日本IBMとソフトバンクは2016年2月18日、質問応答システム「Watson」の日本語版サービスを正式に始めた。米IBMとソフトバンクが2015年2月に戦略提携してから約1年。これまでβ版で提供していたいくつかの機能を正式版に格上げした(関連記事:[脳に挑む人工知能5]Watsonテクノロジーの全貌、IBMはなぜAIと呼ばないのか)。
Watsonの日本語化に当たっては、日本IBMが日本語処理機能の実装を、ソフトバンクが業務利用を想定した検証を担当した。ソフトバンク ICTイノベーション本部 Watson事業推進室 ビジネス推進部 部長の立田雅人氏は、「Watsonの言語認識は、方言、若者言葉、業界用語を知らない非専門家の言葉といった、文章の『揺らぎ』への適応力に優れている」と評価する。
同社はWatsonを活用した業務システムとして、社内業務について音声やテキストで質問すると社内文書や業務システムを総動員して答えを導いてくれる「SoftBank BRAIN」を構築中。既にプロトタイプを稼働させており、2016年3月以降に「社員サポート」「提案書検索」といったサブシステムの運用を順次始める考えだ。
2011年に米国のクイズ番組で王者に勝利した頃のWatsonは、英語の文章しか理解できなかった。日本IBMは、英語ネイティブのWatsonに対し、どのように日本語を覚え込ませたのか。日本IBM、ソフトバンクほか関係者の話や資料をもとに、その舞台裏を探った。
日本IBM本社にWatson開発専門オフィス
日本IBM 研究開発担当 執行役員の久世和資氏は「自然言語処理(Natural Language Processing)は、IBM全体の中でもIBM東京ラボラトリーが強い分野。日本語化に限らず、Watsonの自然言語処理系の開発に貢献している」と語る。
日本IBMは箱崎本社ビル内に、Watson専門ラボ「Cognitive Development Office」を開設。これまで社内で散らばっていた自然言語処理や機械学習の技術者を集結させた。米国やイスラエルなど他の拠点と協調しながら、Watsonの開発に当たっている。
ちなみに、IBMが使う「Watson」という言葉には、主に二つの顔がある。一つは、自然言語処理や機械学習に関わる技術/サービス/製品に付けられた「統一ブランド」としての顔。もう一つは、これらの機能をAPIとして提供する「アプリケーション開発プラットフォーム」としての顔だ。