発達凸凹と向き合う

キズキ共育塾(上) 子どもの「学び直し」を支える塾 創設者に聞く自らの挫折体験、学びへの思い

2022.06.21

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越膳綾子
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学校になじめない、引きこもり、受験に失敗……そうした困難はだれしも経験しうるものです。しかし、ひとたび学びを諦めてしまうと、再起することが難しい現実も。オンラインを含め全国各地で展開する「キズキ共育塾」(本部・東京)は、不登校や引きこもり、発達障害など何らかの困難がある人が学ぶ個別指導塾。代表の安田祐輔さんは、「何度でもやり直せる社会をつくる」をビジョンに掲げ、キズキ共育塾を立ち上げました。その背景には、自分自身の挫折体験があったといいます。(写真は、授業準備をしたり、オンライン授業をしたりする、キズキ共育塾の先生たち=2022年6月、東京都渋谷区)

安田祐輔

話を聞いた人

安田祐輔さん

株式会社キズキ代表取締役社長、NPO法人キズキ理事長

(やすだ・ゆうすけ)国際基督教大学(ICU)を卒業後、総合商社を経て、2011年にNPO法人キズキを設立。15年には株式会社キズキを設立し、学び直したい人のための個別指導塾「キズキ共育塾」のほか、生活困窮家庭の子ども支援、うつや発達障害による離職者の就労移行支援「キズキビジネスカレッジ」、不登校の子どもを支援する「家庭教師キズキ家学」などを展開している。著書に「暗闇でも走る」(講談社)、「発達障害の人が上手に勉強するための本」(翔泳社)。

キズキ共育塾
株式会社キズキ

予備校の面談で「どうせ勉強しないんだろ」

――安田さんがキズキ共育塾を立ち上げた経緯を教えてください。

一つは、自分自身の幼い頃の経験です。発達障害の影響だったと思いますが、小学校にうまくなじめませんでした。ものごとに集中すると周りの声が聞こえなくなり、クラスメートに話しかけられても気づきません。そこからクラス中から無視されるようになりました。

当時は、まだ発達障害という言葉はなく、大人になってから診断を受けました。軽度のADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)で、ASDの方が強い傾向があります。ただ、小学生の頃から自分が人と違うことは分かっていたので、それに名前がついただけだと感じています。

家庭環境にも問題があり、親元を離れるために全寮制の私立中学を選びました。でも、寮でいじめを受け、3年生から公立中学に転校しました。高校時代はグレていて、髪は金髪。ほとんど勉強をしませんでした。高校2年生で勉強をやり直そうと思いましたが、教えてくれるところがなかなか見つからなかったですね。予備校の面談で「どうせ勉強なんかしないんだろ」と言われたこともありました。

――そこからの再起は、大変だったのではないでしょうか。

そうですね。もう立ち直れないとも思いました。ただ、高校生の頃は、発達障害や家庭の問題はありましたが、精神的な面での課題はなかったので、ひたすら勉強をして2浪の末に志望校に合格しました。

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