「UNIQLO PARKA STYLE 1000」など5つのプロジェクトを成功に導いた企業として、第1回「日経ネットマーケティング イノベーション・アワード」の特別賞を受賞したユニクロ。各プロジェクトを主導するファーストリテイリングの勝部氏に、現状や戦略を聞いた。
ユニクロは世界三大広告賞を受賞した「UNIQLOCK」をはじめ良質なネットプロモーションを展開し続けている。改めて、その狙いは。
それぞれに目的があるが、共通しているのはグローバルで情報発信することだ。日本のテレビや雑誌、新聞では、グローバルには通用しない。必然的に現地の言語に翻訳して現地メディアに掲載することになる。その点、Webはどこからでも見られる。Webに力を入れる背景には、我々が(事業の海外展開などのために)グローバルでコミュニケーションしなければいけない前提がある。目的に合った情報をグローバルに100%コントロールして発信するのが狙いだ。具体的には、どのような目的があるのか。
例えば「UNIQLO TRY #2 HEATTECH」は、「ヒートテック」の認知を上げると同時に購入を促すグローバルなプロモーションという位置付けだった。UNIQLO PARKA STYLE 1000は、パーカーという商品をアピールする販促的な狙いと同時に、東京というロケーションを利用して日本の企業であるユニクロを発信するブランディングコンテンツとして作った。こうした目的がそれぞれにある。
共通するのはグローバルで考え、その中で日本を見ていくこと。世界で一番素晴らしい商品、サービス、コミュニケーション、店を考え、グローバル水準の目線で1つひとつの仕事をしていくことが飛躍につながる。
ユニクロにおけるネットの位置付けは。
すべては目的論。折り込みチラシの目的は日本のほぼ全世帯に週末にお買い得商品を見てもらい、店へ来てもらうこと。日本の商売の数字を上げるのがチラシの目的だ。テレビCMは日本のほぼ全世帯に対してブランディング、商品告知をする役割になる。新聞は商品告知だけでなく、企業姿勢を示すときに使う。「60周年」や画期的な製品といったニュースを伝える役割を担う。そしてWebはグローバルコミュニケーション。それぞれの目的に合わせて媒体がある。
最近日本国内では販売直結型のネットプロモーションが増えているようにも感じる。
2001年ころからオンラインストアはやっていたが、僕が入ってからブランディングやプロモーションのサイトを強化した。それとは別に企業サイトもあり、合計3つのサイトが存在していた。(2009年に)それを統合したことで、それぞれが溶け込み、相乗効果でネット販売は非常に好調に推移している。売り上げ規模は年数十%増で成長している。分散するよりワンストップにした方がいい。オンラインストアで購入した人にプロモーションコンテンツを見てもらい、リピートしてもらうなど効果的に利用できる。
サイトは企業の組織を示す鏡。簡単に作れるので、部署ごとにサイトを作るなど、散らかってしまうことになりやすい。そこは「ワンストップユニクロ」として、企業情報、プロモーション、販売も1カ所にした方が便利だ。我々はユーザー視点で考えている。あらゆることにおいて、ユーザーが先に来ていないといけない。
その中でのECの位置付けは。
巨大な店舗という位置付けで、まだまだ伸びると思う。今は生活で効率性が重視され、いろいろなことをやらないといけない。無駄なことはしたくないし、無駄なお金は使いたくない。そこでネットで買い物をすることは増えてくると思う。欧米の店舗、ほかのECサイトを持つ企業に比べて、ユニクロのECの売上高比率はまだ低い。そこをうまくやっていかないといけない。