2021年10月の朝日新聞から
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2828.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【14】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1935528999&owner_id=5019671
【索引】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-244.html
●朝日新聞から──番外編 よく目にする誤用の御三家
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-122.html
●朝日新聞から──ではない 世に誤用の種は尽きまじ
「7割以上が間違ったら、もうそれは誤用ではない」のか?
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-194.html
先月はメモが多かったので、久々に昔の書式で書いてみる。
【2021年10月】
21-10-01
2日
挑戦者は頼んでいたケーキ2品を速攻で平らげたとか。(朝刊16面)
囲碁の観戦記。春秋子記者。この「速攻で」を朝日新聞で見たのはおそらく初めてでは。もうどうにもならないだろうが……。
下記のエントリーはかなり古いので、再度確認する必要があるかも。イヤな予感しかしない。
【突然ですが問題です【日本語編65】Yahoo!知恵袋ver.──ソッコー】2014-10-30
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-11945907077.html
21-10-02
4日
只野に励まされた古見。今度は自分が万場木の悩みを聞き励ます。2人は友達になる。只野を基点にだんだんと個性を認める雰囲気がクラスにも生まれていく。(朝刊15面)
番組紹介欄。田島知樹記者。別に誤用ではないが、この文章を見て美しいと思う人はいないだろう。短文主義(単文主義でも一文一義主義でも結果的にはほぼ同じ)を貫くと、こういうみっともない文章になる。この場合は幸いなんことに、接続詞や指示語は使われていないが、一般には多用することになりがち。個人的にも、ネットに垂れ流す文章はこういう感じになることがある。落ち着いて見直せば、修正するのはむずかしくない。引用文の場合、最後の1文は長めなのでそのまま(これって「単文」だよな。妙な構造だな)。前の3文を適宜結合する。「聞き励ます」は「聞いて励ます」(「聞き、励ます」はなんかヘン)にするべきだと思うが、無視する。
【修正案1】
只野に励まされた古見は、今度は自分が万場木の悩みを聞き励ます。2人は友達になる。
【修正案2】
只野に励まされた古見。今度は自分が万場木の悩みを聞き励まし、2人は友達になる。
【修正案3】
只野に励まされた古見は、今度は自分が万場木の悩みを聞き励まし、2人は友達になる。
この場合は【修正案1】よりも、とくに短い「2人は友達になる」を結合した【修正案2】が自然だろう。3文まとめて【修正案3】にしてもおかしくない。ただ、その場合はいつものパターン通り、「古見は、」の読点はないほうがいい気もする。この場合は「あってもいい」かな。
21-10-03
19日
身近なテーマにも関わらず答えに迷うような問題が続々と登場する。
(朝刊19面)
番組紹介欄。無署名。当然の成り行きともうしましょうか、「にも関わらず」と書く●●が出てくる。新聞でも混乱しているんだから、一般の表記は推して後志、然別。
1462)【突然ですが問題です【日本語編229】──関わらず 拘(わ)らず 係わらず かかわらず 】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1945334017&owner_id=5019671
【関わらず 拘(わ)らず 係わらず かかわらず──「新常用漢字表」の話3 辞書】
http://ameblo.jp/kuroracco/entry-12072956192.html
21-10-04
19日
コロナの影響に関わらず、学生数に占める退学者比率が最も高かったのは歯学系で3・5%。
(朝刊23面)
増谷文生編集委員。↑は「番組紹介欄」だからしかたがないかも(こういうのも「差別」なのかな)。こちらは編集委員。ただ、このこの文の場合はかなり微妙。
前後の文脈(重言風)を考えると、「コロナの影響があったにもかかわらず」ではなく、「コロナの影響とは無関係に」という意味らしい。よくわからないので断定もしにくい。このあたりがわかりにくいのは、当方の読解力のせいなのか、文章の不明瞭さのせいなのか。
仮に後者なら「コロナの影響に関わらず」という表記が適切。でもこんなまぎらわしい表現を使う理由がわからない。「コロナの影響とは無関係に」「コロナの影響とは関係なく」あたりでよいのでは。
21-10-05
24日
そんな中、記者の椎名(杏)が、天海と共に危機感を募らせる常盤(松山ケンイチ)に接触してくる。
(朝刊20面)
番組紹介欄。無署名。これは単なるメモです。現状で何も問題はない。この場合、「天海と共に危機感を募らせる」のは常盤。もし「天海と共に危機感を募らせる」のが椎名なら、「天海と共に危機感を募らせる記者の椎名(杏)が、常盤(松山ケンイチ)に接触してくる」になる。実際には椎名も「危機感を募らせる」なんだけど、それを表現するには大手術が必要になる。下記ぐらい?
「そんな中、天海と共に危機感を募らせる記者の椎名(杏)が、やはり危機感をもつ常盤(松山ケンイチ)に接触してくる。」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15080805.html?unlock=1#continuehere
===========引用開始
(ひらく 日本の大学)コロナで休退学、つかみきれぬ実態 朝日新聞・河合塾共同調査
2021年10月19日 5時00分
アクリル板を挟んで、相談窓口にやってきた学生(手前)の話を聞く近畿大の職員ら=大阪府東大阪市、近畿大提供
コロナ禍の影響で昨年度に退学・休学した学生の数を、多くの大学が把握できていないとみられることが、朝日新聞と河合塾の共同調査でわかった。各学部にコロナを理由とする退学・休学者の数を尋ねたところ、退学者数を回答したのは3割弱、休学者数は4割弱にとどまった。有識者は、コロナ禍の影響を正確に記録するために、休退学の背景を丁寧に聞き取ることが重要だと指摘する。
共同調査「ひらく 日本の大学」は今年6〜8月、国公私立の775大学を対象に実施し、85%に当たる655大学が回答。今回の調査では初めて、各学部に対して「経済的困窮」「学生生活不適応」などの理由別に退学者と休学者の数を尋ねた。さらに、それぞれの理由に区分された退学・休学者のなかにコロナの影響による退学・休学者が何人いるかも尋ね、コロナの影響がどの系統の学部に強く出ているのか調べた。
5月に結果が発表された文部科学省調査では、全国の大学・短大の2020年度の退学・休学者数は前年度比約2万1千人減の約12万5千人。コロナを理由とした退学者は学生全体の0・07%(約2千人)、休学者は同0・16%(約4600人)。コロナ禍で退学・休学者が増えるとみられていただけに、大学関係者の間で「意外に少ない」との受け止めが広がった。
■休学数は4割弱
一方、共同調査に対して理由別の退学者数を回答したのは2078学部で、このうちコロナを理由とする人数を回答したのは29・0%。休学者数でみると2042学部の37・0%にとどまった。両調査では大半の項目で同様の傾向が出ており、多くの大学がコロナを理由とする退学・休学者の実態を把握しきれていない可能性が高い。
共同調査でコロナを理由とする退学・休学者数を答えた割合が特に低かったのが、入学定員が300人未満の小規模大だ。退学者で22・0%、休学者でも27・0%だった。一方、同3千人以上の大規模大では退学者で34・1%、休学者で47・9%と比較的高かった。
■学部ごとに違い
退学理由の選択肢9項目のうち、コロナの影響が強めに出たのは二つ。「経済的困窮」で退学した人の7・6%、「学生生活不適応」の6・5%がコロナを理由としていた。
コロナの影響に関わらず、学生数に占める退学者比率が最も高かったのは歯学系で3・5%。芸術・スポーツ科学系(芸術系)が2・4%、工学系と経済・経営・商学系(経済系)が各2・1%で続いた。
歯学系の退学理由は「学力不振」が37・4%と最多で、歯科医師国家試験を前に断念する学生が多いとみられる。芸術系は「学生生活不適応」と「経済的困窮」、工学系は「転学」、経済系は「経済的困窮」を理由に挙げる学部が多く、どれも20%を超えた。
■経済的支援やフードバンクも
長引くコロナ禍による影響で、今後も退学や休学に追い込まれる学生が増えるのではないか。今年の共同調査には、各大学からそんな心配の声が多く届いた。
調査では、各学長に11の選択肢を示し、休退学を減らすために行っている取り組みをすべて選んでもらったところ、「学生の相談窓口・メンタル面のケア体制の充実」が最多で84%だった。さらに「対面授業をできる限り増やす」(70%)、「学生への経済的な支援」(68%)が続いた。「学生アンケートの結果を授業や大学運営に反映」も60%と高かった。
*
<学生の声を反映> 順天堂大は「各学部で少人数による担任制を導入して、学生からの各種の相談などにきめ細かな対応を実践している。カウンセラーを常駐させるなど、学生のメンタルケアにも慎重に対応している」とする。
桜美林大は、20年度の退学者を減らした実績から、経済的な支援の充実を中心に取り組む。経済的な理由で退学を考えている学生には、休学も提案している。「休学時の在籍管理料を3万円に抑え、積極的な利用を呼びかけている」という。
「担任教員制度による学生へのヒアリングやフォローを定期的に実施している」とするのは埼玉県立大だ。さらに「全学的に学生面談を実施し、意見などを集約して学生支援に活用している」という。
このように学生の要望に丁寧に耳を傾けることで、休退学防止につなげようとしている大学は多い。
東京農工大は「対面授業を増やしたり、学生の相談窓口を増やしているほか、授業アンケートの結果を反映したり、課外活動をできる限り解禁したりして、学生の要望に対応している」とした。
茨城大も学生生活実態調査や授業調査の結果を踏まえて、「経済的な支援を拡充しているほか、担任制によるきめ細かな学生サポート、授業以外も含む対面活動の機会増加を図っている」という。
経済的に困窮している学生を対象に、授業料を免除・減額するほか、特別な奨学金を渡す大学も多い。大学によってはプラスアルファの支援も始まっている。
開智国際大は「全学生に向けて、公的なフードバンクや奨学金の情報を随時提供したり、近隣の支援団体のご厚意で、学内でフードバンクを複数回実施したりした」という。
筑紫女学園大も「奨学金などの経済的な支援のみならず、食糧支援や物品支援など日常生活に寄り添う支援を行っている」とした。(編集委員・増谷文生)
■より丁寧に精査して記録を
共同調査の助言役を務めた共愛学園前橋国際大の大森昭生学長の話 退学理由が「経済的困窮」や「就職起業等」に分類された学生の中に、コロナの影響を受けたケースが含まれていると類推できる。文科省調査の結果を受けて「コロナの影響を受けた退学はさほど多くない」という認識が広まったが、そうした見方は実態をとらえきれていない可能性がある。コロナ禍という特別な状況だけに、各大学はいつも以上に丁寧に、退学理由などの情報を精査して記録しておくべきだ。今後コロナ禍を振り返った時に、休退学などへの影響を正確に振り返れない事態となれば、国全体にとっての損失とも言える。
===========引用終了
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
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日本語アレコレの索引(日々増殖中)【14】
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【索引】
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●朝日新聞から──番外編 よく目にする誤用の御三家
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-122.html
●朝日新聞から──ではない 世に誤用の種は尽きまじ
「7割以上が間違ったら、もうそれは誤用ではない」のか?
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-194.html
先月はメモが多かったので、久々に昔の書式で書いてみる。
【2021年10月】
21-10-01
2日
挑戦者は頼んでいたケーキ2品を速攻で平らげたとか。(朝刊16面)
囲碁の観戦記。春秋子記者。この「速攻で」を朝日新聞で見たのはおそらく初めてでは。もうどうにもならないだろうが……。
下記のエントリーはかなり古いので、再度確認する必要があるかも。イヤな予感しかしない。
【突然ですが問題です【日本語編65】Yahoo!知恵袋ver.──ソッコー】2014-10-30
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-11945907077.html
21-10-02
4日
只野に励まされた古見。今度は自分が万場木の悩みを聞き励ます。2人は友達になる。只野を基点にだんだんと個性を認める雰囲気がクラスにも生まれていく。(朝刊15面)
番組紹介欄。田島知樹記者。別に誤用ではないが、この文章を見て美しいと思う人はいないだろう。短文主義(単文主義でも一文一義主義でも結果的にはほぼ同じ)を貫くと、こういうみっともない文章になる。この場合は幸いなんことに、接続詞や指示語は使われていないが、一般には多用することになりがち。個人的にも、ネットに垂れ流す文章はこういう感じになることがある。落ち着いて見直せば、修正するのはむずかしくない。引用文の場合、最後の1文は長めなのでそのまま(これって「単文」だよな。妙な構造だな)。前の3文を適宜結合する。「聞き励ます」は「聞いて励ます」(「聞き、励ます」はなんかヘン)にするべきだと思うが、無視する。
【修正案1】
只野に励まされた古見は、今度は自分が万場木の悩みを聞き励ます。2人は友達になる。
【修正案2】
只野に励まされた古見。今度は自分が万場木の悩みを聞き励まし、2人は友達になる。
【修正案3】
只野に励まされた古見は、今度は自分が万場木の悩みを聞き励まし、2人は友達になる。
この場合は【修正案1】よりも、とくに短い「2人は友達になる」を結合した【修正案2】が自然だろう。3文まとめて【修正案3】にしてもおかしくない。ただ、その場合はいつものパターン通り、「古見は、」の読点はないほうがいい気もする。この場合は「あってもいい」かな。
21-10-03
19日
身近なテーマにも関わらず答えに迷うような問題が続々と登場する。
(朝刊19面)
番組紹介欄。無署名。当然の成り行きともうしましょうか、「にも関わらず」と書く●●が出てくる。新聞でも混乱しているんだから、一般の表記は推して後志、然別。
1462)【突然ですが問題です【日本語編229】──関わらず 拘(わ)らず 係わらず かかわらず 】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1945334017&owner_id=5019671
【関わらず 拘(わ)らず 係わらず かかわらず──「新常用漢字表」の話3 辞書】
http://ameblo.jp/kuroracco/entry-12072956192.html
21-10-04
19日
コロナの影響に関わらず、学生数に占める退学者比率が最も高かったのは歯学系で3・5%。
(朝刊23面)
増谷文生編集委員。↑は「番組紹介欄」だからしかたがないかも(こういうのも「差別」なのかな)。こちらは編集委員。ただ、このこの文の場合はかなり微妙。
前後の文脈(重言風)を考えると、「コロナの影響があったにもかかわらず」ではなく、「コロナの影響とは無関係に」という意味らしい。よくわからないので断定もしにくい。このあたりがわかりにくいのは、当方の読解力のせいなのか、文章の不明瞭さのせいなのか。
仮に後者なら「コロナの影響に関わらず」という表記が適切。でもこんなまぎらわしい表現を使う理由がわからない。「コロナの影響とは無関係に」「コロナの影響とは関係なく」あたりでよいのでは。
21-10-05
24日
そんな中、記者の椎名(杏)が、天海と共に危機感を募らせる常盤(松山ケンイチ)に接触してくる。
(朝刊20面)
番組紹介欄。無署名。これは単なるメモです。現状で何も問題はない。この場合、「天海と共に危機感を募らせる」のは常盤。もし「天海と共に危機感を募らせる」のが椎名なら、「天海と共に危機感を募らせる記者の椎名(杏)が、常盤(松山ケンイチ)に接触してくる」になる。実際には椎名も「危機感を募らせる」なんだけど、それを表現するには大手術が必要になる。下記ぐらい?
「そんな中、天海と共に危機感を募らせる記者の椎名(杏)が、やはり危機感をもつ常盤(松山ケンイチ)に接触してくる。」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15080805.html?unlock=1#continuehere
===========引用開始
(ひらく 日本の大学)コロナで休退学、つかみきれぬ実態 朝日新聞・河合塾共同調査
2021年10月19日 5時00分
アクリル板を挟んで、相談窓口にやってきた学生(手前)の話を聞く近畿大の職員ら=大阪府東大阪市、近畿大提供
コロナ禍の影響で昨年度に退学・休学した学生の数を、多くの大学が把握できていないとみられることが、朝日新聞と河合塾の共同調査でわかった。各学部にコロナを理由とする退学・休学者の数を尋ねたところ、退学者数を回答したのは3割弱、休学者数は4割弱にとどまった。有識者は、コロナ禍の影響を正確に記録するために、休退学の背景を丁寧に聞き取ることが重要だと指摘する。
共同調査「ひらく 日本の大学」は今年6〜8月、国公私立の775大学を対象に実施し、85%に当たる655大学が回答。今回の調査では初めて、各学部に対して「経済的困窮」「学生生活不適応」などの理由別に退学者と休学者の数を尋ねた。さらに、それぞれの理由に区分された退学・休学者のなかにコロナの影響による退学・休学者が何人いるかも尋ね、コロナの影響がどの系統の学部に強く出ているのか調べた。
5月に結果が発表された文部科学省調査では、全国の大学・短大の2020年度の退学・休学者数は前年度比約2万1千人減の約12万5千人。コロナを理由とした退学者は学生全体の0・07%(約2千人)、休学者は同0・16%(約4600人)。コロナ禍で退学・休学者が増えるとみられていただけに、大学関係者の間で「意外に少ない」との受け止めが広がった。
■休学数は4割弱
一方、共同調査に対して理由別の退学者数を回答したのは2078学部で、このうちコロナを理由とする人数を回答したのは29・0%。休学者数でみると2042学部の37・0%にとどまった。両調査では大半の項目で同様の傾向が出ており、多くの大学がコロナを理由とする退学・休学者の実態を把握しきれていない可能性が高い。
共同調査でコロナを理由とする退学・休学者数を答えた割合が特に低かったのが、入学定員が300人未満の小規模大だ。退学者で22・0%、休学者でも27・0%だった。一方、同3千人以上の大規模大では退学者で34・1%、休学者で47・9%と比較的高かった。
■学部ごとに違い
退学理由の選択肢9項目のうち、コロナの影響が強めに出たのは二つ。「経済的困窮」で退学した人の7・6%、「学生生活不適応」の6・5%がコロナを理由としていた。
コロナの影響に関わらず、学生数に占める退学者比率が最も高かったのは歯学系で3・5%。芸術・スポーツ科学系(芸術系)が2・4%、工学系と経済・経営・商学系(経済系)が各2・1%で続いた。
歯学系の退学理由は「学力不振」が37・4%と最多で、歯科医師国家試験を前に断念する学生が多いとみられる。芸術系は「学生生活不適応」と「経済的困窮」、工学系は「転学」、経済系は「経済的困窮」を理由に挙げる学部が多く、どれも20%を超えた。
■経済的支援やフードバンクも
長引くコロナ禍による影響で、今後も退学や休学に追い込まれる学生が増えるのではないか。今年の共同調査には、各大学からそんな心配の声が多く届いた。
調査では、各学長に11の選択肢を示し、休退学を減らすために行っている取り組みをすべて選んでもらったところ、「学生の相談窓口・メンタル面のケア体制の充実」が最多で84%だった。さらに「対面授業をできる限り増やす」(70%)、「学生への経済的な支援」(68%)が続いた。「学生アンケートの結果を授業や大学運営に反映」も60%と高かった。
*
<学生の声を反映> 順天堂大は「各学部で少人数による担任制を導入して、学生からの各種の相談などにきめ細かな対応を実践している。カウンセラーを常駐させるなど、学生のメンタルケアにも慎重に対応している」とする。
桜美林大は、20年度の退学者を減らした実績から、経済的な支援の充実を中心に取り組む。経済的な理由で退学を考えている学生には、休学も提案している。「休学時の在籍管理料を3万円に抑え、積極的な利用を呼びかけている」という。
「担任教員制度による学生へのヒアリングやフォローを定期的に実施している」とするのは埼玉県立大だ。さらに「全学的に学生面談を実施し、意見などを集約して学生支援に活用している」という。
このように学生の要望に丁寧に耳を傾けることで、休退学防止につなげようとしている大学は多い。
東京農工大は「対面授業を増やしたり、学生の相談窓口を増やしているほか、授業アンケートの結果を反映したり、課外活動をできる限り解禁したりして、学生の要望に対応している」とした。
茨城大も学生生活実態調査や授業調査の結果を踏まえて、「経済的な支援を拡充しているほか、担任制によるきめ細かな学生サポート、授業以外も含む対面活動の機会増加を図っている」という。
経済的に困窮している学生を対象に、授業料を免除・減額するほか、特別な奨学金を渡す大学も多い。大学によってはプラスアルファの支援も始まっている。
開智国際大は「全学生に向けて、公的なフードバンクや奨学金の情報を随時提供したり、近隣の支援団体のご厚意で、学内でフードバンクを複数回実施したりした」という。
筑紫女学園大も「奨学金などの経済的な支援のみならず、食糧支援や物品支援など日常生活に寄り添う支援を行っている」とした。(編集委員・増谷文生)
■より丁寧に精査して記録を
共同調査の助言役を務めた共愛学園前橋国際大の大森昭生学長の話 退学理由が「経済的困窮」や「就職起業等」に分類された学生の中に、コロナの影響を受けたケースが含まれていると類推できる。文科省調査の結果を受けて「コロナの影響を受けた退学はさほど多くない」という認識が広まったが、そうした見方は実態をとらえきれていない可能性がある。コロナ禍という特別な状況だけに、各大学はいつも以上に丁寧に、退学理由などの情報を精査して記録しておくべきだ。今後コロナ禍を振り返った時に、休退学などへの影響を正確に振り返れない事態となれば、国全体にとっての損失とも言える。
===========引用終了