発達凸凹と向き合う

キズキ共育塾(下) 発達障害がある人の学び、学校選び 引きこもり経験がある東大卒スタッフに聞く

2022.06.22

author
越膳綾子
Main Image

もう一度、勉強をやり直したい――。オンラインを含め全国各地で展開する「キズキ共育塾」(本部・東京)は、不登校や引きこもり、発達障害など何らかの困難がある人の学び直しを支える個別指導塾です。勉強や受験のサポートだけでなく、一人ひとりのメンタルの悩みにも寄り添い、伴走することを特色としています。現場で教える講師の多くも、同じような課題を乗り越えた経験を持っています。実際に、どんな教え方をしているのでしょうか。初期から講師として勤め、現在は保護者らからの問い合わせ対応などにあたっている半村進さんに話を聞きました。(写真は、自習スペースで勉強をする生徒=2022年6月、東京都渋谷区)

半村進

話を聞いた人

半村進さん

(はんむら すすむ)1982年生まれ。東京大学文学部歴史文化学科卒業。幼少期からコミュニケーションや運動機能の偏りがあり、大学在学中に5年半の引きこもり生活を経験。30歳で初のアルバイト。2012年からキズキ共育塾で講師として生徒を指導。教務担当を経て、現在は主に電話やLINEでの問い合わせ対応やYouTubeでの情報発信などを担当する。

キズキ共育塾
株式会社キズキ

試行錯誤の時間を、ポジティブに受け止めてほしい

――キズキ共育塾では、生徒からどんな悩みが寄せられていますか?

発達障害のある方の学習面で言うと、周りの人と同じように勉強をしても頭に入ってこないという悩みが共通しています。「自分はおかしいんじゃないか」「勉強に向いていないんだ」などと悲観的な考え方をしてしまっている方が非常に多いのです。

発達障害の種別ごとの傾向もあります。ASD(自閉スペクトラム症)の方は、周囲の環境に敏感です。教室の小さな音がものすごく気になるとか、視覚が過敏で真っ白いノートがまぶしすぎるとか、勉強する以前の問題を抱えた方がいらっしゃいます。

ADHD(注意欠如・多動症)の方は、じっと座っていられないという特徴はよく知られますが、学習面の悩みで言うと、反復作業が苦手な傾向があります。とにかく退屈に感じてしまい、基礎的な問題の繰り返しがつらいのです。また、自分の興味のないテーマの勉強は集中力が途切れてしまうという悩みもよく寄せられます。

LD(限局性学習症)の方に多いのは書字と読解、計算に関する悩みです。例えば、テストの答案用紙に手書きで書くのがうまくできない、横書きの教科書は難なく読めるのに、縦書きだと読めない、算数や数学では、ちゃんと式は立てられるのに計算ができない、という方がいます。

――そうした悩みにどう対応しているのでしょうか。

ASDの方はルーティンがあると安心する傾向があるので、毎日の勉強時間、勉強場所を一定にすることをお勧めします。ただ、そのルーティンを崩すことが苦手な方が多く、新しい科目の勉強を始めるときなど、いつもと違うことをやる際に困ってしまうことがあります。そんなとき、教材はなるべく同じシリーズで、同じようなレイアウトのものをそろえるように提案します。

音や光に敏感な方にも、最近は便利なツールが増えてきました。聴覚が過敏なら、ノイズキャンセリング機能のついたイヤホンを使うことで軽減されますし、視覚が過敏な方向けに、反射を抑えたノートも市販されています。

においに関しては、少し対応が難しいですね。家に自分の部屋があればいいのですが、図書館で勉強しようとすると、けっこういろいろなにおいがします。有料の自習室を使うなどして、自分の苦手な空間で無理しないでほしいですね。

続きを見る
バックナンバー
新着記事
新着一覧
新着一覧

ページトップ