さて先日こんなことを書いたのですが、さすがに欧米のやり方ではこれ以上出生率は伸びない、だから現状を把握しろと言うのはさすがに無責任だなと考えたのとせっかく各都道府県の出生率を調べたので、地域ごとの出生率を基に少し傾向を見ていきましょう。欧米と日本の出生率をフェアに比較してみるより
更に日本は欧米各国に比べて移民の受け入れをほとんど行っていない事を考えると実はアメリカ・スウェーデン・フランスにはやや劣るものの欧米に比べてそん色ない出生率とみても実は妥当ではないかと思います。
逆に言うとこれは欧米をまねても少子化を解決できない事も意味するわけで、それ故にまず現状をきちんと見ていくことが重要と考えますが如何でしょうか?
さてここで地域の区分けを行います。
北海道:北海道
東北:青森・岩手・宮城・福島・秋田・山形
関東:東京・神奈川・千葉・埼玉・群馬・栃木・茨城
甲信越:山梨・長野・新潟
北陸:石川・富山・福井
東海:愛知・静岡・岐阜・三重
近畿:大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山
中国:広島・岡山・山口・鳥取・島根
四国:香川・愛媛・徳島・高知
九州:福岡・熊本・鹿児島・長崎・佐賀・大分・宮崎
沖縄:沖縄
さてここで各地域の出生率の指標算出方法に関するおさらいです。ここでは簡易的なやり方ですが以下の方法で各地域の出生率(他の指標も同様)の数値を算出しています。
Σ(各都道府県の人口x出生率(他の指標))/Σ(各都道府県の人口)
さて各地域の出生率を見ていきましょう。ちなみに上から出生率の低い順に表示され更に欧米と日本の出生率をフェアに比較してみるで算出した地方圏のみの数値、地方圏+仙台・札幌の数値及び全国の数値も参考までに出しています。
都道府県 | 人口(千人) | 出生率 |
北海道 | 5384 | 1.31 |
関東 | 42992 | 1.36 |
関西 | 20728 | 1.43 |
東北 | 9047 | 1.45 |
全国 | 1.45 | |
甲信越 | 5240 | 1.51 |
地方圏+札幌仙台 | 1.53 | |
四国 | 3847 | 1.55 |
北陸 | 3008 | 1.55 |
東海 | 15034 | 1.56 |
地方圏のみ | 1.57 | |
中国 | 7440 | 1.61 |
九州 | 13021 | 1.61 |
沖縄 | 1434 | 1.96 |
ちなみに地域ごとにまとめたのは都道府県毎だとさすがに分析するのには多すぎ、傾向を考えるのには例外が起こりやすかったからです。取りあえずまとめてみて感じたのは西高東低、全国平均を下回ったのは4地域うち北海道・関東・東北の3地域は東日本、唯一西日本から入った関西に関しては東京に次ぐ大都市圏と考えるとむしろ全国平均に遜色ないのは健闘という事すら見えます。そして地方圏のみの1.57を上回り高出生率と言えるのは中国・九州・沖縄の3地域で西日本で独占しています。そしてそれに関東・関西に次ぐ第3の大都市圏ながら地方圏のみの1.57に肉薄する1.56をたたき出した東海地域が日本の出生率を考える上で参考にする地域と言えるでしょう。
昭和政令市 | 平成政令市 | 50万都市 | 40万都市 | 新幹線直通大都市(中心都市から) | |
東北 | 仙台 | 東京 | |||
中国 | 広島 | 岡山 | 倉敷・福山 | 東京・大阪・名古屋・福岡 | |
九州 | 福岡・北九州 | 熊本 | 鹿児島 | 大分・長崎 | 東京・大阪・名古屋・広島 |
さてこの差はどこから出てきたのでしょうか?筆者は少子化対策の専門家ではないので少子化施策の差など議論はできませんし、そもそもこの大雑把な地域区分けでは各自治体の少子化対策の差は決定的な要素となりづらいと思われるので、まず地域性を少し考えてみます。ここで東北・中国・九州の3地域を比較してみます。
個人的にぱっと思い浮かんだのは東日本と西日本の大都市の分布状況、東北地方は現在各県庁市に東京から新幹線直通列車が乗り入れ最大都市東京へのアクセスは非常に良い反面、近場の大都市は東京と仙台しかないともいえます。
一方中国・九州地方は新幹線が通っていない県が多く、最大都市東京へのアクセスは悪い反面、大阪・名古屋をはじめ東京以外の大都市にも目が向きやすく、地域内にも代表都市福岡・広島の他に北九州・岡山・熊本・鹿児島をはじめとする有力都市が多い特徴があります。また表にはあげていませんが海外にも目を向ければソウル・釜山に代表される韓国の大都市はこの地域からすると東京より近い大都市と言えます。言うなれば最大都市東京へのアクセスは悪い反面大阪・名古屋・広島・福岡・ソウル・釜山等多様な大都市に囲まれた地域ともいえます。
都道府県 | 人口 | 出生率 | |
青森県 | 1373 | 1.43 | 1963.39 |
岩手県 | 1280 | 1.49 | 1907.20 |
宮城県 | 2334 | 1.36 | 3174.24 |
秋田県 | 1023 | 1.35 | 1381.05 |
山形県 | 1123 | 1.48 | 1662.04 |
福島県 | 1914 | 1.58 | 3024.12 |
東北合計 | 9047 | 1.45 | 13112.04 |
そしてその視点で出生率の低い東北地方の出生率を見ていくと面白い事に気づきます。東北地方は全国平均を下回る低い出生率なのですが、唯一福島県が地方の平均である1.57を上回っています。福島県は浜通りのいわき市、中通の郡山市の人口が30万人を超え、県庁所在地の福島市も30万人に近い人口を誇る等東北地方の中では比較的大きい都市が多いのに加え会津地方を中心に平成政令市である新潟市への距離が近い事で西日本に近い立地にある事がうかがえます。対照的なのは秋田県で秋田新幹線の開業で東京へのアクセスは良くなったものの既存の東京へのアクセスルートである山形・福島経由や庄内・新潟経由のルートが弱体化したこともあって、秋田市・仙台市・東京の3都市以外の都市の存在感が低く西日本と対照的な地域となっているのが大きいと思われます。
都道府県 | 人口 | 出生率 | |
新潟県 | 2305 | 1.44 | 3319.20 |
山梨県 | 835 | 1.51 | 1260.85 |
長野県 | 2100 | 1.58 | 3318.00 |
甲信越合計 | 5240 | 1.51 | 7898.05 |
もう1か所面白いのは甲信越地方で東京以外の大都市の存在が見えづらい新潟市が最も低く、続くのが平成政令市の静岡市が比較的近い山梨県、一番出生率が高いのが東京以外に名古屋の存在感が大きい長野県が最も出生率が高いという西日本で見られた状況を裏付けているように見えます。
こうしてみると出生率を上げるために必要な事として重要なのはアクセスが容易な大都市を複数持つ事である事であると言えるのではないでしょうか?
そして現状の日本で出生率が非常に低いのは大都市部を除くと東北・北海道である事を考えると実は北海道新幹線が果たす役割が大きくなってくるのではないでしょうか?北海道道央・道南から仙台と言う大都市の距離感を縮め、北東北の青森・岩手・秋田から札幌と言う大都市を身近にする事はこれらの地域の人々の意識をきっと変え出生率を上げていくのではないでしょうか?またもう1つ考えなくてはならないのは東北日本海側及び日本海~太平洋の交通の改善で新潟から南東北にとって仙台・東京に続く大都市として新潟を意識するのはこれも重要なのではないでしょうか?
多分誰も考えたこともない少子化対策…と言うよりも与太の類ですが皆さん如何でしょうか?