fc2ブログ

2010年6月の朝日新聞から

【索引】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-244.html

●朝日新聞から──番外編 よく目にする誤用の御三家
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-122.html

●朝日新聞から──ではない 世に誤用の種は尽きまじ
「7割以上が間違ったら、もうそれは誤用ではない」のか?
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-194.html


【2010年6月】
10-6-1
24日
▲2六飛で3枚目の銀を渡し、ここは森内も自信のない形勢と感じていた。(朝刊15面)
 剣記者。将棋に観戦記。別に誤用でもなんでもないけど、後半が相当引っかかる。フツーにするなら、「森内も形勢に自信が持てなかった(という)」くらいだろうか。「自信のない形勢」が異様なんだろう。

10-6-2
26日
 そんな喫緊の対策が成功した根底には、チームに蓄積された4年間の経験がある。(朝刊1面)
 中川文如記者。これは誤用なのかな。「喫緊」なんて目にしたのはいつ以来だろう。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E5%96%AB%E7%B7%8A&stype=1&dtype=0
================================
きっ‐きん【喫緊/×吃緊】
[名・形動]差し迫って重要なこと。また、そのさま。緊要。「―の問題」
================================
 これ、ワールドカップ開催前の強化試合で4連敗して、守備戦術を変更したことをさしている。直前には「突貫工事は当たった」とある。文脈を考えると、「応急措置的な対策」だろう。「緊急の対策」と考えるとOKの気もするが、それは「緊」の字に引きずられてないか? まさかと思うけど「場当たり的」とか「やっつけ仕事」とか「苦しまぎれ」とか……そうう言葉を使うのを避けようとして慣れない言葉をもってきて誤用っぽくなった、なんてことはないだろうね。いずれにしても、使い慣れない言葉は使うもんじゃない。

10-6-3
29日
イングランド、役者不足(朝刊35面)
 村上研志記者。かなり大きめの見出し。見出しだから書き手は別なのかもしれない。「役者不足」もそろそろ認知されたのかな?
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-122.html
================================
「役不足」にかわる表現として有力なのは、「役者不足」です。誤用に関する本のなかには「そんな言葉は存在しない」と書いてあるものもありますが、感じが出ている言葉だと思います。新聞でも何度か目にしたことがあり、今後は定着していくかもしれません。
================================

http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-203.html
================================
08-9-11
30日
芸能レポーターの梨元勝さんは「役者不足。論争してみせて盛り上げようとしているけど、結論の見えているレコード大賞」(朝刊1面)
 総裁選を話題にした「天声人語」。「役者不足」って言葉を朝日新聞で目にしたのは何回目だろう。正しい日本語ではないという説が有力だが、誤用の「役不足」にかわる表現として、もっと広まってほしい。
================================


 今月“も”ネタが少ないので、「天声人語」に悪態をつく。(←オイ!)
10-6-4
================================
2010年6月19日(土)付印刷
 明治から大正にかけての横綱太刀山(たちやま)は、巨体からの突っ張りで「四十五日」と恐れられた。ひと突き(月)半で倒すというしゃれである。怖がる相手が後ずさりし、体に触れぬまま土俵を割った一番もある。「にらみ出し」とはやされた▼大相撲の野球賭博スキャンダルが大ごとだ。にらみ出されるように親方や人気力士が「やりました」と白状し、世間の口の端に上らない日はない。ばらすぞと脅され、大金を暴力団筋に渡したという大関琴光喜は、7月の名古屋場所を辞退した▼日本相撲協会は、29人が名乗り出た内部調査の公表を渋り、文部科学省やメディアに尻をたたかれている。己に累が及ぶと案じたか、協会幹部の動きは鈍い。イヤイヤをしながら俵に押し込まれる醜態だ▼他人の真剣勝負に金を賭けるとは、どうにも暇な勝負師たちである。そもそも、球場が気になって場所に集中できまい。相手のちょんまげに野球帽が乗り、勝敗の電光表示がスコアボードに見えたに違いない▼神事だ国技だと言ったところで、大相撲は興行である。お客が入らぬことには立ち行かない。暴力団の金づるが絡んだ土俵を、誰が見に行くだろう。手を汚した者を明かし、反省させ、ひと場所を傷めても悪習をにらみ出すしかない▼組んでも怪力の太刀山は、背中からたたきつける「仏壇返し」の大技で観衆をわかせた。文科省や警察が本気なら、相撲協会は公益法人を返上する「財団返し」を迫られかねない。精進不足が背から落とされるは常、決まり手はサヨナラ負けとでもするか。
================================
 ひとことで書くと、「うまく書こうとする意識が鼻につく」。このところの「天声人語」はそんな記事ばかりだけど、これはとくにヒドい。
 趣旨はよくわかるけどさ。
「仏壇返し」って「背中からたたきつける」技かな? 「呼び戻し」の別名だから違うでしょう。世間的には別の意味のほうが有名。(←オイ!)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8F%E5%A3%87%E8%BF%94%E3%81%97
http://48.lovesupple.jp/chuukyu/butudangaeshi.html

 後半はヒドい。「にらみ出す」「財団返し」「サヨナラ負け」(意味不明)……『AERA』並みだな。

10-6-5
================================
2010年6月27日(日)付印刷
 英語の「スピーチ」に、福沢諭吉が「演説」の語をあてたのはよく知られている。かの「学問のすゝめ」でも、「我思うところを人に伝うるの法なり」などと解説している。もともとあった「演舌」という語を、「舌では俗っぽい」と「説」に替えたそうだ▼たしかに、話す言葉の不実をたとえる「舌」のイメージは芳しくない。「舌先三寸」に「二枚舌」「口舌の徒」、「舌の根の乾かぬうちに」というのもある。舌でごまかさず説を述べるべし――訳語には、そうした思いがこめられていたかも知れない▼ところで今日は、諭吉が開いた日本で初の演説会にちなむ「演説の日」だという。折しも参院選の選挙サンデーである。津々浦々で言葉が飛び交うことだろう。それが「演説」なのか、「演舌」ではないのか、ここはじっくり吟味したい▼「口に蜜あり腹に剣あり」などと中国の故事に言う。悪だくみを腹に秘めた政治家など、今の日本にいるまいが、甘い言葉はあふれている。剣はなくても、腹の中が空っぽなら、有権者はまた「力量不足」という肩すかしを食うことになる▼諭吉が偉かったのは、訳語を作っただけでなく、演説を真っ先に実践したことだろう。それは政治家に欠かせぬ技能となる。切磋琢磨(せっさたくま)から多くの名演説が生まれ、言論として光を放ってきた▼その輝きが衰えたと言われて久しい。政治家の言葉を楽しみ、心震わせる機会は、いまやすっかり希少になった。選挙戦を眺めつつ、物干し台で特訓をしたという諭吉の時代の熱に、ふと思いを致してみる。
================================
「口に蜜あり腹に剣あり」か。いい言葉を教えてもらった。類語に「腹に一物股間に……」
「致してみる」ってのにもちょっと異和感があった。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%84%E3%81%9F%E3%81%99&stype=1&dtype=0
================================
いた・す【致す】
[動サ五(四)]《「いたる」に対して「いたらせる」の意。敬語として用いられるのは中世以降》
1 届くようにする。至らせる。「遠い祖国に思いを―・す」
2 そのことがもとで、ある結果、特によくない結果を引き起こす。ある状態に立ち至らせる。「私の不明の―・すところ」
3 全力で事を行う。心を尽くす。
(以下略)
================================
 へー。この意味が「1」に来るんだ。「2」以外はほとんど古語だと思っていた。
 個人的な語感だと「馳せてみる」かな。「至らせてみる」もアリかもしれない。

10-6-6
================================
2010年6月29日(火)付印刷
 日本の交通機関は、アナウンスも掲示も「お願い」が多い。ある地下鉄の優先席に〈ゆずりあう心が、明るい車内をつくります〉とあった。「つくる」という動詞に二つを思う。乗り心地は客にもよること、そして「こわす」者の影である▼東京の声欄に、少年(12)の投書「バスに乗ったらトンデモ乗客」があった。都下町田市。バスが5分遅れで停留所に着く。少年が母親と乗り込むと、男の客が女性運転士を怒鳴り上げたそうだ▼遅れに立腹したか、座っても車体をけとばし、手すりに足を乗せる。信号では「黄色なんだから突き進め!」。当然、車内は「とても怖い感じ」になった。降り際には、運転士の名を確かめるそぶりも見せたという▼4日後、当の運転士(46)の感想が載った。女性ゆえに当たりやすいのなら、これほど悲しいことはないと。「怖い思いをさせて申し訳ありません。でもありがとう。お陰で、これからも気持ちよく乗ってもらえるよう頑張る勇気が出ました」▼乗務員は客を選べず、客も隣人を選べない。とりわけストレスの発火点が低い都会では、車内のトラブルは茶飯事だ。大抵の大人は、険悪への感度を鈍らせる知恵を備えている。音楽や携帯電話で耳と目を「開店休業」にするのも一つだろう▼攻撃と防御がせめぎ合う都市のくらし。とんでもない客に当たった運転士や駅員も気の毒だが、居合わせた子どもはたまらない。耳目が無防備だから、とんがる空気に丸裸でさらされてしまう。怒声と鈍感が並走する車内で、ちいさな心が震えている。
================================
 これも相当鼻につく。結びの一文はいくらなんでも……。
「申し訳ありません」に関しては書きあきた。
「せめぎ合う」に関しては書きあきたけど、これは相当ヒドい。「攻撃と防御がせめぎ合う都市のくらし」って内戦状態じゃあるまいし。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tobi

Author:tobi
フリーランスの編集者兼ライターです。

カレンダー
03 | 2025/04 | 05
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード