayは、ばっちり、一緒に行った右翼団体の人と並んだ会見を伝えています。Ex-Japanese PM finds Crimea referendum 'expressed real will' of locals, Published time: March 11, 2015 10:37; Edited time: March 11, 2015 13:55 連日、ロシア政府の思...
検証委員会への外部有識者としての参画について:「イスラーム国」による日本人人質殺害事件
- 2015/03/12
- 17:23
本日11時の官房長官記者会見に合わせて公表されたように「イスラーム国」による日本人人質事件に関する検証委員会に有識者メンバーとして参加することになりました(他のメンバーは、長有紀枝・立教大教授▽小島俊郎・共同通信デジタル執行役員▽田中浩一郎・日本エネルギー経済研究所中東研究センター長▽宮家邦彦・立命館大客員教授)。 この問題が日本国内の政治対立の中で大きな政治問題となったことから、一定の注目を集めて...
ユーラシア・グループの2015年リスク予測も発表
- 2015/01/06
- 11:50
ユーラシア・グループが5日に今年の10大リスク予測を発表しましたね。私も参加させてもらったPHP総研のグローバル・リスク予測(「2015年のグローバルリスク予測を公開」2014/12/20)と比較してみたいが、新年早々締め切りがどんどん来ていて切羽詰まっているので時間ありません。簡単な紹介はこれかな。「2015年最大のリスクは欧州政治 米調査会社予測 ロシアや「金融の兵器化」も上位」『日本経済新聞』(電子版)2015/1/5 ...
2015年のグローバルリスク予測を公開
- 2014/12/20
- 22:09
昨日12月19日(金)に、私も参加させていただいた、「2015年版PHPグローバル・リスク分析」レポートが公開されました。PHP総研のウェブサイトから無料でダウンロードできます。2015年に想定されるリスクを10挙げると・・・ リスク1.オバマ大統領「ご隠居外交」で迷走する米国の対外関与 リスク2. 米国金融市場で再び注目されるサブプライムとジャンク債 リスク3. 「外国企業たたき」が加速する、景気後退と外...
「植民地の第一次世界大戦」についてNHKBS世界のドキュメンタリーで秀作が
- 2014/12/15
- 18:00
本の入稿で毎日朝晩一章ずつ締め切りが設定されていたので、身動きが取れないでいた。危険水域を抜け出しつつある。まあこの本が終わってももっと大変な本が何冊も待ち構えているのだが。数年分の成果が一度に出そうな来年前半。執筆に没頭していると、授業に出ているか、講演・研究会などに出ている時以外はずっと書いていることになるので、テレビも見られなくなる。まあ、ふだんテレビを見るといってもNHKBSの外国ニュースとか...
日本人戦闘員の系譜~戦後社会に寄る辺なき人たち
- 2014/10/17
- 12:54
面白い記事が出ていた。黒井文太郎「戦いたい!海外の戦場へ向かう日本人たちの系譜 元自衛官からイスラム国を目指した北大生まで」JBプレス、2014年10月17日日本の戦後の裏面史でもあり、中東情勢の番外編とも言える。紛争の大勢に影響を与えることはついぞなかったが、思想・文化現象として興味深い。私自身は、さらにマイナーな、戦場には出ないが「後方支援」した日本人たちのことが時折気になる。フィールドワーク(というか...
日本人の「イスラーム国」参加未遂の報道に思う
- 2014/10/06
- 23:59
「イスラーム国」の戦闘に参加を目指した日本人が摘発されたとのこと。事実関係はほとんど伝わってきていません。どのような思想的背景があるのか、あるいはむしろ非常に軽率に参加しようとしたのか、事実関係が分からない限り、この事件そのものについては議論しようがありません。しかし、日本の社会の固有の文化的・宗教的・政治的な通念と、イスラーム教の政治・軍事理念とが触れると、社会の周縁部で非常に特異なタイプの過激...
イラク・シリアの内戦と介入は原油価格を下落させた
- 2014/09/30
- 18:00
ある程度ものの分かった専門家の間でやり取りする際に常識となっている話が、その外に広まるまでにはタイムラグがある。結局伝わらない場合も多い。中東情勢が原油市場に及ぼす影響というのもそんな課題の一つだ。その関係で、やっとまともな報道になったな、と思わせてくれる記事があった。その記事で引用されている図を見れば一目瞭然だ。出典:「原油価格:下落続く 欧州、中国の景気懸念 需要先細り」『毎日新聞』2014年09月1...
ウクライナ上空回避を実体験~国際航路の安全保障が紛争と紛争解決の焦点に
- 2014/08/26
- 18:16
仕事でトルコのイスタンブールに来ています。来る時はずっと本を読んでいて重要な本を2冊も読めたので大変有益かつ疲労したのですが、唯一利用した機内エンターテインメントが飛行ルート地図。東京からイスタンブールまで、大雑把にこういう航路なのですが、拡大図などが適宜表示されて、実際に飛んできた経路が表示され、その時点での最短ルートが示されるので、細かく見ていると方向転換によるルート変更が分かる。注目したのは...
disappointedいっぱい言ってるよ
- 2014/06/04
- 15:21
またこういった見当はずれな・・・無視すればいいのかもしれませんが、ウェブの無料の媒体しか読まない層が増えているようで、その中ではよく読まれているように見える日経ビジネス・オンラインの記事なので、いちおうコメントしておく。「日本は米国の属国であり続けるのか―」現代日本史の専門家、オーストラリア国立大学のガバン・マコーマック名誉教授に聞くなる記事で、例の安倍首相の靖国参拝への米国側のdisappointed発言に...
アジア相互信頼醸成措置会議(CICA)の上海宣言と大東亜共同宣言(1943)を比べたら
- 2014/05/25
- 21:44
アジア相互信頼醸成措置会議(CICA)の4年に一度のサミットが、5月20-21日に上海で開かれ、「上海宣言」を採択して閉幕した。中国が、南シナ海ではパラセル(中国名・西沙)諸島をめぐってヴェトナムに強圧的な攻勢をかけ、東シナ海の公海上では日本の自衛隊機に異常接近するといった、拡張主義の度合いが一段と高まる兆候が相次ぐ中で、これまで全くと言っていいほど知られていなかったCICAに突然注目が集まった。これに...
あれから一年、今年もボストン・マラソンがスタート
- 2014/04/21
- 23:20
先ほど、『ブリタニカ国際年鑑』に、ボストン・マラソン爆破テロ事件やイナメナスの天然ガス・プラント襲撃事件など、2013年のグローバル・ジハードの動向について回顧・解説を書いた旨を書きましたが、忘れていましたがつい先ほど、ボストン・マラソンがスタートを切ったようです。"Nearly 36,000 runners ready for first Boston Marathon since bomb attack," Reuters, April 21, 2014.ロイターの実況ツイート"Boston Maratho...
実はNHKBS1はすごいインテリジェンス情報の塊
- 2014/04/08
- 23:59
春の番組改編で、NHKBS1の国際ニュース番組もいろいろ変わった。NHKBS1の各種の国際ニュース番組は、国際情勢を見る上で必須のツール。 時間はスポーツなどで変わることがあるけれど(←やめてほしいです。ニュース・チャンネルとスポーツ・チャンネルは分けてください、NHKさん。特に、オリンピックやワールドカップがある期間には国際ニュース番組がぐっと減るというのは困ります。まさにその陰で毎回世界で大...
「危機の震源」がだんだん近づいてきますね
- 2014/04/02
- 16:39
ウクライナ危機の陰で進んでいた、台湾の学生を中心とした、台中サービス貿易協定締結強行に反対する、反政府抗議行動の高まり。 思考実験として、そして将来への現実的な備えとして考えておかなければならないのは、もしこの抗議行動が激化して、一部に武装集団なども現れ、大規模な騒乱状態になった場合、あるいは馬英九政権が倒れるような事態になった場合、どうなるか、ということ。 中国との貿易協定で「中国の植民地に...
ウクライナ問題(7)沿ドニエストルでもロシア編入への動き?
- 2014/03/18
- 22:37
プーチン大統領は上下両院や連邦政府高官を集めた演説で、クリミア編入への法的措置を取るよう指示を出したとのことなので、やはり本日(18日)未明に載せたエントリ「ウクライナ問題(6)クリミアの次は沿ドニエストル(モルドバ)に注目」の分類での(1)だったようです。また、このエントリでは、今のところモルドバ(沿ドニエストル Transnistria; Trans-Dniester)は平穏、と書いておきましたが、沿ドニエストルでもロシア...
ウクライナ問題(6)クリミアの次は沿ドニエストル(モルドバ)に注目
- 2014/03/18
- 13:56
お昼休みにウクライナ情勢チェック。当面はクリミアの帰属に焦点が当たっている。 3月11日にクリミア自治共和国議会で独立宣言採択。 3月16日の国民投票でウクライナからの分離・独立及びロシアへの編入の承認。 3月17日にロシア・プーチン大統領がクリミアを独立国として承認する大統領令に署名。←今ここ。 今日(3月18日)夜にはプーチンが上下両院の議員や連邦政府幹部らが出席する連邦会議でクリミア問題について演説...
ウクライナ問題(3)クリミア編入が許されるなら東アジアでは・・・
- 2014/03/12
- 11:47
ウクライナ危機について、素人の私をかなり納得させてくれているのが、ジャーナリストの国末憲人さんが『フォーサイト』に書いている一連の分析。国末憲人「軍事介入はロシアにとって「得」か「損」か」『フォーサイト』2014年3月4日ではかなり見通しがすっきりした(読者コメントのThe Sovereignさんの分析も非常に納得がいった)。でも有料か。もしロシアが現実的・合理的に行動していると仮定するならば、クリミアはしっかり押...
ウクライナ問題で問われているもの(2)米の対ロ経済制裁で日本は?~対イラン制裁も回想しつつ~
- 2014/03/08
- 20:50
ウクライナ問題で、3月6日に、オバマ大統領は大統領令で対ロシア経済制裁の発動を命令。これは日本にとってどういう意味を持つか。私としては、米国の対イラン経済制裁に対する日本の反応を思い起こす。イラン制裁と言っても、歴史的には2回あって、1回目が1980年のもの。1979年11月のテヘラン米大使館人質事件に対して、米国がイランに課した経済制裁に、日本や西欧諸国が追随した。日本政府は具体的には、1980年5月26日に公布さ...
ウクライナ問題で問われているもの(1)プーチンはバブルか実体か
- 2014/03/06
- 01:54
ウクライナ情勢の展開が速い。早いだけでなく、逐一衛星放送やインターネットで状況が伝えられる。2011年の「アラブの春」は、国際メディア上での瞬時の情報伝達とフィードバックによって状況そのものが加速していく、新しい速度での国際問題の先駆けだったのだろう。2014年の国際問題の最大の関心事は、昨年に中東を中心に明らかになったアメリカの内向き志向と覇権撤退の流れがどの程度進むか、その影響がどこにどのように出るか...
日本と国際メディア情報戦
- 2014/03/01
- 14:24
数日前、NHKディレクターでノンフィクション作家の高木徹さんと対談をしていました。そのうちとある雑誌に出る予定ですが、対談の内容は出た時に紹介するとして、対談でも素材にした、高木さんの新刊をご紹介。高木徹『国際メディア情報戦』(講談社現代新書、2014年1月20日刊)高木さんとの対談は3度目で、最初は2003年に遡る。(1)高木徹・池内恵「戦争と情報戦略 国際政治の中の目立たない国・日本」『本』2003年10月号、...
「右派から距離をおく日本政府」の必死の情報戦
- 2014/02/28
- 04:04
印象に残った記事。"Japan distances itself from right-wing statements" Washingotn Post(AP), February 24. 「日本は右派の発言から距離を置く」ワシントンポストがAP通信配信の記事を掲載したもの。画面には岸田外務大臣が両手で口と鼻を覆った、「苦悩」するかのような表情が大写しになる。"Japan’s foreign minister is trying to distance his government from recent right-wing comments on World War II, calling them...
トルコ経済はどうなる(3)「低体温化」どうでしょう
- 2014/02/12
- 02:21
米国でのテーパリング(超金融緩和政策の縮小)がなぜトルコ経済に影響を与えるかというと、私は専門ではないので、関わったお仕事でエコノミストの皆様に教えていただいた話を引き写します。PHP総合研究所で「グローバル・リスク分析プロジェクト」というのがあるのですが、これに2013年版から参加させてもらっていましたが、2014年版が昨年12月後半にちょうど出たところでした。「PHPグローバル・リスク分析」2014...
トルコ経済はどうなる(2)テーパリングって何だっけ
- 2014/02/11
- 21:05
経済専門家にとっては初歩中の初歩なようだけど、ここでおさらいしておくと、トルコがその渦中にある問題は、トルコ一国の問題ではなく、米国の金融緩和縮小が途上国にどう及ぶかという問題。昨年半ばごろから世界経済の時限爆弾というか自爆スイッチのように恐れられてきた、米国が続けてきた超金融緩和政策の見直し、いわゆる「テーパリング(tapering)」が、ブームを超えてバブルのようになっていた新興国経済にどう影響を与え...
トルコ経済はどうなる(1)深夜の果断な利上げ
- 2014/02/10
- 13:36
1月22日に「トルコはもう三丁目の夕日じゃないよ」と書いてから、トルコ経済はずいぶん動いた。劇的だったのはトルコ中央銀行が1月28日深夜に緊急の金融政策決定会合を開いて、翌日未明にかけて、直前の予想よりもさらに大きな幅の利上げを行ったこと。1月末に世界中の新興国に伝染した通貨危機の不安を打ち消すための果断な措置。これが効果をもたらすか、注目されている。これは単にトルコ一国の経済に関わることではない。世界...
disappointedの用法
- 2014/01/31
- 23:59
昨年暮れの安倍首相の靖国神社参拝について、まず在日米大使館が、そして米国務省が「失望した(disappointed)」と声明を出したことはずいぶん議論の的となった。日米関係の中では異例の表現だったので、この「失望」がどの程度の「失望」か、米国が同盟国に対して発する表現として、どのような意味を持つのか、注目された。中東問題を観測している私にとっては、「よく聞いたことがあるな」という表現である。イスラエルの入植地拡...
レクサスと日本外交
- 2014/01/29
- 01:56
苦し紛れに即興的に作った造語「LEXUS-A」が、一人歩き、とまではいかないが、おそるおそるお散歩中、ぐらいか。1月26日の『東京新聞』で、木村太郎さんが連載「太郎の国際通信」に寄稿した「元米同盟国連盟が拡大中」というコラムで引用してくださいました。冒頭の部分をご紹介します。「LEXUS-A(レクサスーA)という言葉に出合った。といってもトヨタ製の乗用車のことではない。League of EX US Alliesの頭文字をとったもので...