
写真:かつて群馬を代表するコンビニが…(ローソン前橋南インター店)
コンビニ店、19年に初の減少 不採算店閉鎖にかじ@日経新聞2020/1/20より
日本フランチャイズチェーン協会(東京・港)が20日発表したコンビニエンスストア大手7社の2019年12月末の店舗数は5万5620店と、18年12月末に比べて123店減少した。年間の統計で店舗数が前年末実績を下回るのは、現在の方法で統計を取り始めた05年以来、初めて。新規出店で成長してきたコンビニのビジネスモデルは転機を迎えている。
さてこれまで拡大を続けてきたコンビニが初の減少に陥ったという記事が報道されました。統計を取り始めた2005年以来で初の減少と言う意味ではショッキングなニュースです。
コンビニエンスストア統計データ2019年12月度@一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会2020/1/20より
もう少し詳細なデータを見るために記事の元ソースである(一社)日本フランチャイズチェーン協会の12月のコンビニ統計を見ていきましょう。ちなみにこの統計は2019年12月の対前年比です。
重要な点は以下になると思います。
・セイコーマート、セブンイレブン、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、デイリーヤマザキ、ローソンの7つのチェーンのみ、例えば今ローソンに吸収された群馬のSAVE ONはローソンに吸収されるまでは統計対象外(ただし神奈川のスリーエフは協会正会員だったので対象内)
・店舗数0.2%減に加え、来店客数は0.6%減と減少幅は大きい(2018年12月はそれぞれ1.0%、2.3%増)
・ただし客単価は0.7%増だったため、売り上げ自体は0.1%増と増加傾向(2018年は0.9%、3.2%増)
まず重要なのはすべてのコンビニの統計でなく実質コンビニの上位7社のみの統計であり、かつて群馬県に広くチェーン展開し、存在感を示していたSAVE ONすら入っていない統計である事で実際はもっと早い段階で店舗数減少に入っていた可能性が高い事、その7社ですら来客数は0.6%減少と減少傾向にあり事、ただし客単価が0.7%増えたことで売り上げ自体は対前年比微増になっていることが見て取れます。
ただしすべての指標が2018年12月のものから悪化していて、特に来店客数が2.3%増→0.6%減、売り上げが3.2%増→0.1%増と大きく悪化しているのが見て取れます。

画像:コンビニ4天王の決算資料最弱は誰でしょう?
さて原因について書く前に、各社の決算資料を見てみましょう。
2020年2月期第3四半期決算説明会@株式会社セブン&アイ・ホールディングス2020/1/9
・売上:2.2%増、営業利益:7.0%増 ・本部コスト構造改革(不採算店 閉店加速、地代家賃 適正化、本部人員 適正化)
・アプリ販促の効果
・行動計画進捗(深夜休業、レジ接客 研修の充実、加盟店との 対話促進、新レイアウト、エシカル プロジェクト)
経営的には順調だがスマホアプリはあっても、7Payの失敗から電子マネー関連に関しては特に記載がない事、そしてセルフレジに関する記載がないのが気にかかるところ、また店舗運営のブラック化に対し深夜休業に関する記載があり無対策ではないことをアピールしている。また不採算店の閉店も加速させる。
個人投資家様向け会社説明会 @株式会社ファミリーマート 2019/11/22
・人手不足・コスト増への対応、店舗運営の効率化(新型発注端末 、キャッシュレス、セルフレジ導入拡大 、新型引出棚導入拡大 、システム改善 )
・時短営業実験
・廃棄ロス削減
・加盟店向け制度改善・コミュニケーション強化 (店長ヘルプ制度充実、健康診断支援サービスの無償化、加盟者とチェーン本部との対話の充実 )
・ 商品力の強化
・店舗基盤の強化 (ビルドアンドスクラップ及び 改装推進、三大都市圏出店強化 )
・地域密着の推進
・本部コストの削減
・顧客基盤の確立(自社バーコード決済サービス開始 、FMスマホアプリ刷新 )
・ポイント・決済のオープン化 (ポイントオープン戦略の推進 、バーコード決済の推進 )
・新サービス機能の拡充 (金融事業 、広告・マーケティング事業 )
セブンに比べて電子マネーやキャッシュレス、ポイントに積極的なのが印象的、店舗運営支援では時短営業実験、ちなみに店長ヘルプや人材派遣は他社でもやっている。金融事業を明確に出しているのは唯一だが当然この4社ではどこも取り組んでいる。不採算店舗問題に対し3大都市圏出店強化と書いているのもここだけ
株式会社 ローソン 2019年度上期決算説明会@2019/10/10
・営業利益:6.7%増
・商品力強化
・店舗オペレーション改善(11月よりセルフレジ活用開始)
・人手不足対策(ローソンスタッフ (2016年設立) 派遣事業、自動釣銭機付 POSレジ、ローソン スマホレジ、新型ストアコン ピュータ入替、セルフレジ、フライドフーズ セルフ什器、新型カウンター など、深夜無人店 実験)
・低収益店舗の整理
・複数店経営推奨の促進
・24時間営業問題
・元日休業実験
・食品ロス削減・プラ削減の取り組み
店舗運営の問題に対して元日営業実験とでかでかと書いているのが印象深い、セルフレジ導入に加え深夜無人店実験と書いているのはここだけです。うまくいくのでしょうか?
2020年2月期 第3四半期決算短信 @ミニストップ
・営業総収入:6.8%減、営業利益:赤字転換
・今期は第1四半期に不採算店舗を中心に193店舗を閉店
・キャッシュレス決済の取り扱い会社の拡大と利用促進に積極的に取り組み、お客さまの利便性 向上、店舗のオペレーション削減に努めてまいりました
・上期より開催していた加盟店座談会は、12月に予定していた全国27ヶ所を終了しました
営業赤字で決算短信しかないという意味で最弱はここか、不採算店舗閉鎖とキャッシュレス拡大によってオペレーション拡大を狙うというのは他社と共通です。

まとめると上の構図になるのではと思います。軸となるのは「人手不足」と「電子マネー」、既存店舗に対しては緊急対策として本部が派遣などでフォローをしたり、時短営業を認める。また電子マネー導入を機にセルフレジや深夜無人店舗などの省力化を行う。収益に関しては電子マネー関連の金融で鞘をとる事で拡大する…と言ったところでしょうか?そしてその投資に耐えられない不採算店舗は閉鎖し戦線を縮小するというのが大まかな流れだと思います。
TSUTAYAが2019年に100店舗閉店したこと@WASTE OF POPS 80s-90s2019/12/10より
久々にTSUTAYAの話。というかおよそ今年の開店閉店の情報が出切った感がありますので、2019年のまとめとして。 2017年は70店以上、2018年は90店以上が閉店して、これヤバいよという話を以前よりちょいちょいしていたわけですが、2019年は現状で100店舗以上の閉店が確定しています。~中略~
フランチャイジーと話をしつつ、敢えて漸減させていく方針であることは間違いなく。新店舗もそれなりにオープンしていますが、その大部分はカフェ等を併設しつつのTSUTAYA BOOKSTOREの書籍専門店。もう音楽や映画を売ったり貸したりする気はほぼありません。
他の業界はどうでしょうか?TSUTAYAの閉店情報で有名なblog[WASTE OF POPS 80s-90s]では現状のTSUTAYAに関してこんなことを書いています。TSUTAYAはコンビニに先行して縮小指向に入っていますが残った店舗に関してはカフェ併設など付加価値を高める方向に向かっているように感じます。コンビニの場合、人手不足による現場の疲弊から新機軸は出しづらいですが、今後現場が落ち着いてきたらどの様な新機軸を出せるのかと言うのが注目されるところです。
いかがだったでしょうか?コンビニが店舗減少に転じた直接のきっかけは多分消費税増税と個人的には考えています。キャッシュレス決済のポイントがあってなおその影響は大きかったわけですが、一方でその結果、セルフレジの様な省力化の仕組みの導入が進むのも間違いないと思います。その上で次に出てくるのはその投資に耐えうる店舗の選別でしょうか?
これまで消費者は店舗を選ぶ側でしたが今度はある意味で店舗が儲かるお客を選ぶ時代になるかもしれません。