fc2ブログ

考えるための書評集

Category書評 哲学・現代思想 1/5

哲学史とキリスト教――『ヨーロッパ思想史』 金子 晴勇

No image

      ヨーロッパ思想史 ――理性と信仰のダイナミズム 筑摩選書 金子 晴勇 西洋の哲学史を読むとき、私たち日本人はキリスト教の実感的理解を得ることがたいへんにむずかしく感じるのではないだろうか。キリスト教的な哲学者を飛ばして、近代的な哲学者だけの理解にとどまるのではないだろうか。中世の哲学者となるとアウグスティヌスやトマス・アクィナスが必ず紹介されているのだが、私たちはしっかりと理解できているだろ...

  •  1
  •  0

神秘思想でこじあける――『西洋哲学史―近代から現代へ』 熊野 純彦

No image

      西洋哲学史―近代から現代へ 岩波新書 熊野 純彦 上巻にあたる『西洋哲学史 古代から中世へ』は3年前ほどに読んだ。古本屋でみつからなくて、下巻を読めていなかった。ふところ事情がお寒いもので。 私は二十代は現代思想とか現代の人文科学にしか興味がなくて、近代哲学はとっつくものがないなと思っていた。近代哲学は基礎的なことを問うていて、そこまで興味をひかれるものではなかった。もちろん教養的な意味で...

  •  0
  •  0

ことばと純粋無――『事象そのものへ!』 池田 晶子

No image

      事象そのものへ! 池田 晶子 タイトルが直接知や純粋意識をめざしたものかと古本祭りで手にとった。 「清冽なる詐術」でそれがしっかりと語られていた。ランボーやマラルメといった詩人を通して、まちがいなく禅的境地といったものを語っていた。言葉なんて使い物にならない詐術と気づいた思索者は強いと思う。間接知しか知らないものはさまざまな落とし穴にはまる。「私はもはや君の識っているステファヌではない、...

  •  0
  •  0

記号と純粋無――『シンボル形式の哲学 〈1〉言語』 カッシーラー

No image

      シンボル形式の哲学〈1〉言語 カッシーラー 言語学は言葉が実在しないことを探究していないのかとずっと探し回っていて、なかなか見つからなかった。私が神秘思想で見つけようとしているのは、言語で描く世界が実在しないことである。 カッシーラーはそのことをしっかりと意識していて、記号や像は純粋の無からますます遠ざけてしまうものだと理解していた。言語は自己の存在の根源からひき放されてしまうことだと...

  •  0
  •  0

間接知と直接知――『「問い」から始まる哲学入門』 景山洋平

No image

    「問い」から始まる哲学入門 景山洋平 「「ある」への問い」や、「実在への問い」といった興味あるテーマをとりあつかっているので読んでみたが、なかなか言葉の実感のともなうものにならなくて、ほぼ得ることもなかったといえる本になった。 坂部恵が直接知と間接知の変遷を『ヨーロッパ思想史入門』で描いたそうなのだが、概念の知で直接的な知にはどこまでも肉迫できない。古代ギリシャでは直接知はヌース(知性)とよ...

  •  0
  •  0

問題意識が重ならない――『語りえぬものを語る』 野矢 茂樹

No image

  語りえぬものを語る 講談社学術文庫 野矢 茂樹 言語の向こうにはどんな世界が広がっているのか。あるいは言語の外の世界を人は知ることができるのか。 神秘思想が問うのは、そういうことではない。言語の世界が実在するのかということである。私たちは言葉や思ったことを実在すると思いこみ、対象の事実や正確さを見きわめようとするのだが、一歩しりぞいてみて、この言語世界や思いは実在するのかと問うた。 言語で描かれ...

  •  0
  •  0

言葉をひき離すむずかしさ――『意味の世界』 池上 嘉彦

No image

      私たちは言葉を毎日使っておきながら、いざ言葉という道具はどのようなものかと意識しようとしてもかなりむずかしい。言葉を引き離して、距離をおいて、客観視することがいかにむずかしいか、ぎゃくに気づかされることになる。 思考においても、自分がふだんどのようなことを考えているか、それはポジティブなのか、ネガティブなのかという判断もむずかしいほど、思考と一体化している。ひきはなして、距離をおいてな...

  •  0
  •  0

裏面の神から読み直す――『哲学マップ』 貫成人

No image

     「哲学マップ」や「見取り図」というよりか、簡明な哲学史や短文哲学史といった感じがしたな。 哲学者の本を読んでいると細かすぎて、全体としてなにをいっているかわからなくなる。ほかの哲学者も読み進むと、全体としていったいなにをいっているのか、どこに向かっているのかわからなくなる。 全体として哲学史をざっと理解したいときに役に立つ本だろう。だが簡明すぎる本は、こんどは記憶の定着を見ない。詳細やほ...

  •  0
  •  0

「サピア=ウォーフ仮説」の現在――『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』 ガイ・ドイッチャー

No image

  言語が違えば、世界も違って見えるわけ  ガイ・ドイッチャー 「母語は世界観を規定する」という「サピア=ウォーフ仮説」に私もハマったことがある。その後、この「言語相対論」はずいぶんと悪評が立てられていることを聞いてはいた。もうまじめの「サピア=ウォーフ仮説」は語れないとは思っていたが、確証はもっていなかったのでその後のアップデートのためにこの本を手にとった。 どちらかというと論争史や学説史のよう...

  •  0
  •  0

響かなかった――『なぜ世界は存在しないのか』 マルクス・ガブリエル

No image

  なぜ世界は存在しないのか 講談社選書メチエ マルクス・ガブリエル 「哲学界のロックスター」とよばれ、話題になったのはこの本が出た2018年ころのことだったろうか。このタイトルも気になるし、読みたい気もあったのだが、図書館で見かけるようになった今ごろにようやく読んだ。 やさしい言葉で語っているのはたしかだが、議論が錯綜していて、「はて? 世界とはどのようなことをいうのか」レベルでさえ私には疑問が残って...

  •  0
  •  0