イラク・シリアの内戦と介入は原油価格を下落させた
- 2014/09/30
- 18:00

ある程度ものの分かった専門家の間でやり取りする際に常識となっている話が、その外に広まるまでにはタイムラグがある。結局伝わらない場合も多い。中東情勢が原油市場に及ぼす影響というのもそんな課題の一つだ。その関係で、やっとまともな報道になったな、と思わせてくれる記事があった。その記事で引用されている図を見れば一目瞭然だ。出典:「原油価格:下落続く 欧州、中国の景気懸念 需要先細り」『毎日新聞』2014年09月1...
ジョージ・フリードマン『続・100年予測』に文庫版解説を寄稿
- 2014/09/29
- 08:00

以前にこのブログで紹介した(「マキャベリスト・オバマ」の誕生──イラク北部情勢への対応は「帝国」統治を学び始めた米国の今後を指し示すのか(2014/08/21))、地政学論者のジョージ・フリードマンの著作『続・100年予測』(早川文庫)に解説を寄稿しました。帯にもキャッチフレーズが引用されているようです。単行本では邦訳タイトルが『激動予測』だったものが、文庫版では著者の前作『100年予測』に合わせて、まるで「続編」...
トルコはシリア北部の安全地帯化を提案、空爆には依然として不参加
- 2014/09/28
- 00:45

米国のシリア空爆には、湾岸産油国が象徴的に参加しているが、実質的な解決には地上での同盟勢力が欠かせず、それが得られないところが最大の制約になっている。空爆自体は、アサド政権の黙認と歓迎の下、空軍・対空防衛能力がほぼ皆無の「イスラーム国」及びイスラーム過激派諸勢力に対して行われており、攻撃する側に、誤爆・事故以外の危険はほとんどない。しかし「イスラーム国」が入り込んでくることを可能にしたシリア北部・...
【テレビ出演】28日(日)の午後6時54分~BS朝日「いま世界は」で解説
- 2014/09/27
- 21:30

明日9月28日日曜日のBS朝日(BS5Ch)「いま世界は」(午後6時54分~8時54分)にスタジオ出演して米国のシリア空爆の現状と「イスラーム国」について解説する予定です。番組の前半部分の7時ごろから30分程度の時間のみゲストとして解説するのではないかと思います。番組情報についてはココからも。ロゴはこれかな。...
UAEは女性パイロットを、サウジは王子様パイロットを動員して、米世論と対イスラーム国でイメージ戦略
- 2014/09/26
- 23:59

今日はこの写真から。出典:The National写っているのは、アラブ首長国連邦(UAE)空軍のマリヤム・マンスーリー少佐。戦闘機のパイロットです。なお、Tne National はUAEアブダビの英字紙です。9月23日(現地時間)の米国の対シリア空爆に参加したUAEは、「女性パイロットがミッションを率いた」と欧米メディアに流して、情報戦・イメージ戦略に乗り出している。サウジも同様である。こちらは王子様パイロットを出してき...
【地図と解説】「イスラーム国」の押さえる油田と密輸ルート
- 2014/09/25
- 23:45

9月24日のシリア空爆の主要なターゲットの一つは、シリア東部の製油施設だったようです。"U.S. and Arab aircraft attack oil refineries seized by Islamic State in Syria," The Washington Post, Sep 24, 2014.【それ以外の主要なターゲットには、シリア北部トルコ国境付近のクルド人の拠点コバーニー(アラビア語名アイン・アラブ)に迫るイスラーム国の攻勢の阻止だったようですが、これについては別の機会に】「イスラーム国...
シリア空爆への続報と同盟国のホンネ
- 2014/09/24
- 23:59

9月23日に開始された米国のシリア空爆についての続報などを急ぎとりまとめ。時間がたつと忘れてしまうと思うので、タイムカプセルのようにリンクを張っておこう。空爆はすでに二日目に入っているが、それほど特筆すべき事実は出てきていない。むしろ初日に一斉に出てきた各種論評で出てきた論点を消化する必要がある。初日の空爆の詳細についての記事をいくつか挙げておこう。初日の空爆についての米軍や大統領の発表で、(1)湾...
米国のシリア空爆への第一報と論調
- 2014/09/23
- 23:59

9月23日早朝(現地時間朝だいたい5時ごろとみられる)に、アメリカ主導で、湾岸産油国とヨルダンが形式的に加わった多国籍軍が、シリア北部・東部への空爆を開始した。9月10日のオバマ大統領の演説で明らかにされていた、「イスラーム国」への空爆をイラクからシリアに拡大するという決定を実行に移した形だ。空爆が行われた地点は次のようなものと見られている。出典:Syria Direct米国や西欧のテレビや新聞はこの話題で持ちきり...
【地図と解説】トルコから見るパイプラインの国際政治(1)ウクライナ紛争とイラク・シリア紛争で高まるトルコの重要性
- 2014/09/21
- 23:59

昨日は「石油の密輸」について、イラクやシリアを中心に、トルコやイランへのルート、運搬方法について書いてみた。どこで誰がどんなふうに密輸していくら儲けている、というだけの話としてこの話題を終わらせてしまうのはもったいない。こういった特殊な政治状況下での密輸の話は、より大きな、資源の産出と流通をめぐる国際政治を、地政学的に見ていく際の、周辺部のやや例外的な事象として位置づけると意味が出てくる。資源の産...
NHK「深読み」の後記(3)石油の密輸ってどうやるの
- 2014/09/20
- 23:59
本日の「NHK 週刊ニュース深読み」の後記(3)。これでおしまい。「イスラーム国」の資金はどうなっているの?という話で、当初は「サウジアラビアなどの裕福な個人が喜捨をして支援したので資金が潤沢だ」という話が多かった。そうであれば、サウジアラビア政府などがもっと締め付ければ資金は枯渇するとも考えられる。また、サウジ何やってるんだ、という批判にも結び付く。しかしこれはかなり昔の話で、シリアでアサド政権...
NHK「深読み」の後記(2)モースルの総領事館員らトルコの人質が全員解放された
- 2014/09/20
- 23:10
土曜日朝の「NHK 週刊ニュース深読み」で話していたことの続報(2)。対「イスラーム国」で周辺諸国の足並みがそろわない理由として、トルコについては「イスラーム国のモースル制圧の際に、トルコ総領事館員ら49人を人質に取ったままである」点が常岡さんより言及されていましたが、ちょうどこの日、現地トルコの時間で早朝、人質が全員解放されたようです。これはかなり大きなニュースです。"Turkey says hostages held b...
NHK「深読み」の後記(1)チェチェン紛争のグローバル・ジハードへの影響はもっと知られていい
- 2014/09/20
- 17:23
今朝のNHK総合「週刊ニュース深読み」に出演しました。ご意見・ご感想募集だそうです。ご一緒したジャーナリストの常岡浩介さんは、チェチェンの独立闘争ジハードを取材した経験から、現在シリアに流入しているチェチェン系のジハード戦士(ムジャーヒディーン)のつながりを持ち、その結果ヌスラ戦線や「イスラーム国」の内部を垣間見ることができる数少ない日本人ジャーナリストです。チェチェン系のジハード戦士は、ヨルダン...
「イスラーム国」の動員と組織化の「自発性」について(昔の講演がネット上にあります)
- 2014/09/19
- 14:25

週末から週明け早々の秋分の日にかけて、東京・京都を二往復するスケジュールになってしまい、「飛び石連休」を逆方向に飛ぶ(?)生活になっている。落ち着いて机に向かってブログに解説を載せている時間もないので、昔行なった講演を引っ張り出してみる。「イスラーム国」をめぐる現在の議論につながる関心をずっと持っていたんだなあ、と自分のことを自分で再確認。いや、日々の仰天するような変化に対応するのに追われて軸とな...
【テレビ出演】20日土曜日の朝8時15分からNHK総合「週刊ニュース深読み」で解説予定
- 2014/09/18
- 19:29
土曜日の朝にテレビ出演予定です。NHK総合の「週刊ニュース深読み」(8時15分~9時28分)私の解説部分は8時45分ごろからの「深読みコーナー」。テーマは「新たなテロの脅威? “イスラム国”勢力拡大のワケ(仮)」だそうです。番組恒例の「立体模型」を、「イスラーム国」については一体どうやって作るのか・・・期待しましょう。ハリボテ部分は私の監修を受けたものではありませんので、もし万が一、政治的に正しくない表象が...
【テレビ出演】本日16日テレビ朝日「報道ステーション」にビデオでコメント予定
- 2014/09/16
- 20:31
本日9月16日夜9時54分からの、テレビ朝日の「報道ステーション」で、録画コメントが放映される予定です。イラクとシリアでの「イスラム国」への米国の対応がテーマです。...
トルコ政治の今後の展開は中東情勢の軸になる
- 2014/09/14
- 23:59

先月のトルコの大統領選挙について、選挙直前にNHKBS1の『国際報道2014』で行った解説の全文おこしがNHKのホームページに掲載されているようです。「世界が注視 トルコ「エルドアン大統領」誕生か」NHKBS1『国際報道2014』2014年8月8日(金)私の校閲は受けていない、つまりテレビでしゃべったところが言い間違いなども含めて全部載っているはずですが、しかし「てにおは」などは実際に喋ったものよりも過剰に口語...
【コメント】『毎日新聞』朝刊、米空爆シリア拡大について
- 2014/09/12
- 17:46
今朝の朝刊ではもう一つ、『毎日新聞』にコメントが載っています。忙しくて紙面を確認する暇もなく過ごし、夕方になってやっと羽田空港ラウンジで日経、毎日の寄稿・コメントを確認。オバマ米大統領:シリア空爆表明 池内恵・東大先端科学技術研究センター准教授(中東地域研究、イスラム政治思想)の話ネットでも公開されていたので、張り付けておきます。 ◇打倒は長期化 シリアでの空爆はイスラム国の逃げ場をなくすことが目...
【寄稿】日経新聞「経済教室」に掲載──中東の地政学的リスク
- 2014/09/12
- 17:41
本日の日経新聞の《経済教室》欄に寄稿しました。「強まる地政学リスク」という三回シリーズの三回目が私の担当でした。池内恵「民主化挫折 過激派に勢い──強まる地政学的リスク(下)」『日本経済新聞』2014年9月12日朝刊、29面...
【寄稿】本日のオバマの対イスラーム国でのシリア空爆許可演説について『フォーサイト』に事前に書いてあります
- 2014/09/11
- 10:55

日本時間今朝10時(米東部時間9月10日夜9時)から、オバマ大統領が対イスラーム国の戦略、特にシリアへ空爆の範囲を広げる件で、注目度の高い演説を行った。【一部分の映像】事前に内容は予想できていたので、今日未明のうちに『フォーサイト』に論評を出してあった。池内恵「オバマのシリア介入演説は米国と世界をどこに導くのか」『フォーサイト』2014年9月11日実際の演説はやはり予想通り。一方ではレトリックでもはや「ブッシ...
【寄稿】「イスラーム国」の衝撃──『中央公論』10月号
- 2014/09/09
- 23:56

イスタンブルから帰国して以来、あまりに忙しくて更新できないでいた。「中東の地政学的リスクの増大」についての関心が高まり、セミナーやレクチャーに駆け回っている。その間にも仰せつかっている各種報告書の執筆が相次ぎ、論文や著書の執筆が滞っている。危機的である。それでも一つ成果が出た。9月10日発売の『中央公論』10月号に、イラクとシリアでの「イスラーム国」の伸長の背景と意味を論じた、長めの論稿を寄稿しました...