『日本経済新聞』の《経済教室》欄で「イスラーム国」の背景とそのメカニズムを解説しました
- 2015/01/30
- 22:59
『日本経済新聞』の1月27日付《経済教室》欄に、「イスラーム国」の背後にあるグローバル・ジハードの理念と組織原理を、概説してあります。『イスラーム国の衝撃』の主要部分のまとめでもありますが、問題は「イスラーム教」の教義解釈に基づく「ジハード主義」のイデオロギーの問題であること、呼応や模倣によって連鎖する組織原理への対処が困難さを抱えること、今後広がるとすれば各地で自発的に名乗りを上げる呼応・模倣組...
コメント集(1):「イスラーム国」による日本人人質殺害・脅迫事件
- 2015/01/30
- 21:31
1月20日に発生した日本人人質殺害脅迫事件に関しては、ブログとフェイスブックを中心に発信しており、テレビ・ラジオには原則として一切出演せず、ビデオ収録によるコメントも許可していません。 新聞・雑誌等には、こちらの仕事の合間に偶然タイミングよく連絡があった場合や、あまりに忙しい時に電話がかかったので帰って断る気力がなくコメントを出した場合など、いくつかコメントが出ています。 また、フェイスブックで...
人質殺害脅迫の犯行グループが期限を24時間に:生じうる交渉の結果を比較する
- 2015/01/28
- 02:24
「イスラーム国」より、24時間以内の後藤さんの殺害を脅迫し、サージダ・リーシャーウィーの釈放を要求する声明が出ました。交渉の内側について私は情報を持ちません。交渉論的に、生じうる結果を場合分けし、それぞれの政治的帰結を考えてみました。1月28日午前2時の段階でフェイスブックに投稿しておいたポスト(https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi/posts/10202573053326596)を再録しておきます。(1)非常に悪い...
今回だけなぜ静止画像なのか?
- 2015/01/25
- 06:45
この記事でも触れられているように、これまではJihadi Johnが出てきた時には、必ず動画で殺害そのものを描く映像があった。しかし今回は静止画像と被せられた音声のみである。http://www.reuters.com/article/2015/01/24/us-mideast-crisis-japan-usa-idUSKBN0KX0MN20150124何よりも、Jihadi Johnが全く出てこない。背景もいつもの荒野と青空ではなくただの白無地である。しかも後藤さんは遺体の写真を掲げていて、実際の遺体は写...
「イスラーム国」による日本人人質殺害と新たな要求について
- 2015/01/25
- 05:49
昨日午後11時過ぎに公開された日本人人質の一名の殺害声明については、まず午前12時30分ごろまでの情報をまとめておきましたが、その後は、取り急ぎ参考情報をフェイスブック(https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi)から発信しました。下記に、ツイート的に断続的に発信したポストを再録しておきます。1月25日午前1時〜4時30分ごろにかけての断続的にメモとして記しておいたものです。(1) 非常に痛ましい情...
「イスラーム国」による人質殺害声明の基礎情報:さらに情報があればフェイスブックで発信します
- 2015/01/25
- 00:40
午後11時過ぎ(日本時間)にツイッター上に公開された映像の中で、シリアで「イスラーム国」によって拘束されていた二人の日本人人質のうち、湯川遥菜さんの殺害が発表されました。私はこの映像の真偽を判断する能力を持ちません。テロリズム調査会社のSiTEが映像を分析して真正と判断している模様です。SiTEはこれまでに、高い精度の分析能力を示してきました。(SiTEのリリースには繋がりにくくなっています)https://news.sit...
『イスラーム国の衝撃』の主要書店での在庫状況を調べてみました
- 2015/01/24
- 21:44
【『イスラーム国の衝撃』のサポートページ(http://chutoislam.blog.fc2.com/blog-category-21.html)】「サポートページ」を立ち上げてみたのだが、そもそも「書店に行っても置いていなかった」「インターネット書店では品切れ」のため手に入らないという声がかなり届く。増刷がかかっており、1月28日に2刷、1月30日に3刷が流通するとのこと。もう少し待ってください。ただ、いくらなんでも初刷1万5000部が1日です...
『イスラーム国の衝撃』のイントロダクションと全体構成
- 2015/01/21
- 23:14
【『イスラーム国の衝撃』のサポートページのエントリ一覧(http://chutoislam.blog.fc2.com/blog-category-21.html)】『イスラーム国の衝撃』の目次を昨日公開しましたが、イントロダクション的な部分を今回は紹介しておきましょう。英語圏の学術書ですと、イントロダクションの章はホームページ上で公開してあることも多くあります。英語圏の論文・学術書の書き方は厳格(あるいはやや単調)で、イントロダクションで前提や仮説...
サポートページ開設しました〜『イスラーム国の衝撃』目次を公開
- 2015/01/20
- 21:14
本日、『イスラーム国の衝撃』が発売になりました。といっても数日前から店頭に出ていたので、すでに入手している方も多くいらっしゃるようです。「むすびに」で記しておいたように、このブログでは、『イスラーム国の衝撃』というカテゴリの、いわば「サポートページ」を設けて、この本を読んだ人が、新たに中東・イスラーム世界で生じてくる事象を、この本で得た基礎知識・認識枠組みを踏まえてどのように理解していけばいいのか...
「イスラーム国」による日本人人質殺害予告について:メディアの皆様へ
- 2015/01/20
- 20:55
本日、シリアの「イスラーム国」による日本人人質殺害予告に関して、多くのお問い合わせを頂いていますが、国外での学会発表から帰国した翌日でもあり、研究や授業や大学事務で日程が完全に詰まっていることから、多くの場合はお返事もできていません。本日は研究室で、授業の準備や締めくくり、膨大な文部事務作業、そして次の学術書のための最終段階の打ち合わせ等の重要日程をこなしており、その間にかかってきたメディアへの対...
『エコノミスト』の読書日記は、政治を決定づける「制度」について
- 2015/01/20
- 04:35
ニューオーリンズでの学会から帰国しました。大学事務の作業が膨大にあるので、当分身動きが取れません。帰宅して『イスラーム国の衝撃』を私自身も初めて手に取ってみました。「イスラーム国」について、1月におびただしい数の本が刊行されるようですが、それを「グローバル・ジハード」の一部として分析した本が本書だけであることは確実です。なぜならば、「グローバル・ジハード」は私が用いている分析概念だからです。「グロ...
当分フェイスブックで発信を続けます
- 2015/01/16
- 03:36
1月7日以降のイスラーム教とテロリズム、そしてそれと欧米との関係をめぐる、日本の言論状況に関与する私の見解は、当分フェイスブックで発信を続けます。公開設定のため、下記URLから誰でもアクセスできます。ただしコメントは「友達」か「友達の友達」しかできません。スパムや荒らしを防止するためです。https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchiこのブログであれ、フェイスブックでの発言であれ、全て公的な発言です。同時...
コメント『毎日新聞』1月10日付朝刊
- 2015/01/11
- 22:50
昨日1月10日の『毎日新聞』朝刊に掲載されたコメントをこのエントリの末尾に貼り付けておきます。1月9日付の『産経新聞』へのコメントと重なるところがありますが、『毎日』の方では、今後の展開を中期的な時間軸で捉え、「政教分離を明示的・意識的に受け入れる」層と「政教分離を拒否して過激化する」層が分化する可能性を指摘しています。もちろんその真ん中で迷う人が多数と思いますが、明確にこの分化が外からも内からも...
コメント『産経新聞』1月9日朝刊
- 2015/01/11
- 22:31
シャルリー・エブド紙襲撃事件について『産経新聞』1月9日朝刊に掲載されたコメントを下記に再録します。インターネット上では前日夜に公開されていたものです。なお、普通に読めばわかるように、私は移民を抑制しろなどとは言っていません。価値観の根本的な相違が露わにされると、移民の抑制論への支持は一層高まるだろうという予測を記しているだけです。すでにフランスにしてもイギリスにしても、中道右派と左派のいずれも移...
パリのテロは「イエメンの」アル=カーイダの広めたローン・ウルフ型ジハードの実践例
- 2015/01/10
- 19:42
1月7日のシャルリー・エブド紙襲撃殺害事件は、ゆるいつながりを持つ人物による警官殺害事件を惹起した。両方の犯人たちは、人質を取って別々の場所に立て籠もった(後者の犯人はユダヤ教徒向けスーパーを占拠して人質17人を取った)上で、1月9日、特殊部隊の突入と銃撃戦により死亡した。突入の経緯といった現地でしかわからないことについてはここでは論じない。重要なのは、すでに明らかになってきている背景や原因である...
仏テロ犯が「イエメンのアル=カーイダ」と称したという情報
- 2015/01/08
- 20:00
仏シャルリー・エブド紙へのテロ事件について、3人の襲撃犯のうち10代の一人が投降したようですが、主犯とみられる30代の二人(指名手配されているCherif Kouachi 32歳とSaid Kouachi 34歳)は逃走中のままです(CNNでこの兄弟のプロフィールをまとめています)。本日のエントリに加えてもう一点。犯人の背景についてはまだ確定的なことは言えませんが、一つ気になる情報は、銃撃の際に犯人のうち二人が自分は「イエメン...
コメント『毎日新聞』にシャルリー・エブド紙へのテロについて
- 2015/01/08
- 17:16
フランス・パリで1月7日午前11時半ごろ(日本時間午後7時半ごろ)、週刊紙『シャルリー・エブド』の編集部に複数の犯人が侵入し少なくとも12人を殺害しました。この件について、昨夜10時の段階での情報に基づくコメントが、今朝の『毎日新聞』の国際面に掲載されています。10時半に最終的なコメント文面をまとめていましたので、おそらく最終版のあたりにならないと載っていないと思います。手元の第14版には掲載され...
ユーラシア・グループの2015年リスク予測も発表
- 2015/01/06
- 11:50
ユーラシア・グループが5日に今年の10大リスク予測を発表しましたね。私も参加させてもらったPHP総研のグローバル・リスク予測(「2015年のグローバルリスク予測を公開」2014/12/20)と比較してみたいが、新年早々締め切りがどんどん来ていて切羽詰まっているので時間ありません。簡単な紹介はこれかな。「2015年最大のリスクは欧州政治 米調査会社予測 ロシアや「金融の兵器化」も上位」『日本経済新聞』(電子版)2015/1/5 ...
「イスラーム国」問題コメント4本(昨年の積み残し)
- 2015/01/05
- 17:12
昨年の仕事をまだやっている仕事初めかな。間に合いません。しかし昨年のものを積み残しを残しておくと気になるから早く終わらせたい。このブログで通例のメディア掲載情報も同じく、積み残しがあります。一瞬の隙をついて4つ記録しておきましょう。昨年10月6日に明らかになった「イスラーム国に日本人学生が!」問題で急激に高まった(もう引いた)メディア対応の記録。もうすぐ終わるからね、と自分に言い聞かせながら日々を...
『イスラーム国の衝撃』プレヴュー(1)目次と第1章
- 2015/01/04
- 11:09
文春新書で1月20日に出る『イスラーム国の衝撃』ですが、アマゾンなどの予約注文画面では目次が出ていないので、ここで公開。1 イスラーム国の衝撃2 イスラーム国の来歴3 蘇る「イラクのアル=カーイダ」4 「アラブの春」で開かれた戦線5 イラクとシリアに現れた聖域6 ジハード戦士の結集7 思想とシンボル−−−−メディア戦略8 中東秩序の行方むすびに文献リスト「1 イスラーム国の衝撃」では、2014年6月か...
新年あけましておめでとうございます
- 2015/01/01
- 16:33
新年あけましておめでとうございます。昨年は正月の松の内を過ぎたあたりに試験的にこのブログを開設してみましたが、予想外に1年間、ほとんど途切れずに続けることができました。変化の激しい中東・イスラーム世界の情勢分析と判断をリアルタイムに共有し、学術的知見・視点を社会に還元するための一つのツールとして、好意的に受け止め、活用してくださる方々が多くいることを、嬉しく思っております。今年もウェブ媒体の可能性...