2018年08月

かぐや姫のたそがれから学ぶべき事

大塚家具、身売りへ 提携先のTKP軸に最終調整@朝日新聞2018/8/4より
経営不振が続く大塚家具が自力での再建が困難な状況に陥り、身売り交渉を進めていることがわかった。昨年11月に資本・業務提携した第3位株主の貸し会議室大手、ティーケーピー(TKP)が増資を引き受け、経営権を握る方向で最終調整に入った。今月中旬までに買い手企業を決める方針だ。取引銀行は家電量販大手ヨドバシカメラによる子会社化を提案しており、交渉の行方には流動的な面も残る。
本日の一部報道について@大塚家具2018/8/4

 さて3年前に経営権を巡り壮絶な親子喧嘩を繰り広げた大塚家具ですが、この3年間経営面で低迷が続き、とうとう企業身売りが囁かれ始めました。正式なコメントとしては何も公表する前の報道でも有る為当然否定していますがこういった事が憶測での報道が出てくること自体、その低迷ぶりが見て取れます。

親から見捨てられたかぐや姫は家具屋を救えるか~大塚家具問題に思う~
かぐや姫は新しい青い海を見つけられるのか

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画像&表:大塚家具売上&営業利益推移(業績ハイライト@大塚家具より作成)
 売上 従業員数 営業利益
201356230 1749 843
201455501-1.3%17490.0%-402
2015580044.5%1744-0.3%437
201646307-20.2%1662-4.7%-4597
201741079-11.3%1489-10.4%-5136

 実際決算の数字を見ると惨憺たる有様です。経営権を巡る親子喧嘩が注目され、お詫びセールで売り上げを伸ばした2015年度こそ一定の数字が出ていますが、2016年度に売上20%減かつ45億円もの赤字を計上すると翌2017年も売上11%減、赤字は50億円を超えました。ちなみに2018年度も第一四半期の決算を見ると売上は10%以上もの減少、損失額は昨年より改善されたものの14億円と下げ止まる傾向すら見いだせない状況にあります。更に売上が20%減った2016年度以降従業員数も大きく減っています。リストラの話は聞きませんから久美子社長体制の大塚家具に見切りをつけた従業員が流出したとみてよいのではと思います。

ootuka2018_2

年度大塚家具ニトリ
2013100.0 100.0
201498.7 107.7
2015103.2 118.2
201682.4 132.3
201773.1 147.6
図・表:大塚家具とニトリの売上比較(業績ハイライト@大塚家具業績・収益性の推移@ニトリホールディングスより作成)

 しかし、人口の増えているアメリカですら小売り崩壊と言われていて、人口は減っている、若い世代の経済力が停滞している、家具付き賃貸が人気の日本ではそもそも家具の小売りそのものが衰退業種だから仕方ないのではと言う意見も有りそうですが、良く比較対象として駆り出されるニトリの売り上げと比較するとそうとはいえないと感じます。2013年度から2017年度にかけて大塚家具が売上を3割近く減らしているのに対し、ニトリは実に5割近く売り上げを増加させています。売上の規模自体はニトリが5~10倍大きい事を考えると大塚家具が売上を伸ばす余地は十分あったと言えます。

ニトリ
画像:ニトリ2018年第一4半期売上(赤囲い、赤字筆者追記 ニトリ第1四半期 決算説明会資料 より作成)

 そしてニトリと大塚家具、どこで差がついたのでしょうか?ニトリの決算説明会資料から売上高のデータを見てみると、通販・法人を中心とした店舗外の売上、また地域では海外が成長をリードしているのがわかります。当然国内店舗での売り上げも負けないくらい伸びているのですが「国内店舗=日本人消費者以外」の顧客を積極的に取り込むことを成長のエンジンにしている事が見て取れます

トップメッセージ@大塚家具より
近年、市場における消費者のニーズは変化しています。かつてのライフステージ主導型の「まとめ買い」に代わり、ライフスタイル主導型の「単品買い」が主流になったことインターネットの普及により店頭において極めて豊富な商品を展示する品揃え価値が低下したこと、アクセスの良い立地に競合店舗が増加したことなどにより、専門店・小型店による多店舗展開の重要性が増しています。~中略~
このような消費者ニーズの変化を背景に、当社は、「専門店・小型店による多店舗展開」「プロフェッショナルによる提案サービス」「商品とサービスのチャネル連携強化」「購入だけではない、新しい選択肢のご提供」の4つを柱に取り組んでまいります。
 一方の大塚家具は決算資料が今一つだったのでトップメッセージを見て見ます。一見もっともらしく見えますが、海外の市場や法人・通販など「国内店舗=日本人消費者以外」の顧客の存在は限りなく薄く、縮小傾向の国内の消費者と心中するようにすら見えます

トップメッセージ@大塚家具より
また、店舗規模の適正化により生じた余剰面積部分は、11月に業務・資本提携を締結した株式会社ティーケーピー(以下、「TKP」)の運営よるイベントスペース・貸会議室として活用してまいります。あわせて、TKPの創出する様々な空間への当社商品の供給も行ってまいります。
トップメッセージ@TKPより
当社は企業向けの空間シェアリングビジネスの先駆けとして2005年に創業し、不動産オーナーから遊休不動産もしくは稼働率の低い不動産を借り受け、時間貸しの会議室・宴会場としてリニューアルし、法人顧客を中心に提供してまいりました。以来、独自のインフラネットワークを構築し、5つのグレードをもって全国展開を行い、空間プロデュースのプロフェッショナルとして企業の方々の会議室・バンケット需要にお応えしております。2018年7月現在において、当社が運営する総会議室数は世界7都市を含めで2,026室となっております。
 そして大塚家具にとっての白馬の騎士と目されているTKPとの関係を見ると、更に困惑してしまいます。確かに宴会場や貸し会議室で家具の需要は無いとは思いませんが、リストラした床を貸し会議室として活用すると言っても、そもそもB/Sを見る限り、店舗の多くは賃貸物件と推測され、そもそも自社保有の不動産でない以上、どこまで効果があるかと言うのは不明ですし、そもそも家具のプロたちがきちんとした品質の家具を売る家具屋の空きスペースと素人大家さんの遊休不動産と同じ扱いとしていると考えるとやるせない感じがしてしまいます
 個人的な雑感を言えば、正直な所仮にTKPに救済合併してもらっても家具屋さんとしての大塚家具の再生につながるかは未知数の様な気がします。

大塚久美子社長のたくましさに脱帽大西 宏のマーケティング・エッセンスより
「若き老害」を自認される常見陽平氏が、なにが「大感謝」フェアだ、「大謝罪」フェアであるべきだろうとお怒りですが、TVのニュースであれだけ取り上げられ、しかも詳しくセール内容まで報道されるとは、見事に報道番組をジャックし、大塚家具の宣伝媒体化した大塚久美子社長のたくましさに恐れいります。
大塚家具、お家騒動を逆手に業績回復させた大塚久美子社長の立ち回り@HARBOR BUSINESS Online2015/8/6より
 経営権を巡る親子対立でメディアの注目を集めていた大塚家具が7月29日、6月の中間決算を発表し当初の業績予想を上方修正したと発表した。~中略~
 この好調の要因となったのは、“お家騒動”が一段落した後に大塚久美子社長のもと実施した「大感謝フェア」と銘打たれた”お詫びセール”だ。~中略~
 また、「父がすみません……」、「けんかしない!」などというセリフも出てくる騒動を逆手に取ったCMも各メディアで話題になるなど、騒動を今度は逆手に取ったプロモーションを行うなどネガティブな注目度ながら獲得したメディアの関心をポジティブなものへと変える戦略も功を奏しているようだ。
 さて最後にもしこの騒動でもし学ぶべきものがあるとしたら何でしょうか?個人的には勘違いされそうですが「大塚久美子氏の様なある意味アイドル女性社長が経営している会社に対して個別株投資や就職など一点集中的な投資をしてはいけない」という事です。
 これは大塚久美子氏の様な女性社長が無能と言いたいわけでも、人がついてこないと言いたいわけでもなく一番大きな理由は「実力に対して過大な評価をされてしまう」事にあります。上は親子喧嘩が話題になった2015年頃言われていた事、実際メディアで注目されていたのを逆手にとってアピールする手法そのものは見事かもしれませんが実際真面目に大塚家具のビジネスを財務諸表などを見つつ考えると様々な問題があり、それを克服していくかと言った話は多くはなかったような気がします。そしてこういった言説に乗って株を買ったり就職した人は間違いなく後悔しているような気がします。
 大塚久美子社長にとって厳しい事ばかり書いてしまいましたが今日はこの辺で。


 

人気記事ランキング201807

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写真:パチンコ屋と言うよりもいきなりステーキの写真かもしれない

 さて7月のランキングです。

1位,無敵の人とパチンコ屋
2位,取り残された女性たちのまち
3位,幸色のワンルーム
4位,平成の終わりに考える外伝~女性に甘く残酷な社会が終わるとき~
5位,メディアの緩やかな自殺~幸色のワンルームに思う2~

 さて2記事でワンセットではないですが最初に書いた記事に追加した記事と言うパターンのタイプの記事が2パターン4記事入りました。
 その中で1位になったのは最近凄惨な殺人事件が多かったためクローズアップされた無敵の人について書いた無敵の人とパチンコ屋でした。ちなみにこれは続編ではないですが90年代日本を震撼させたオウム事件について主要人物の死刑と言うタイミングで書いたオウム問題の区切りに思う・・・が7位に入っています。この2つの記事を書いて思ったのは前者は主に2000年以降、後者は90年代に「俗世間に見切りをつけたと思しき人達による理不尽な殺人」と言う共通項で語られるのですが、実はロスジェネと言う不名誉な言葉で語られる団塊ジュニアが殆ど関わっていないと言う共通項を実感しました。何故そうなったのかと言うのは当事者としては一度考察してみたいところです。
 続いて2位には,取り残された女性たちのまち、4位には,平成の終わりに考える外伝~女性に甘く残酷な社会が終わるとき~が入ったのですがこういった続編を書く際に結構多いのは、面白そうなデータや考えが浮かんだと言うパターンなのですが平成の終わりに考える外伝~女性に甘く残酷な社会が終わるとき~に関しては以下の基準だったりします。
40歳以上(60歳未満)の独身の方で昨年あるいは過去3年の平均で
 ・収入→額面年収200万円未満
 ・資産→貯金+有価証券(株・投信等)100万円未満
 ・収支→貯蓄に回せている金額が額面年収の5%未満
 ・経済的な自立性→実家パラサイトで納めている生活費が毎月3万円未満
 の4つの条件のうち2つを満たす
 元々ベースになったのは「40歳で一度も資産100万円を超えた事が無いのはやばいのでは」みたいなところからここまで膨らませてみたのですが、我ながらうまくまとまったかなと思いますが如何でしょうか?

 そして3位,幸色のワンルームと5位,メディアの緩やかな自殺~幸色のワンルームに思う2~のコンビも仲良くランクイン、メディアの緩やかな自殺~幸色のワンルームに思う2~に関しては博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2018」時系列分析よりと言う面白いデータがあったのでそれをベースに自分なりに2010年代のメディアに関する分析らしきことをしてみました。その結論は言ってみればここ2~3年特に顕著ですが、現役世代の男性や若い女性、彼らを魅了するコンテンツを作る作り手たちからTVがどんどん見切りをつけられていると言う身もふたもない状況でもし次の不況が来たら新聞に続きNHKの解約も相次ぐのではと感じます。

ソニーが遂にテレビが映らない新型BRAVIAを発表!ネットからは称賛の声があがる@ついラン2018/3/27

 特に最近、ソニーの業務用ディスプレイの新製品の発表があった際に「ソニーがチューナーレスのテレビを売り出した」と話題になったのはその前兆の様な気がします。

 さていかがだったでしょうか?今月も当blogをよろしくお願いします。


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