このタイトルも相当ヒドい──感動を与えたい お召し上がりは店内でよろしかったでしょうか? 何か質問はございますか?〈1〉
mixi日記2013年10月12日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1913819531&owner_id=5019671
テーマサイトは下記。全文は末尾に。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131004-08000029-webhon-ent
『知らずに使っている実は非常識な日本語』の話なので、下記の続きだろうな。
このタイトルはないだろう──同級生 入籍 爆笑 圧倒的に不利 閑話休題 珠玉の大作 敷居が高い〈1〉
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2866.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1912763224&owner_id=5019671
書き手はけっこう書き慣れたライターだと思う。しかし、日本語の微妙な問題に関してきちんと書けているか……と細かく見ると、いろいろ粗が目立つ。
大前提として、言葉の問題で「間違い」とか「正しい」というのはウカツには使えない。〈「感動を与えたい」は間違った日本語〉なのか。本文に答えがある。「語法としては間違っていません」。つまり「間違い」ではない。使い方にはよっては不適切な場合があるってこと。
もっと極端なことを書けばわかりやすいかも。「お前はバカか」は間違った日本語ではない。ただ、目上や、親しくない人に使ってはいけない……ってこと。ついでに書くと、タイトルの「感動を与えたい」の使い方は敬語とは無関係。どこにも敬語は使われていない。
この「ファンの皆様に感動を与えたいです」は表紙にもなっていて、どんな解説があるのか興味があったが、なんだかなぁ。ただ、これは書籍の著者である梅津正樹さんの責任なのか、この記事を書いたライターの責任なのか判然としない印象がある。そういう印象になっている段階で、書籍紹介の記事としてはホニャララだろう。
話題になっている言葉を順番に見ていく。
■ファンの皆様に感動を与えたいです
この表現が不適切な使われ方をしている、という指摘はよく見聞する。そのとおりだとは思うけど、こういう微妙な問題をちゃんと説明するのは相当むずかしい。
まず当方がイチバン気になるのは、「〜たい+です」の部分。これは「嬉しいです」「嬉しかったです」の類いと同様。「間違い」と言う気はない。文化庁の陰謀ではなく方針で、許容されて以来、辞書も文法書も許容しているんだから。本来の形である「〜とうございます」を使うべきなんて主張をする気もない。しかし、言葉を扱う書籍などでは、無神経に使ってほしくない。
安直な修正案は「与えたいですね」「与えたいと思います」(またこの「〜と思います」を目のカタキにする人もいる。個人的には、「〜たいです」よりはずっとマシに感じる)。
【「形容詞終止形」+「です」 うれしいです うれしかったです】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2417.html
もうひとつの根本的な問題。「ファンの皆様に感動を与えたいです」は敬語の問題とは関係ない。最後に丁寧語の「です」がついているが、それは本題とは無関係。末尾に〈正しい表現は「感動していただく」〉とあるのは「感動を与えたい」の言いかえ例だろう。つまり、敬語とは無関係。ここから先は、煩雑になるので丁寧語(デス・マス体)は外し、「感動を与えたい」の形で考える。
「感動を与えたい」が不適切なのは、やや上から目線の言い回しだから。目的語(与える先)が「ファンの皆様」では不釣り合いになる。
これが「世界中の子供たちに感動を与えたい」や、「我が子に感動を与えたい」なら何も問題はないだろう。「感動してもらいたい」にするか否かは趣味の問題。
これを「世界中の子供たちに感動していただきたい」にしたら●●だよ。
では目的語が「ファンの皆様」の場合はどう言えばいいかと言うと、これがむずかしい。末尾の正しい表現の「感動していただく」は「〜たい」がどこかに行ってしまっている。「感動していただきたい」にすればよいのだろうか。
こうなると、そもそもこういう言い回しを使うのはどういうときか、という話になる。インタビューあたりかな。
「今年の抱負を教えてください」
×「ファンの皆様に感動を与えたい」
○「ファンの皆様に感動していただきたい」
そうですか? 当方は「ファンの皆様に感動していただきたい」にも異和感がある。これも相当尊大で押し付けがましいよ。だって自分のプレー(「パフォーマンス」でもなんでもいいけど)に感動しろ、って言ってるんでしょ? 下記のようにしてみる。
「ファンの皆様に感動していただくプレーがしたい」
これでも間違いではないだろうが、下記のように可能形にするほうがずっと自然だろう。
「ファンの皆様に感動していただける(ような)プレーがしたい」
別に謙譲語の「いただく」を使う必要は感じない。「もらう」にしてみる。
「ファンの皆様に感動してもらえる(ような)プレーがしたい」
このあたりがファイナルアンサーかな。文末をデス・マス体にしたいなら、「です」をつけてもいい。できれば「ですね」にしてほしい。「〜がしたいと思います」でもいいけど、「〜が目標です」「〜を目指します」あたりがスマートだろう。
【20131018追記】
「感動を与える」の類語に、「勇気を与える」「元気を与える」「夢を与える」なんてのもある。
これを「~ていただきたい」の形にかえると、前者は「勇気をもっていただきたい」かな。これも相当ヘン。「感動」と同様に「勇気をもってもらえる(ような)○○がしたい」 くらいかな。「勇気」は「もつ」ものではなく「湧く」ものって気もする。そうなると……。
「(見た人は)勇気が湧く(ような)○○がしたい」かな?
これでも「間違い」ではないだろうが、日本語としてどんどん不自然になっている気がする(泣)。
「(見た人を)勇気づけられる(ような)○○がしたい」くらいが自然かな。
「元気を与える」は「元気を出してもらえる(ような)○○がしたい」くらいが自然かな。
「夢」は「夢をもっていただきたい」かな。これも相当ヘン。
自然な表現として「(○○は)夢を売る職業」なんてのもある。そうなると、「夢を買っていただきたい」になる? まさか。
「(見た人に)夢をもってもらえる(ような)○○がしたい」「(見た人に)夢を感じてもらえる(ような)○○がしたい」
あたりかな。
感動を与えたい お召し上がりは店内でよろしかったでしょうか? 何か質問はございますか?〈2〉
■お召し上がりは店内でよろしかったでしょうか?
================引用開始
■お召し上がりは店内でよろしかったでしょうか?→×
客が意思表示を口にしていないのに、店員が選択を決めつけてしまうのは、あまりにも唐突です。この誤った表現が広がったのは、過去形には丁寧さを感じさせる働きがあるからではないかと、梅津さんは指摘します。
【正しい表現は「~店内になさいますか?」】
================引用終了
2つ目のテーマも相当微妙。この説明なら、過去形でない形にすればいいのだから「正しい表現」は「お召し上がりは店内でよろしいでしょうか?」になるのでは。ところが実際の正解はかなり違う表現になっている。
「よろしかったでしょうか」は×という言説はよく見聞するが、根拠は知らない。ケースバイケースだと思う。
【43定番の質問/バイト敬語。「よろしかったでしょうか?」】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n146529
↑の使い方は相当ヘン。ただし、「よろしいでしょうか」ならOKとは思えない。
「よろしいでしょうか」の意味は主として「確認」と「許諾の申し出」だろう。
注文後に訊くなら「確認」。
いきなりの場合は意図がわからない。おそらく「許諾の申し出」だろうな。「相席でもよろしいでしょうか」ならアリだろう。つまり、「お召し上がりは店内でよろしいでしょうか?」は、「いまなんらかの事情があってテイクアウトには応じられず、店内でのお召し上がりしかできませんが、それでよろしいでしょうか」という意味ならアリかもしれない。実際には、そんな意味では使っていない。なんでもかんでも「許諾の申し出」の形にすれば丁寧ってわけではない。
客側が「店内でいただいてもよろしいでしょうか?」と「許諾の申し出」をするならアリかなって気がするけど(笑)。
ほかにも問題点があってゲンナリするが、根気強くあげていく。
1)「お召し上がり」は二重敬語では
厳密に言えば二重敬語だろう。
「召し上がる」が名詞化した「召し上がり」に接頭語の「お」がついていると考えると相当微妙。この「お」を美化語と考えるなら二重敬語ではなくなる。尊敬語と考えると「尊敬語+尊敬語」になりそうだが、通常これは二重敬語とは言わない。
「召し上がる」を「お~なる」の形にした「お召し上がりになる」(二重敬語)の省略形と考えれば、二重敬語かもしれない。ただし「お召し上がりになる」は文化庁が許容している二重敬語のひとつなので、問題はないはず。
【よくある誤用34──敬語編4 二重敬語】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n133372
2)「お召し上がりは店内になさいますか?」ならOKか
記事では【正しい表現は「~店内になさいますか?」】になっている。
かなり不自然な気がする。不自然な理由は「対」になる言葉を考えればわかる。
「お召し上がりは店内になさいますか? あるいは店外になさいますか?」
これは相当ヘン。「対」になるのは、「店内で(の)お召し上がり」と「(店外への)お持ち帰り」のはず。
「店内でお召し上がりになりますか? それともお持ち帰りになりますか?」
これなら敬語の使い方としては問題がないだろう。ただし、こんな回りくどい言葉づかいは、たとえ正確であっても現場では嫌われる。そこで、実際には大幅に省略されている。
「店内でお召し上がりですか、お持ち帰りですか」
あるいはもっと簡略化して「店内でお召し上がりですか」もアリ。決して上等な言葉づかいとは思わないが、メクジラを立てるような問題ではないと思う。
誤用例としてあげられている「お召し上がりは店内で……」というのは聞いたことがない。これは、当方が不快な質問を避けるために注文の際に「テイクアウトで……」「イートインで……」と最初に言ってしまうせいかもしれない。この「イートイン」というのが玄妙な和製英語らしいが、広まっちまったからパス。
あとはまた今度ね。
(つづく)
【ネタ元】BOOKSTAND
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131004-08000029-webhon-ent
================引用開始
「感動を与えたい」は間違った日本語 正しい敬語の使い方とは
BOOKSTAND 10月4日(金)8時0分配信
感謝の気持ちを伝えたいのに、実は偉そうな表現になっていたり、文法として間違っていたり。自分に悪気がなくても、相手が不快な思いをしていることは、実は結構多いものです。本当は敬意を表したくても、それが言葉で表現できていなければ、せっかくの気持ちも台なしになってしまいます。
その日本語が正しいかどうかを、◯×形式でわかりやすくまとめ、収録しているのが書籍『知らずに使っている実は非常識な日本語』です。本書を書いたのは、NHKで約40年間にわたって、アナウンサーとして活躍した梅津正樹さん。局の用語委員も務め、「ことばおじさん」の愛称でテレビやラジオで親しまれた日本語のスペシャリストです。「職業柄、誰にでも分かりやすく、そして正しく伝わる言葉を使わなければならない立場にいた」という梅津さんは、本来とは違う使い方や、誤った解釈がされがちな日本語の数々を解説します。
日本語の中でも難しいとされるのが、正しい敬語の表現。敬語としても正しく、失礼にもあたらない表現とは、どのようなものなのでしょうか。
■「ファンの皆様に感動を与えたいです」→×
スポーツ選手や歌手が観客に向かって使っている印象のある、こちらのフレーズ。語法としては間違っていませんが、「与える」には「相手の望みなどに対応するような物事を"してやる"」という意味があるので、無礼な表現にあたります。
【正しい表現は「感動していただく」】
■お召し上がりは店内でよろしかったでしょうか?→×
客が意思表示を口にしていないのに、店員が選択を決めつけてしまうのは、あまりにも唐突です。この誤った表現が広がったのは、過去形には丁寧さを感じさせる働きがあるからではないかと、梅津さんは指摘します。
【正しい表現は「〜店内になさいますか?」】
■何か質問はございますか?→×
文法的には間違っていません。しかし、「ございます」は多くの場合、自分のことに対して使う表現。そのため、相手に対して使うと違和感を持たれてしまうケースは少なくありません。
【正しい表現は「〜おありですか?」】
梅津さんの解説によれば、◯×の表現以外にも、△の表現もあるとのこと。△は、正しいとも、間違いとも言い切れない、変化の過渡期にある言葉です。「言葉は時代と共に変わる」と言いますが、今後の日本語の規範を作るのは、日々、日本語を使う私たちなのかもしれません。
================引用終了
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1913819531&owner_id=5019671
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『知らずに使っている実は非常識な日本語』の話なので、下記の続きだろうな。
このタイトルはないだろう──同級生 入籍 爆笑 圧倒的に不利 閑話休題 珠玉の大作 敷居が高い〈1〉
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http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1912763224&owner_id=5019671
書き手はけっこう書き慣れたライターだと思う。しかし、日本語の微妙な問題に関してきちんと書けているか……と細かく見ると、いろいろ粗が目立つ。
大前提として、言葉の問題で「間違い」とか「正しい」というのはウカツには使えない。〈「感動を与えたい」は間違った日本語〉なのか。本文に答えがある。「語法としては間違っていません」。つまり「間違い」ではない。使い方にはよっては不適切な場合があるってこと。
もっと極端なことを書けばわかりやすいかも。「お前はバカか」は間違った日本語ではない。ただ、目上や、親しくない人に使ってはいけない……ってこと。ついでに書くと、タイトルの「感動を与えたい」の使い方は敬語とは無関係。どこにも敬語は使われていない。
この「ファンの皆様に感動を与えたいです」は表紙にもなっていて、どんな解説があるのか興味があったが、なんだかなぁ。ただ、これは書籍の著者である梅津正樹さんの責任なのか、この記事を書いたライターの責任なのか判然としない印象がある。そういう印象になっている段階で、書籍紹介の記事としてはホニャララだろう。
話題になっている言葉を順番に見ていく。
■ファンの皆様に感動を与えたいです
この表現が不適切な使われ方をしている、という指摘はよく見聞する。そのとおりだとは思うけど、こういう微妙な問題をちゃんと説明するのは相当むずかしい。
まず当方がイチバン気になるのは、「〜たい+です」の部分。これは「嬉しいです」「嬉しかったです」の類いと同様。「間違い」と言う気はない。文化庁の陰謀ではなく方針で、許容されて以来、辞書も文法書も許容しているんだから。本来の形である「〜とうございます」を使うべきなんて主張をする気もない。しかし、言葉を扱う書籍などでは、無神経に使ってほしくない。
安直な修正案は「与えたいですね」「与えたいと思います」(またこの「〜と思います」を目のカタキにする人もいる。個人的には、「〜たいです」よりはずっとマシに感じる)。
【「形容詞終止形」+「です」 うれしいです うれしかったです】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2417.html
もうひとつの根本的な問題。「ファンの皆様に感動を与えたいです」は敬語の問題とは関係ない。最後に丁寧語の「です」がついているが、それは本題とは無関係。末尾に〈正しい表現は「感動していただく」〉とあるのは「感動を与えたい」の言いかえ例だろう。つまり、敬語とは無関係。ここから先は、煩雑になるので丁寧語(デス・マス体)は外し、「感動を与えたい」の形で考える。
「感動を与えたい」が不適切なのは、やや上から目線の言い回しだから。目的語(与える先)が「ファンの皆様」では不釣り合いになる。
これが「世界中の子供たちに感動を与えたい」や、「我が子に感動を与えたい」なら何も問題はないだろう。「感動してもらいたい」にするか否かは趣味の問題。
これを「世界中の子供たちに感動していただきたい」にしたら●●だよ。
では目的語が「ファンの皆様」の場合はどう言えばいいかと言うと、これがむずかしい。末尾の正しい表現の「感動していただく」は「〜たい」がどこかに行ってしまっている。「感動していただきたい」にすればよいのだろうか。
こうなると、そもそもこういう言い回しを使うのはどういうときか、という話になる。インタビューあたりかな。
「今年の抱負を教えてください」
×「ファンの皆様に感動を与えたい」
○「ファンの皆様に感動していただきたい」
そうですか? 当方は「ファンの皆様に感動していただきたい」にも異和感がある。これも相当尊大で押し付けがましいよ。だって自分のプレー(「パフォーマンス」でもなんでもいいけど)に感動しろ、って言ってるんでしょ? 下記のようにしてみる。
「ファンの皆様に感動していただくプレーがしたい」
これでも間違いではないだろうが、下記のように可能形にするほうがずっと自然だろう。
「ファンの皆様に感動していただける(ような)プレーがしたい」
別に謙譲語の「いただく」を使う必要は感じない。「もらう」にしてみる。
「ファンの皆様に感動してもらえる(ような)プレーがしたい」
このあたりがファイナルアンサーかな。文末をデス・マス体にしたいなら、「です」をつけてもいい。できれば「ですね」にしてほしい。「〜がしたいと思います」でもいいけど、「〜が目標です」「〜を目指します」あたりがスマートだろう。
【20131018追記】
「感動を与える」の類語に、「勇気を与える」「元気を与える」「夢を与える」なんてのもある。
これを「~ていただきたい」の形にかえると、前者は「勇気をもっていただきたい」かな。これも相当ヘン。「感動」と同様に「勇気をもってもらえる(ような)○○がしたい」 くらいかな。「勇気」は「もつ」ものではなく「湧く」ものって気もする。そうなると……。
「(見た人は)勇気が湧く(ような)○○がしたい」かな?
これでも「間違い」ではないだろうが、日本語としてどんどん不自然になっている気がする(泣)。
「(見た人を)勇気づけられる(ような)○○がしたい」くらいが自然かな。
「元気を与える」は「元気を出してもらえる(ような)○○がしたい」くらいが自然かな。
「夢」は「夢をもっていただきたい」かな。これも相当ヘン。
自然な表現として「(○○は)夢を売る職業」なんてのもある。そうなると、「夢を買っていただきたい」になる? まさか。
「(見た人に)夢をもってもらえる(ような)○○がしたい」「(見た人に)夢を感じてもらえる(ような)○○がしたい」
あたりかな。
感動を与えたい お召し上がりは店内でよろしかったでしょうか? 何か質問はございますか?〈2〉
■お召し上がりは店内でよろしかったでしょうか?
================引用開始
■お召し上がりは店内でよろしかったでしょうか?→×
客が意思表示を口にしていないのに、店員が選択を決めつけてしまうのは、あまりにも唐突です。この誤った表現が広がったのは、過去形には丁寧さを感じさせる働きがあるからではないかと、梅津さんは指摘します。
【正しい表現は「~店内になさいますか?」】
================引用終了
2つ目のテーマも相当微妙。この説明なら、過去形でない形にすればいいのだから「正しい表現」は「お召し上がりは店内でよろしいでしょうか?」になるのでは。ところが実際の正解はかなり違う表現になっている。
「よろしかったでしょうか」は×という言説はよく見聞するが、根拠は知らない。ケースバイケースだと思う。
【43定番の質問/バイト敬語。「よろしかったでしょうか?」】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n146529
↑の使い方は相当ヘン。ただし、「よろしいでしょうか」ならOKとは思えない。
「よろしいでしょうか」の意味は主として「確認」と「許諾の申し出」だろう。
注文後に訊くなら「確認」。
いきなりの場合は意図がわからない。おそらく「許諾の申し出」だろうな。「相席でもよろしいでしょうか」ならアリだろう。つまり、「お召し上がりは店内でよろしいでしょうか?」は、「いまなんらかの事情があってテイクアウトには応じられず、店内でのお召し上がりしかできませんが、それでよろしいでしょうか」という意味ならアリかもしれない。実際には、そんな意味では使っていない。なんでもかんでも「許諾の申し出」の形にすれば丁寧ってわけではない。
客側が「店内でいただいてもよろしいでしょうか?」と「許諾の申し出」をするならアリかなって気がするけど(笑)。
ほかにも問題点があってゲンナリするが、根気強くあげていく。
1)「お召し上がり」は二重敬語では
厳密に言えば二重敬語だろう。
「召し上がる」が名詞化した「召し上がり」に接頭語の「お」がついていると考えると相当微妙。この「お」を美化語と考えるなら二重敬語ではなくなる。尊敬語と考えると「尊敬語+尊敬語」になりそうだが、通常これは二重敬語とは言わない。
「召し上がる」を「お~なる」の形にした「お召し上がりになる」(二重敬語)の省略形と考えれば、二重敬語かもしれない。ただし「お召し上がりになる」は文化庁が許容している二重敬語のひとつなので、問題はないはず。
【よくある誤用34──敬語編4 二重敬語】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n133372
2)「お召し上がりは店内になさいますか?」ならOKか
記事では【正しい表現は「~店内になさいますか?」】になっている。
かなり不自然な気がする。不自然な理由は「対」になる言葉を考えればわかる。
「お召し上がりは店内になさいますか? あるいは店外になさいますか?」
これは相当ヘン。「対」になるのは、「店内で(の)お召し上がり」と「(店外への)お持ち帰り」のはず。
「店内でお召し上がりになりますか? それともお持ち帰りになりますか?」
これなら敬語の使い方としては問題がないだろう。ただし、こんな回りくどい言葉づかいは、たとえ正確であっても現場では嫌われる。そこで、実際には大幅に省略されている。
「店内でお召し上がりですか、お持ち帰りですか」
あるいはもっと簡略化して「店内でお召し上がりですか」もアリ。決して上等な言葉づかいとは思わないが、メクジラを立てるような問題ではないと思う。
誤用例としてあげられている「お召し上がりは店内で……」というのは聞いたことがない。これは、当方が不快な質問を避けるために注文の際に「テイクアウトで……」「イートインで……」と最初に言ってしまうせいかもしれない。この「イートイン」というのが玄妙な和製英語らしいが、広まっちまったからパス。
あとはまた今度ね。
(つづく)
【ネタ元】BOOKSTAND
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131004-08000029-webhon-ent
================引用開始
「感動を与えたい」は間違った日本語 正しい敬語の使い方とは
BOOKSTAND 10月4日(金)8時0分配信
感謝の気持ちを伝えたいのに、実は偉そうな表現になっていたり、文法として間違っていたり。自分に悪気がなくても、相手が不快な思いをしていることは、実は結構多いものです。本当は敬意を表したくても、それが言葉で表現できていなければ、せっかくの気持ちも台なしになってしまいます。
その日本語が正しいかどうかを、◯×形式でわかりやすくまとめ、収録しているのが書籍『知らずに使っている実は非常識な日本語』です。本書を書いたのは、NHKで約40年間にわたって、アナウンサーとして活躍した梅津正樹さん。局の用語委員も務め、「ことばおじさん」の愛称でテレビやラジオで親しまれた日本語のスペシャリストです。「職業柄、誰にでも分かりやすく、そして正しく伝わる言葉を使わなければならない立場にいた」という梅津さんは、本来とは違う使い方や、誤った解釈がされがちな日本語の数々を解説します。
日本語の中でも難しいとされるのが、正しい敬語の表現。敬語としても正しく、失礼にもあたらない表現とは、どのようなものなのでしょうか。
■「ファンの皆様に感動を与えたいです」→×
スポーツ選手や歌手が観客に向かって使っている印象のある、こちらのフレーズ。語法としては間違っていませんが、「与える」には「相手の望みなどに対応するような物事を"してやる"」という意味があるので、無礼な表現にあたります。
【正しい表現は「感動していただく」】
■お召し上がりは店内でよろしかったでしょうか?→×
客が意思表示を口にしていないのに、店員が選択を決めつけてしまうのは、あまりにも唐突です。この誤った表現が広がったのは、過去形には丁寧さを感じさせる働きがあるからではないかと、梅津さんは指摘します。
【正しい表現は「〜店内になさいますか?」】
■何か質問はございますか?→×
文法的には間違っていません。しかし、「ございます」は多くの場合、自分のことに対して使う表現。そのため、相手に対して使うと違和感を持たれてしまうケースは少なくありません。
【正しい表現は「〜おありですか?」】
梅津さんの解説によれば、◯×の表現以外にも、△の表現もあるとのこと。△は、正しいとも、間違いとも言い切れない、変化の過渡期にある言葉です。「言葉は時代と共に変わる」と言いますが、今後の日本語の規範を作るのは、日々、日本語を使う私たちなのかもしれません。
================引用終了